カスピカイ・ブラウントラウト
今回は、カスピカイブラウントラウトの生態と、この魚を脅かす要因についてお話することにいたしましょう。
今回も、イラン北部・カスピ海に生息する稀少な生き物をご紹介することにいたしましょう。今夜は、サケ類に属する、カスピカイブラウントラウトをご紹介します。この魚は、硬骨魚の部類に属し、カスピ海の生態系や水産業の点で、特に重視されています。しかし、残念ながら今日、この魚は絶滅の危機に瀕しています。今夜は、カスピカイブラウントラウトの生態と、この魚を脅かす要因についてお話することにいたしましょう。
サケ類の魚は、一般的に世界の幅広い海域に生息し、その多くは水温が低い、もしくは常温の海域に見られます。このことからサケ類は寒流魚と呼ばれています。また、この部類に属するものはおよそ30種類にも及び、その中で最も重要とされるものの1つがカスピカイブラウントラウトです。
専門家の見解では、この種の魚はウミマスの1つとされ、流線型で太く長い体つきをしており、口先が尖っています。体の両面は明るい色をしていますが、背中や頭の上の部分は濃い灰色となっています。また、背中を初め、体全体の上の部分には、バツ印のように不規則な形の斑点が見られます。さらに、体の脇を横切る線上には、133枚から170枚のうろこがあります。
1940年から1950年にかけては、カスピカイブラウントラウトは体長が40センチから130センチ、体重はおよそ5キロから30キロと報告されていました。しかし、今日ではサイズが小さくなり、体長は70センチから90センチ、体重は8キロから9キロほどの水準に小型化しています。また、最新のデータによれば、この魚の寿命はおよそ3年から6年ほどで、これまでに6年以上生きたとされる個体は見つかっていません。
サケ類は、カスピ海北部の海域でごく稀に見られ、産卵のためにカザフスタン北部のテレク川、アゼルバイジャン共和国のクラ川、イラン北部のセピードルード川にやってきます。この部類の魚の産卵は、水温がおよそ6℃から13℃の水域で行われます。
また、サケ類の魚の産卵にあたっては、河川の中でも水深が浅く、川底に石や砂利があることが必要です。産卵は、10月から開始され、次の年の1月の初めに終了します。産み落とされた卵は水中に放出され、そして川底の砂の中に埋もれていきます。
サケ類の魚の一生のうち、この時期は成長段階に従い、孵化したばかりで腹部に卵黄が付着している前期仔魚(しぎょ)としての段階、卵黄が消失してからヒレの筋が一定の数に達するまでの後期仔魚の段階、そして稚魚としての段階の3つに分けられます。また、稚魚の段階は、さらに河川に移動する時期と、海洋に出てエサを食べる2つの段階に分けられます。この部類の魚は、誕生した年に大きく成長しますが、彼らの成長の主要なプロセスは、海の中で進むことになります。
現在、IUCN・国際自然保護連合が定める、絶滅が危惧される生物のレッドリストに、カスピカイブラウントラウトはまだ掲載されていませんが、イランを初めとするカスピ海沿岸諸国の一部では、この魚はレッドリストに乗せられています。この魚の現在の個体数から、その存続が危険にさらされていることが分かっています。これまでに発表された報告によりますと、1936年から1939年までの期間において、カスピカイブラウントラウトを含めたサケ類の魚の漁獲量は、年間およそ620トンでした。しかし、現在の年間漁獲量は、この数字よりはるかに少ないものとなっています。
専門家の見解では、カスピカイブラウントラウトの存続を脅かす要因として、複数の可能性が考えられています。この魚の個体数の激減に影響した最大の要因は、乱獲や密猟です。カスピカイブラウントラウトが水揚げされるのは、特にこの魚がカスピ海から周辺の河川に移動する時期や産卵の時期に当たります。またそのほかの原因としては、石油系の物質によるカスピ海の汚染が指摘できます。
カスピカイブラウントラウトの個体巣が激減していることへの懸念から、地域諸国はその対策を思案しています。この分野の専門家らは、カスピ海におけるこの魚の個体数を増やす方法の1つとして、人工飼育により育てたカスピカイブラウントラウトを、カスピ海に放流することを提案しています。これは、自然的な方法では繁殖が難しい種類の魚を保護する主な方法の1つとされています。ほかにも、カスピ海への様々な汚染物質の流入を防ぐこと、密猟や乱獲の取り締まりも提案されています。もっとも、こうした措置を講じるためには、まずこれに関するカスピ海沿岸諸国の協力が前提条件であることは言うまでもありません。