管理職における西洋女性の位置づけ
今回は、西側諸国での管理職における女性の位置づけについて考えることにいたしましょう。
国連が提唱する長期的なミレニアム開発目標の1つは、男女平等です。この開発計画の立案者によれば、男女平等は、より高い収入の獲得や、子どもの死亡率の低下に向けた支援、衛生状態の改善、発展に向けた支援を増やすための方法とされています。
ミレニアム開発計画では、女性の教育や、経営者としての女性の経済能力の強化、そして管理職や政治、指導的なポスト、さらには政治的に重要な決定への女性の参加といった分野における、複数の目標が追求されています。
しかし、一部の専門家が認めているように、発展途上国のみならず、男女平等を主張する西側の先進諸国の一部においても、このミレニアム開発目標は今なお深刻な成果のなさに直面しています。2013年の国際的な調査の結果によれば、企業などの管理職全体のうち、女性の占める割合は24%に過ぎず、G8先進8カ国においてさえも、政府の要職における女性の割合は16%にとどまっています。
注目すべき点として、スウェーデンやノルウェーなどの国までもが、男女平等を定める法律の可決から長年が経過したにもかかわらず、男女平等の世界ランキングでは、スウェーデンは27位、ノルウェーは22位と低くなっています。
それではここで、管理職への女性の進出の現状について、女性の権利の分野のイラン人専門家であるアーホンダーン博士の話をお届けすることにいたしましょう。
「女性の能力開発や、ジェンダーの面での発展の目安として注目されている重要な指標の1つは、管理職や重大な決定の場における女性の参加の割合である。現実に、この分野で一部の努力や計画が実施されているにもかかわらず、西側諸国における管理職への女性の進出はそれほど目ぼしいものではない。女性は、管理職への昇進や職業面での進歩にあたって、大きな困難や問題に遭遇していると思われる。この問題は、発展途上国のみならず、先進国においても一大問題として残存している」
「社会心理学者のデビット・バス氏は、指導的な立場にある女性たちをさまざまな角度から包括的に分析した結果、今なおすべての人々の間で、管理職として影響力のある人物の特徴の1つが男性である事だと考えられている、という結論に達した。女性を重要なポストにつけるうえでの上級管理職の否定的な考え方は、一定の役割を果たしている。社会において管理職の地位にある女性たちにとって、適切な就労の機会が不足していることは、西側諸国で管理職の女性たちが問題に直面しているもう1つの問題である。また、社会にとっての重要課題の1つは、女性の能力を信用し、女性を管理職に就けることである」
ILO・国際労働機関の報告によれば、ジャマイカでは、女性が部長や監督などの管理職を占めている可能性は60%で、管理職の女性の割合が最も高い国だとしています。
さらに、コロンビアは女性の管理職の割合は53%で、この分野の世界ランキングの2位となっており、次いで西インド諸島のセントルシアが52%で3位となっています。なお、アメリカにおけるこの割合は43%となっています。
また、国際労働機関の報告によれば、日本では地域社会の発展にもかかわらず、上級管理職に占める女性の割合はわずか10%、企業ではわずか1%にとどまっています。つまり、日本は先進国の中でも国家の管理に果たす女性の役割が最も低く、世界で最下位となっています。日本では、職業を持つ女性の60%以上が、第1子の出産後に離職していますが、このことは日本では家庭が重視されている事によるものです。
一方、イギリスでは首相や主要な政党の党首の大半を女性が占めていますが、政府の要職における男女の比率では、やはり女性の割合は低くなっています。
西側諸国では、一部の女性が世界の大国の指導的な役職に就いていますが、統計によれば世界経済の管理運営に占める女性のシェアは、男性よりもはるかに低くとどまっています。未だに国際的な大企業の社長に女性が就任したことはなく、世界の500社の大企業の役員会のメンバーの90%以上は、依然として男性が占めています。
アメリカのフェミニスト・モリソンを初めとする一部の有識者は、会社組織などにおける男女不平等の最大の原因、そして女性の昇進を阻む最大要因として、女性やマイノリティの昇進を妨げる見えない壁の存在を指摘しています。この見えない壁は現実に、社会の中の女性に関して根強く残っている、一連の誤った既成概念なのです。ジェンダーに関するこの用語は、社会や会社組織において無意識的に作用し、様々な舞台における女性の昇進を阻んでいるのです。
こうした壁が生じる原因は、2つの違った側面から考察することができます。その1つは、女性が自発的にこうした壁の存在を受け入れ、歓迎していることです。この場合、女性が重要な役職を避ける理由として、こなすべき家事が多い事や、子どもの教育に大きな責任を負っていることなどが挙げられます。また、彼女たちが、職員や主任程度に留まる方を希望している可能性もあります。もっとも、こうした状況は彼女たちにとって危険度の高い職業において発生することが多くなっています。
また、第2の側面は別の形で示されています。この場合は、会社組織などでの高いポストにつく女性の能力や意志が男性と同じレベル、時として男性よりも高いものの、職場環境が女性からこうした機会を剥奪する、というものです。こうした見えない壁が発生する原因は、文化的な見解やジェンダー意識に関係しており、女性の能力の欠如とは関係がありません。
男女の不平等の根本的な原因に関しては、様々な解釈がなされています。もっとも、多くの研究者の間では、責任の重い役職を受けたくない女性の数は極めて少ない、とされています。職場環境では、男性も女性も相互に補完しあう存在のはずですが、表面的には男性がトップに立ち、決断を下し、業務を成し遂げています。イギリスのサッチャー元首相や、アメリカのクリントン元国務長官といった政治家の女性たちは、女性はどのような仕事でもできると考えていますが、西洋社会における現実は、まったく別のものなのです。
ドイツの情報によれば、ドイツの女性の上級管理職の割合は全体の6,7%に過ぎません。さらに注目すべき点として、ドイツの大学の教授のうち、女性はわずか5.7%に留まっていることが指摘できます。また、経済において、重要な職についている女性の数は非常に限られており、大企業600社の役員会のメンバー全体における女性の数も、ごく少数となっています。
このことは、ある研究所が最近発表した調査結果でも証明されています。この調査では、アメリカおよびヨーロッパの18カ国における男女平等の現状が、12の指標に基づいて検討されています。その結果、ドイツはこの18カ国のうちで最悪の国のひとつとなっており、この12の指標のいずれにおいても、好ましい状況にある国には入っておらず、18カ国中15位に低迷しています。
さらに、この調査結果からは、ドイツでは管理職あるいは高度な専門職に就いている女性の数が、このランキングの平均よりも低いことが判明しています。また、高等教育機関への女性の進出という点でも、ドイツはヨーロッパで最低水準に甘んじています。そのほか、ヨーロッパ諸国の中で、職場環境での男女不平等が最も顕著な国としては、イタリア、ギリシャ、アイルランドが挙げられます。
さらに、カナダでも、大企業の管理職に女性が占める割合は、わずか3%に過ぎず、女性の会社役員は、5人中1人に留まっています。アメリカでも、管理職に就いている女性は男性よりはるかに少なくなっています。その例として、アメリカでは大学などの高等教育機関のスタッフに占める女性の割合は、わずか8%に過ぎません。
アメリカでこの壁を壊す闘争を続けている、共和党のメリー・トーマス氏は、次のように語っています。
「アメリカでは、今なお女性たちは会社組織などで本来なら就けるべき管理職についていない。だが、それよりも重要なことは、女性管理職の給与が常に男性の管理職より低いことである」
このことから、西側世界は性的な平等というスローガンを謳い、女性に対する人権蹂躙を理由に、イスラム諸国を初めとする一部の国に圧力を加えている一方で、西側諸国自身がこれに関する大きな問題を抱えているといえます。
次回もどうぞ、お楽しみに。