廃棄物の再利用
前回は、自然環境を救う方法の1つとして、消費モデルの修正についてお話しました。また、専門家の見解では、環境保護の助けとなりうるもう1つの方法として、廃棄物の再利用、即ちリサイクルが提案されています。今回は、廃棄物の再利用について考えることにいたしましょう。
重視される廃棄物の再利用とその現状
今日、自然環境の管理における重要な方法の1つは、発生した廃棄物の再利用のプロセスに注目することです。再利用とは、原材料やエネルギーの消費を減らし、また燃料の消費による大気汚染や、廃棄物の埋め立てによる水質汚染を防ぐため、まだ使える可能性が無駄にならないように、一度消費されたものを新しいものに再び作り変えることです。
資源の再利用により、国民の資本でもあり利益をもたらす資源の浪費を防ぐことが出来、原材料やエネルギーの消費量が抑えられます。これにより、温室効果ガスの排出量も削減されます。このことから、リサイクルは廃棄物の管理における最も重要な概念、或いは行動と見なされます。
廃棄物として捨てられる物質は全て再利用が可能ですが、全ての廃棄物の再利用は費用もかさみ経済的ではありません。このため、再利用されるのは廃棄物のごく一部となっています。
紙の再利用とそれによる利点
今日、再利用や管理の対象となっている廃棄物は、紙類です。紙を製造する原材料は、森林に生息する希少な樹木から作られます。1トンの紙を生産するには、2トンの木材が必要であり、紙の原料となるパルプ1トンを生産するには、6立方メートルの木材が必要となります。このため、森林破壊を防ぐ方法の1つは、森林伐採により作られる原料の再利用であり、このことは自然環境という側面に加えて、経済的な側面をも含みます。
一方で、紙類はエネルギーを消費する5番目の産業であり、製紙業は他の産業に比べて1トン当たりの生産に多くの水を消費します。樹木から1トンの紙を作るためには、44万リットルの水が使われます。しかし、使用済みの紙から再生紙を作るには、わずか1800リットルで十分なのです。
使用済みの紙から再生紙を作ることで、大気汚染を大幅に緩和することが可能です。それは、1トンの紙を作るには、15本から17本もの樹木を切り倒さなければならず、しかもこれらの樹木は年間当たり平均して、6キロの二酸化炭素を酸素に変えることが出来るからです。また、1トンの紙を生産するには、4000キロワットの電力が消費されます。
科学者は、紙のリサイクルにより水の消費量の50%、エネルギーの消費量の64%が節約でき、さらに現在の大気汚染を74%緩和できるという結論に達しています。仮に、1年間にわたって1人の人間が消費する紙を集めると、5.1本分の樹木に相当すると考えられ、この数字は世界全体で1年当たり数十億本もの樹木にのぼります。
プラスチックの再利用とその効果
また、リサイクルにより自然環境保護の助けとなる資源はプラスチックです。今日、家庭や全ての産業分野においてポリマー系物質のうちでも多く使用されるものとして、プラスチック製品の用途が日々増大していることから、世界でこの石油化学加工品は急速に広まり、消費も拡大しています。
今日、世界における石油化学製品のおよそ半分は、プラスチック製品の生産に消費されます。大都市や自然環境内に残存する人工的な物質の多くがプラスチック製のペットボトルであり、それらは自然界では殆ど分解されず、汚染物質の多くはそうしたプラスチック製廃棄物を通じて拡散されます。このため、この種の廃棄物の再利用は環境保護の点でより大きな注目を集めています。
一方で、分解性プラスチックの生産に向けた努力も開始されています。この種のプラスチックは、時間の経過とともに自然界において分解されうる性質を持っています。また、デンプンなどの分解可能な物質を含んでいることから、分解の速度が速まり、微生物や水分、酵素なとにより自然界において分解されます。
専門家は、世界で1年間に1億トンのプラスチックが製造され、そのうちのおよそ42%が包装業に使用されていると見なしています。
これまでに行われた調査から、プラスチックの再利用は、水や石油などの天然資源やエネルギー、そのほかに必要とされる天然資材の浪費を減らすことが分かっています。アメリカのある研究所の報告によれば、プラスチックの生産は、エネルギー消費量全体のおよそ4%を占めていることから、プラスチックの再利用は当然、エネルギーの節約になるということです。例えば、ペットボトルの再利用により、新しいボトルを作る際に消費されるエネルギーの50%から60%が節約され、ペットボトル1本をリサイクルすることで、60ワットの電球1個の6時間分の電力が確保できます。
プラスチックの再利用により、廃棄物の埋め立てに必要な土地面積も減少し、使用済みのプラスチックが新しい製品に再び生まれ変わる可能性が出てきます。1トンのプラスチックを再利用することで、大都市圏の廃棄物の埋め立てに必要な土地面積、およそ6平方メートル以上の得をしたことになるのです。
プラスチックの再利用に加えて、ゴム製品のリサイクルも最近開始されています。これまでの調査からは、1キロのゴムを新たに製造するために必要なエネルギーは、ゴム1キロを再生するために必要なエネルギーの3倍に及ぶことが分かっています。
ガラス類の再利用
都市部における廃棄物の多くを占めるもう1つの物質は、ガラス類です。ガラスは、家庭用品や建物、さらには製品の収納など多くの用途に使用されています。ガラスの製造には、土壌から珪酸などの大量の砂を採掘する必要があり、さらにこれらの物質を非常に高い温度で溶解して調合させなければなりません。このプロセスでは、大量の水と燃料が消費されるほか、大量の二酸化炭素と温室効果ガスが排出されています。
ガラスの再利用が正当な手段として認められる理由には、原材料の不足のほかに、ガラスの再利用が極めて経済的であることが指摘できます。それは、ガラスの破片を溶解する方が、原材料を溶解するより低い温度で済み、これは結果的に燃料の節約につながります。ガラスの生産に使う原材料の調合には、大量のエネルギーが必要とされますが、使用済みのガラスは、それよりはるかに少ないエネルギーで溶解し、再調合が可能です。加工温度が低ければ、溶鉱炉や鋳型そのほかの生産機材にかかる負担も大きく軽減されます。さらに、再生ガラスを利用することで、ガラスの製造に使う溶鉱炉の寿命が15%から20%延長されます。
ガラス1キロを新たに生産するには、およそ4200キロカロリーのエネルギーが必要になり、1トンのガラスを原材料から新たに製造すると、およそ12.7キロの汚染物質が生じます。しかし、ガラスの再生ではこの量は14%から20%削減され、エネルギーの消耗も25%から32%減少します。1トンのガラスを再生することで、およそ120リットルの原油と、およそ2.1トンの原材料が節約されるのです。また、水質汚染は50%、大気汚染も20%緩和される計算になります。1本のガラス瓶は、生産と消費のサイクルにおいて、15回まで再利用できます。
金属類の再利用
廃棄物の再利用で価値があるとされるもう1つの物質として、金属類が挙げられます。環境学者の見解では、貴金属などの金属の再利用は、鉱山からの採掘よりも容易であり、環境汚染も少ないことから、極めて理にかなったものとされています。
再生処理が可能な金属として最もよく知られているのは、アルミニウムと鋼です。それは、銀や銅、青銅などの他の貴金属は通常、廃棄されることがなく、廃棄物処理の問題がないからです。
アルミニウムの再利用により、その製造に必要なエネルギーの90%を節約できるとともに、その製造過程で生じる汚染も95%削減されます。廃棄物から1トンのアルミニウムを分別して再利用すると、およそ400トンの鉱石のほか、700キロのコークスとコールタールが節約されることになります。
また、1トンの鋼の再利用により、1030キロの鉄の鉱脈、さらには石炭580キロと5キロの石灰岩が維持されることになります。高硫化鉄ではなく、硫黄の割合が少ない鉄のスクラップが使用される溶鉱炉では、大気汚染が86%、水質汚染は76%も緩和されます。
これまでにお話したことから、リサイクルは実際に神の恩恵としての天然の資本の復活であり、自然環境の保護に寄与するのみならず、各国の経済や自給自足に大きな役割を果たしているといえます。このため、今日では多くの思想家が廃棄物を汚れた黄金と呼んでいるのです。