サウジアラビアの政府に対するシーア派の抵抗
サウジアラビア軍は、5月10日から、同国東部のシーア派居住区であるアワミヤを攻撃しています。この攻撃により、これまでに数十人が死傷しました。
サウジアラビア政府による、アワミヤのシーア派教徒の弾圧は、多くの疑問を抱かせています。サウジアラビアのシーア派教徒は、概してどのような状況に置かれているのでしょうか?なぜサウジアラビアの政府は、負担の少ない別の方法ではなく、アワミヤに対する攻撃を選択したのでしょうか?また、アワミヤに対する暴力によってどんな目的を追求しているのでしょうか?
シーア派教徒は、サウジアラビアの各地、特にメッカとメディナという重要な2つの宗教都市にも存在していますが、この国の東部のシャルキヤ州に、シーア派の最大の居住区があります。シャルキヤ州は、サウジアラビア最大の面積を持つ州で、全国土の4分の1を占めています。この州の人口はおよそ290万人で、その大多数がシーア派イスラム教徒です。
概して、サウジアラビア全体の人口およそ3000万人のうち、シーア派教徒が占める割合は、10%から15%です。サウジアラビアのシーア派教徒は、第一級の市民とは見なされていません。彼らは、サウジアラビア政府による、組織的な差別、宗教的な自由の剥奪、大規模な暴力、テロに晒されています。
サウジアラビア政府のシーア派教徒に対する戦略は、この国を支配するワッハーブ派の逸脱した思想からくるもので、実際、シーア派に対するワッハーブ派の深い憎悪を物語っています。中東問題の専門家であるクーシャキー氏は次のように語っています。
「サウジアラビア政府がワッハーブ派であること、この思想をサウジアラビア全体に浸透させようとしていることにより、シーア派教徒は当初から、この国の政権にとって脅威と見なされていた。サウジアラビアは今もなお、シーア派に対してこのような見方を持っており、彼らを法的に認めておらず、合法的な市民と見なしていない。ここ数年、地域レベルでサウジアラビアによる宗教的な嫌悪が拡大していることから、この国の東部のシーア派教徒は、この国の政府によってこれまで以上に脅かされている」
サウジアラビア政府の考え方により、この国のシーア派教徒は、不信心者スパイと見なされており、政府のポストに就くことはできません。これは、体系的な差別の明らかな例と見なされます。
こうした中、サウジアラビアの政府に対するシーア派教徒の不満のすべては、差別によるものではありません。この国のシーア派教徒は、政府による大規模な暴力を目にしています。シーア派聖職者のナムル師の処刑、数十名の死傷者が出ているアワミヤへの最近の攻撃、これらが、シーア派教徒に対するサウジアラビア政府の暴力の例となっています。
サウジアラビア軍は、アワミヤという歴史的な地域の再開発を口実に、装甲車や軍用ヘリコプターを使ってこの地域を攻撃しており、この地域につながるすべてのルートを封鎖し、自動車や市民の往来などを厳しく制限しています。
サウジアラビアの政府はなぜ、より負担の小さな別の方法ではなく、アワミヤへの攻撃という方法を選んでいるのでしょうか?この質問に対しては、アワミヤをはじめとするシャルキヤ州が、サウジアラビア政府にとっていかに重要であるかに触れる必要があるでしょう。
サウジアラビア東部の第一の重要性は、天然資源の存在に関するものです。この地域は、サウジアラビアの中でも最大の石油埋蔵量を有しています。言い換えれば、サウジアラビア政府の収入の大部分は、東部の地域から確保されているのです。
第二の重要性は、その地理的な状況と人口の構造に関するものです。東部の人口はシーア派教徒が多数派を占めており、地理的にもバーレーンに近くなっています。そして、バーレーンもシーア派が多数派を占めており、バーレーンとサウジアラビアのシーア派教徒の間には、血縁のつながりが存在します。一方で、バーレーンでは6年前から、政府に対するデモが行われており、このデモは今年に入ってからも拡大しています。そのため、サウジアラビアの治安部隊もまた、アワミヤをはじめとするサウジアラビアの東部に特に注意を払っているのです。
第三の重要性は、アワミヤが、ナムル師をはじめとする偉大な聖職者の故郷であることによるものです。これについて、スティーブン・サヨウニ氏は、アメリカン・ヘラルドトリビューンの5月19日の記事の中で、次のように記しています。
「アワミヤはナムル師の故郷である。ナムル師は、サウジアラビアのシーア派教徒による抗議を受け、2012年に逮捕され、2015年10月15日に、刑事裁判所によって、国家の安全に反する行動を取ったとして磔の刑による公開処刑を言い渡された。この判決は、2016年1月に他の46人と共に執行された。アワミヤは、サウジアラビアの政府に対する抵抗の中心地として知られている」
サウジアラビア東部、特にアワミヤの人口、経済、地理、文化的な側面からの重要性により、サウジアラビアの政府は、この地域を安全保障の観点から見ています。政治評論家のマルワ・サルマン氏は、5月19日、「サウジアラビアはなぜ市民を殺すのか?それは彼らがシーア派だから」とする記事を発表しました。この記事には次のようにあります。
「東部の州カティーフにおけるサウジアラビアの暴力は、目当たらしい出来事ではない。このような暴力は、1970年代末にすでに始まっていた。1979年11月11日、シーア派教徒は、サウジアラビアの王家やアメリカに対する抗議デモを行った。このデモに対し、サウジアラビアの政府は戦車や軍備で応じ、24人の市民が死亡、数百人が負傷し、数千人が逮捕された。現在、サウジアラビアの政府は、カティーフ州のアワミヤで、1970年代と同じ方法を用いている」
そして最後の質問、サウジアラビアの政府は、アワミヤのシーア派居住区における暴力によって、どのような目的を追求しているのでしょうか?
サウジアラビアの政府が、現在アワミヤで用いている戦略は、イスラエルが占領地で行っている戦略、イラクの旧サッダームフセイン政権がクルド人居住区で行ったアラブ化政策と同じものです。イスラエルは、占領地に住むパレスチナ人の住宅を破壊し、入植地の建設を進めており、この地域に、アラブ人の代わりにユダヤ人を居住させようとしています。サッダームフセイン政権も、1980年代、イラクのクルド人居住区に対してアラブ化政策を行い、この政策の中でクルド人が強制的に移住させられました。
現在、サウジアラビアの政府は、アワミヤで、再開発を口実に、歴史的な象徴や住宅の区画を破壊しています。サウジアラビア政府は、この地域の再開発を主張していますが、実際は、この地域の人口構造を変更し、多数派を別の地域に散らばらせ、サウジアラビアの政府に対する抵抗の象徴を消そうとしています。
最後に、アワミヤの住民の強制移住といった、サウジアラビア政府のこの地域における犯罪は、国際刑事裁判所の規定によれば、人類に対する明らかな犯罪に相当します。こうした中、世界のメディアは、この犯罪に対して、沈黙と無関心を貫いています。