4月 21, 2018 19:45 Asia/Tokyo
  • 女性解放の結果としての家庭崩壊
    女性解放の結果としての家庭崩壊

2回目の今夜は、フェミニズム運動から見た女性の解放の結果の1つである、家庭の基盤の崩壊についてお話することにいたしましょう。

ヨーロッパ社会は、第2次世界大戦により数百万人の男性が死亡した結果、労働力の不足に直面しました。同時に、女性の解放や人権が提唱されるようになりました。この時代には、女性の労働者が男性労働者の50%の賃金しか受け取っていなかったことから、各地の工場は女性で溢れていました。

表面上、西洋人の女性は以前よりも夫に依存しなくなりました。女性は、独立した収入を持ち、財産面でも自らの将来を確保するようになりました。しかし、現実にはこうしたプロセスは女性を家庭という安らぎの中心から引き離し、水面下での搾取へと追い込んだのです。

アメリカの歴史家で哲学者のウィル・デュラントは、自らの著作においてこの点を指摘し、「女性の解放は、産業革命の副作用である」と述べています。この自由こそは、フェミニズム運動の出現と同時に、女性を家庭から引き離し、西洋社会における家庭の崩壊の引き金となったのです。

 

それではここで、西側諸国でフェミニズム運動が家庭に及ぼした影響について、家庭問題の専門家であるアーホンダーン博士の話をお聞きください。

「20世紀の前半において、西洋では道徳・哲学を主体とした考え方や、キリスト教にのっとった倫理的な価値観が全て崩壊した。挙句の果てには西洋の知識階級やフェミニズムに鼓舞された一連の運動が同性愛や正式に結婚しないままの同棲生活、みだらな性生活といった様々な逸脱行為や腐敗を正当化し、一般的な慣習にもちこんだことから、社会の倫理構造は根底から完全に崩壊した。こうした倫理の崩壊は、社会の最も基本的な単位である家庭にも容赦なく襲い掛かった。そもそも、家庭は社会の最小単位であるとともに、未来の世代の教育の中心でもあり、またその健全な倫理道徳により平和を求め教養のある次世代を社会に送り出す機能を有している。このような最小単位を持たない社会には将来、排他的でキレやすい人々が溢れることになる」

「イスラムの視点では、家庭の基盤の重要性が重視されており、家庭を持つことで宗教信仰の半分を完成させると見なされている。家庭はいわば、女性を男性の傍らに置き、互いに補い合うことで人間としての完成の域に到達させる工房のようなものである。実際に、神は女性を、助けを求める優美な存在として創造され、男性を、優美さを求め、身の置き所を与える場を与える存在として創造されている。この両者はいずれも、他者を必要としている。それは、神が男性と女性を、互い結ばれることを目的に創造なされたからである。そして、この点が西洋社会で注目されなかった結果、家庭に弊害が及んだのである」

 

家庭の基盤は、人間社会を構成する最も原始的な基本単位、人間の最も自然的かつ恒常的なニーズを満たすものです。人間のそうした最も重要なニーズの1つは平穏であり、神は人間に配偶者を与えることにより、そのニーズを満たさせ、このニーズが満たされることが意味あるものとなるよう、家庭を築くという方法を許可しました。家庭は、社会の最小単位であるとともに、社会を担う未来の世代にとって最初の教育の場でもあります。家庭の中軸をなすのは母親であり、未来の世代となる子どもは、社会性や社会的な行動を家庭で身につけることになります。

過去数十年において、西洋の女性たちの間にはフェミニズムにそった考え方が広まり、女性としての本質にそぐわない場に女性が進出するようになったことから、西洋社会では家庭の重要性が低下し、女性が持つ母親としての役割が薄れていきました。こうした傾向により、正式に入籍しないままの結婚や、離婚の繰り返し、非嫡子の出生や、片親のみの家庭が増加し、様々な弊害を受けやすく、反社会的で暴力的な人間が育成される下地が出来上がってしまったのです。こうした現実は、発表されている統計からも明らかです。

2015年にアメリカで行われた研究調査の結果によれば、同国では平均して6秒ごとに1人が離婚を決断しており、アメリカにおける離婚率は53%と発表されています。また、シャンゼリーゼ通りを恋人と2人で連れ立って歩くという憧れの的になっているフランスでも、現実には55%という高い離婚率が記録されています。

イギリスでも、婚姻率は遂に1889年以来最低に落ち込み、逆に離婚率は6倍に跳ね上がっています。イギリスの社会では、離婚費用として年間40億ポンドが出費されていると計上されています。ワールドデータ・アトラスに発表されている報告では離婚率の上昇に伴う人々の生活様式について触れており、離婚率が上昇する背景には、人間らしさの低下や誠実さの欠如、倫理を守らないことや自信の喪失などが大きく関与している、とされています。

 

西洋諸国では、フェミニズムと女性の表面的な解放の結果の1つとして、正式に結婚しないままの同棲生活という形態が拡大しました。現在、こうした夫婦生活の形態は欧米諸国で多く見られます。この種の夫婦形態においては、男女が正式に入籍しないまま同居生活を送っています。ベストセラー作家であるジェームズ・C・ドブソン博士は、アメリカにおける家庭の危機について次のように述べています。

「正式に結婚していない夫婦で運営される家庭の割合は72%も増加しており、逆に本来の正式な結婚により成り立っている家庭の割合は、世帯全体の25%以下に落ち込んでいる」

今世紀の初頭に発表された情報によれば、アメリカ人の子どもの2人に1人は、正式に結婚していないカップルの子どもだとされています。アメリカでは近年、正式に結婚していない両親から生まれる子どもの数が激増しています。また、アイルランドでも未婚の母の方が普通に結婚した母親よりも一般的な存在になってしまっています。

精神科医の見解では、正式な結婚によらない夫婦の関係は、性的、精神的なニーズを満たすために設けられ、ある側面では男性にとってはプラスとなる可能性がありますが、女性には破壊的な影響を及ぼします。それは、女性の表面的な魅力が時の経過とともに薄れてくると、その女性との生活を継続しようという男性の意欲が薄れ、他の女性に目移りするようになり、このことが相手の女性に精神面で大きなダメージを与える可能性があるからです。また、望まない妊娠やその中絶という行為による身体への弊害も、こうした好ましくない男女関係がもたらす結果の1つです。また、その最大の被害を受けるのは、そうした関係の下に出来た子どもということになります。

西洋の社会では、離婚の増加の一方で、正式に結婚しないままの同棲生活により、片親のみの家庭が増えています。今日、アメリカ人の未成年者全体の23%に当たる15歳未満の青少年813万人が母親のみと、また720万人が父親のみと生活しています。

フランスでも、片親のみの家庭が50%以上増加しています。また、イギリスでは、片親のみの世帯が全世帯のうちのおよそ25%にまで増加しています。これは、正式に結婚したことのない未婚の母の数が増加したことによるものです。

ドイツでは、この20年間に片親のみの家庭が2倍に増えており、またこうした家庭はほぼ全て、母親が切り盛りしています。オーストラリアでも、子どもの4人に1人は片親のみと生活しています。さらに、オーストラリアでの調査によれば、25年後にはこうした家庭が全体の30%から66%にまで増えると予測されています。

アナ2;現在のこうした状況に、有識者の多くは懸念を募らせています。その1人として、アメリカ人ジャーナリストで作家のジョイス・ブルース氏は次のように述べています。

「両親が揃っている家庭の減少は、アメリカ社会の退廃をもたらすことになる」

西側諸国のそのほかの有識者も、片親のみの家庭がもたらすこうした悪影響、ひいては西洋諸国における家庭の凋落を阻止するため、抜本的な対策を模索しています。アメリカ・イリノイ州の社会問題のある研究者は、子どもが安心して暮らせる基盤のしっかりした伝統的な家庭が形成されるべきだと考えています。もっとも、こうした計画が実現されるには、西側諸国の女性が、自分が女性であることや、母親であることの価値と位置づけをきちんと理解しなければなりません。

 

西側諸国が自国の社会の現状を管理するために注目すべき唯一の方策は、女性の家庭復帰です。おそらく、現在危機的な状況にある西洋諸国の家庭にとって最も良い解決法は、19世紀のアメリカの詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの名言に集約されていると思われます。それではここで、ロングフェローの名言をご紹介し、今夜の番組を締めくくることにいたしましょう。

「私の愛しき人よ、家にいて休むがよい。家庭を保持する人こそ、最も幸せである」

次回もどうぞ、お楽しみに。