昨年度のイランの映画と音楽
昨年度のイラン映画は、文化的、道徳的な価値観を守るとともに、非常に内容の濃い作品でした。アカデミー賞、ベネチア国際映画祭、カンヌ国際映画祭という3つの場で、イラン映画は成功を収めることになりました。
アカデミー賞にイラン映画が出品されるようになってから23年の間、イランの映画作品は3回にわたり外国語映画賞に、そして1回脚本賞にノミネートされました。結果としては、2回、外国語映画賞を受賞しました。
昨年、アスガル・ファルハーディー監督の最新作「セールスマン」が、2017年のアカデミー外国語映画賞を受賞しました。ファルハーディー監督にアカデミー賞が送られるのは、これが2回目となります。ファルハーディー監督は以前、映画「別離」により、アカデミー外国語映画賞を受賞していました。
映画「セールスマン」は2016年のカンヌ映画祭でも、脚本賞と主演男優賞を獲得していました。
昨年のアカデミー賞は、特殊な状況下にありました。アメリカのトランプ大統領の就任により、世界の中で生じた空気などは、その影響が授賞式に見られました。特にトランプ大統領の違法な移民排斥の立場は、世界で大きな批判を呼びました。このため、2017年のアカデミー賞は、トランプ大統領により、これまでになかったほど、政治的な色を帯びていました。
このため、ファルハーディー監督や「セールスマン」の出演者は、トランプ大統領の移民排斥の大統領令に抗議し、アカデミー賞の授賞式を欠席しました。そして、イラン人の初の女性宇宙飛行士のアヌーシェ・アンサーリー氏と、NASAのフィールーズ・ナーデリー元局長が、代理で授賞式に出席しました。
イラン映画は、カンヌ国際映画祭でも輝かしい業績を上げました。
この映画祭は、世界で最も権威ある映画祭とされています。昨年のカンヌ国際映画祭は5月17日から28日まで、フランスのカンヌで行われました。この映画祭では、イランの巨匠キアーロスタミー監督の遺作「24フレーム」が公開されました。
また、ムハンマド・ラスーロフ監督のイラン映画「高潔な男」が、この映画祭のある視点部門のグランプリを獲得しました。
さらに、昨年8月30日から9月9日まで、イタリアで行われたベネチア国際映画祭では、ヴァヒード・ジャリールヴァンド監督が「日付なし、サインなし」によりオリゾンティ部門で監督賞を受賞し、また、この映画に出演したナヴィード・モハンマドザーデが、男優賞を獲得しました。
映画「日付なし、サインなし」は、2016年度のファジル映画祭で、最優秀監督賞、最優秀男優賞、最優秀音響賞を獲得していました。
最近も、イラン映画は世界的に大きな成功を収めており、短編、長編、ドキュメンタリーなどでさまざまな賞を目覚しい形で受賞しています。
そのほか、ベルリン国際映画祭のフィルムマーケットに7つの作品が出品されたこと、ベルギーの映画祭にイランのアニメーション作品「アルファベット」がノミネートされたこと、オクタイ・バラーヘニー監督の「眠りの橋」がバンクーバー国際映画祭にノミネートされたことなどが、イラン暦の昨年度における映画界の出来事でした。
昨年度のファジル映画祭の開催も、イランの新たな映画が注目に値する地位を得ていることを示しています。これまでの業績により、イラン映画の商業的な配給において、大規模な展開を行うことができ、マジード・マジーディー監督の大作「預言者ムハンマド」は、世界レベルで広く配給されました。
ファジル国際音楽祭での活動は、音楽がほかの芸術に代えられることのできないものであり、この芸術の偉大さが否定できるものではないことを示しています。現在、音楽の巨匠が活動を行っており、その愛や情熱により、永遠に残る作品を制作しています。
とくにこの1世紀において、優れた才能を持つイランの伝統的な声楽の巨匠が活動していたことが伺えます。確かにナーデル・ゴルチーンなど、その一部は存命ではありませんが、その思い出は偲ばれています。
イランのサーレヒーアミーリーイスラム文化指導大臣は、次のように語っています。
「イランの音楽は、イラン人であることを示すしるしであり、それはペルシャ語がイランのしるしであるのと同様だ。我々は、祖国の名の下に、イラン人であることのために努力を行った音楽家を抱えている。イランの音楽を、フェルドゥースィー、ハーフェズ、サアディー、モウラヴィーといった偉大な詩人によって我々は理解する。イランの音楽は、彼らとともに永遠の存在であり、イランの音楽の中で彼らの名声を知ることになる」
一方で、イランの音楽は、抵抗の象徴でもあり、イスラム革命の勝利の時期や、イラン・イラク戦争の聖なる防衛の時期といった緊張を含む時期においても、輝きを放っていました。この聖なる防衛の時期、つまりイラン南西部のホッラムシャフル解放など、紆余曲折の中で、「この勝利に幸あれ」といった永遠に残る歌により、人々の記憶に刻まれたものとは、イランの音楽でした。
イランの音楽はまた、それぞれの地方で特色を持つ民族や文化の価値を語り、すべての民族の統一の象徴となっています。また、イランの音楽は東洋の精神性を示しています。東洋の精神はイランの音楽と分かちがたい形で結びついているのです。また、イランの文化、慣習、道徳を伴っています。
毎年行われるファジル国際音楽祭は、イラン国内外のさまざまな音楽のために開催されています。
昨年度のファジル国際音楽祭では、音楽家がそれぞれの音楽を表現する上での機会となりました。
ファジル国際音楽祭に国内外から参加した音楽グループは、首都テヘランの6つのホールで音楽愛好家を集めました。トルコの音楽家であるエルカン・オウルのデュオは、この音楽祭の閉会式でも演奏を行いました。
イランの音楽祭は、国際分野でも広く、そしてプロフェッショナルな形で行われる可能性を有しています。昨年度、音楽という国際的な言語によるイランのメッセージは、ヨーロッパにも伝わりました。
世界的に著名な指揮者であるリッカルド・ムーティーは、イランを訪問し、テヘラン交響楽団を指揮したことで、イランにおける音楽の価値を広める上で、新たな時代を切り開きました。また、テヘラン交響楽団も、イタリア北部のラヴェンナでコンサートを行いました。
テヘラン交響楽団は、ラヴェンナの交響楽団との協力で行った昨年7月のこのコンサートで、イランがこの音楽分野で非常に高い能力を持っていることを示しました。このコンサートの観客は、およそ4000人でした。観客もこのコンサートに満足し、その終演には10分間の拍手が送られました。
イラン暦の昨年、イランの映画と音楽はその能力をよい形で示してきましたが、これに満足することはなく、この新たな年においても、この二つの芸術分野はより大きな成功を収めることを決意しているのです。