光の彼方への旅立ち、ナムル章(7)
コーラン第27章ナムル章蟻、第36節~第40節
慈悲深く慈愛あまねきアッラーの御名において
第36節
「[サバーの女王の使者が] ソレイマーンのもとにやって来たとき、[ソレイマーンは]言った。『私を[わずかな]財産で助けようというのですか?神が私に与えてくれたものの方が、あなた方に与えたものよりも優れています。[私はあなた方の贈り物に喜んだりはしません。]自分の贈り物に喜んでいるのはあなた方だけです。』」 (27:36)
فَلَمَّا جَاءَ سُلَيْمَانَ قَالَ أَتُمِدُّونَنِ بِمَالٍ فَمَا آَتَانِيَ اللَّهُ خَيْرٌ مِمَّا آَتَاكُمْ بَلْ أَنْتُمْ بِهَدِيَّتِكُمْ تَفْرَحُونَ (36)
第37節
「『彼ら民のもとに帰りなさい。私はきっと、彼らには対峙することのできないような軍勢と共にあなた方のもとに行き、彼らをそこから屈辱にまみれた状態で追い出すでしょう』」 (27:37)
ارْجِعْ إِلَيْهِمْ فَلَنَأْتِيَنَّهُمْ بِجُنُودٍ لَا قِبَلَ لَهُمْ بِهَا وَلَنُخْرِجَنَّهُمْ مِنْهَا أَذِلَّةً وَهُمْ صَاغِرُونَ (37)
前回の番組でお話したように、預言者ソレイマーンの手紙を受け取った後、サバーの女王ベルゲイスは、使者に贈り物を持たせてソレイマーンのもとに送り、ソレイマーンが書簡を送った意図が、富や財産など、現世のものにあるのか否かを確かめようとしました。サバーの女王は使者たちに、ソレイマーンがその贈り物を前にどのような反応を見せるかを確かめ、結果を報告するように命じていました。
この2つの節で、預言者ソレイマーンは、贈り物を見ても喜ぶどころか、それを一種の賄賂と見なし、次のように語っています。「このような贈り物を私に送るとは、私が富や財産を追い求めていると考えないでいただきたい。あなたたちが持ってきたものは、神から与えられたものに比べれば非常に些細なものである。私はあなたたちを真理に服従させようとしただけだ。だがもし服従しないのなら、大量の軍勢と共にあなたたちのもとに現われ、あなたたちから権力と統治を奪い、屈辱にまみれてその土地を出て行かざるを得なくするだろう。私はあなたたちが私の手紙について調べ、自分は預言者だとする私の主張について、私に証拠や根拠を求めてくるのを期待していた。それなのに、贈り物を届けて私を欺こうと努力するとは」
第36節~第37節の教え
・宗教の指導者たちの行動は、物質的な動機によるものではありません。彼らは神から授けられた責務や目的を、現世の満足や富と引き換えにしたりはしません。
・他人と相対するときには、論理を用いましょう。しかし、真理に服従しようとしない人々に対しては、時に力を示してみることも必要です。
・神の道における戦いや努力・ジハードは、過去の宗教にも存在していました。
第38節
「[ソレイマーンは]言った。『長老たちよ、あなた方のうち誰が、[サバーの女王である] 彼女たちが屈服して私のところにやって来る前に、彼女の王座を私のために持ってくるだろうか』」 (27:38)
قَالَ يَا أَيُّهَا الْمَلَأُ أَيُّكُمْ يَأْتِينِي بِعَرْشِهَا قَبْلَ أَنْ يَأْتُونِي مُسْلِمِينَ (38)
コーランの解釈にもあるように、サバーの女王ベルゲイスの使者たちは、預言者ソレイマーンと面会した後、ベルゲイスのもとに戻り、贈り物に対するソレイマーンの反応、彼の宮殿の壮大さと彼の力について彼女に話しました。そのとき、サバーの女王は、長老たちと共に自ら、ソレイマーンのもとに赴き、彼と対決するつもりはないのだと表明することにしました。預言者ソレイマーンは、神の知識によって、サバーの女王のそのような行動を予め知っていました。ですから、神の力を示すために宮廷の人間たちに向かって、サバーの女王が彼のところにやって来る前に、イエメンにある宮殿から、女王の王座をソレイマーンの宮殿に運んで欲しいと頼みました。
第38節の教え
・神の預言者たちは、目に見えない事柄に関する知識を持っていて、いつでも必要とあらば、それを相応しい形で利用します。
・非常に短期間で長い距離を移動することは可能であり、神の預言者以外の人々にもできることです。そのため預言者ソレイマーンは、宮殿の人々に、誰でもできる人がいれば、それを実行してほしいと頼みました。
第39節
「[特別な力と賢さを持つ]精霊が言った。『私がそれを、あなたが立ち上がらないうちに、あなたのところに持ってきましょう。私はそれが得意であり、信頼できる者です』 」 (27:39)
قَالَ عِفْريتٌ مِنَ الْجِنِّ أَنَا آَتِيكَ بِهِ قَبْلَ أَنْ تَقُومَ مِنْ مَقَامِكَ وَإِنِّي عَلَيْهِ لَقَوِيٌّ أَمِينٌ (39)
第40節
「啓典の知識を持つ人物は言った。『あなたが瞬きをしないうちに、私がそれをあなたのもとに持ってきましょう』 それからソレイマーンは王座が自分の目の前に置かれたのを見て言った。『これは私の主の恩寵である。主は私が感謝するか、それとも感謝を忘れるかを試されている。誰でも感謝する者は、間違いなく、自分の利益ために感謝をするのであり、誰でも感謝をしない者は、[自分に損害を与える。]私の主は、他を必要としない偉大な方である』」 (27:40)
قَالَ الَّذِي عِنْدَهُ عِلْمٌ مِنَ الْكِتَابِ أَنَا آَتِيكَ بِهِ قَبْلَ أَنْ يَرْتَدَّ إِلَيْكَ طَرْفُكَ فَلَمَّا رَآَهُ مُسْتَقِرًّا عِنْدَهُ قَالَ هَذَا مِنْ فَضْلِ رَبِّي لِيَبْلُوَنِي أَأَشْكُرُ أَمْ أَكْفُرُ وَمَنْ شَكَرَ فَإِنَّمَا يَشْكُرُ لِنَفْسِهِ وَمَنْ كَفَرَ فَإِنَّ رَبِّي غَنِيٌّ كَرِيمٌ (40)
預言者ソレイマーンの要請を受け、2人が、サバーの女王の玉座をほんの一瞬のうちにイエメンからシリア一帯を指すシャーム地方に移動させることを名乗りでました。そのうちの1人は、ソレイマーンの宮殿にいて彼の命令を実行していた精霊で、「会議が終わり、ソレイマーンが立ち上がるまでに女王の玉座を運んでくる」と表明しました。もう1人は、ソレイマーンの大臣の一人で、ソレイマーンの死後、彼の後継者となったアーセフ・イブン・バルヒヤーでした。彼は、「瞬きをし終わらないうちにサバーの女王の王座を持ってきましょう」と言いました。彼の提案の方が、時間が短かったため、ソレイマーンはその申し出を受け入れ、アーセフ・イブン・バルヒヤーにその任務を委ねました。彼も一瞬のうちに、サバーの女王の王座をソレイマーンと宮廷の人間たちの前に移動させました。
この、ソレイマーンの大臣の一人によって実行された驚くべき所業により、彼や宮廷のほかの人間たちが高慢になる恐れもありました。そのためソレイマーンは、それを防ぐために神の名を口にし、彼らに神のことを想い起こさせ、そのようなことができたのは、自分たちの力ではなく、神から与えられた力のおかげであること、そして神は自分たちの感謝など必要とはせず、僕の感謝を追い求めるよりもはるかに偉大ではあるものの、神に感謝すべきであるということを思い知らせようとしたのです。
第39節~第40節の教え
・人間は、神の知識を利用することで、自然と自然の法則をつかさどり、望む形で自然を占有することができます。
人間は現在、メディアで用いられている技術により、様々な人物やものの音声や映像を世界中で同時に示すことができます。また、場所や時代を超えて、物資を移動させることも不可能ではありませんが、人類の科学は、未だにその力を手に入れていません。
・自分の知識や力を誇ってはなりません。恩恵として与えられたものは、私たちが自分で作り出したものではなく、神の無限の美徳と恩恵によるものです。