12月 12, 2021 15:41 Asia/Tokyo
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今回は、コーラン第5章アル・マーイダ章食卓についてお話しましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

コーラン第5章アル・マーイダ章食卓は120節あり、イスラムの預言者ムハンマドが亡くなる数ヶ月前に下されました。

 

アル・マーイダ章は、コーランの5番目の章です。この章は、預言者イーサーが天から食べ物・マーイダが下されることを祈ったために、「マーイダ」章と名づけられました。この章は、実際、預言者ムハンマドに下された最後の章です。そのためその節は、イスラムの内容や計画、預言者の後を継ぐ共同体の指導者の問題を強調するものとなっています。さらに、キリスト教徒の三位一体説や、最後の審判に関する議論もこの章で述べられています。この章は、「約束」を意味する言葉でも呼ばれています。この章では、約束を守ることの重要性が注目され、次のようにあります。「信仰を寄せた者たちよ、自らの約束を守りなさい」 このように、信仰を寄せた人は、以前に神に誓った約束を守るべきだとしています。

 

コーラン解釈者によれば、この節は、神との約束、人間同士の約束、政治的、社会的、経済的な約束、それと同様の事柄を含んでおり、非常に広い内容を持っています。そこには、イスラム教徒がイスラム教徒以外の人々と結ぶ契約や約束も含まれています。約束を守ることの重要性について、シーア派初代イマーム、アリーは、エジプトの為政者に任命した教友のマーレクアシュタルに次のような書簡を送っています。

「神から義務付けられた事柄の中でも、約束を守ることほど、様々な違いを持つ世界の人々の間で一致した考え方は存在しない。そのため、無明時代の偶像崇拝者も、様々な約束を自分たちの間で大切にしていた。なぜなら、約束を破れば、痛ましい結末が待っていることを知っていたからだ」

 

コーランのこの章の節は、約束を守るようにとした指示に続き、一連のイスラムの戒律について述べています。その最初のものは、一部の動物の肉が非合法だということです。アル・マーイダ章の第2節では、預言者に下された最後の啓示のうち、幾つかの重要な指示が述べられています。その多く、あるいはその全ては、ハッジ・メッカ巡礼に関するものです。この節が伝えようとしているのは、神の慣習に反したり、神の聖域を侵したりしないように、ということです。ここで言う神の慣習とは、恐らく、ハッジの儀式や計画のことであり、イスラム教徒はその神聖さを守る義務を負っています。戦争や流血が禁じられている月、特にメッカ巡礼を行う月を守り、尊重すること、また、生け贄に捧げる動物の神聖を守ることなどです。神の満足を得たり、メッカ巡礼によって経済的な利益を手にしようとする人の行動を妨害してはなりません。この大きな儀式で、神の家・カアバ神殿の巡礼者たちは特権を認められ、自由を与えられています。この節では、巡礼儀式の際に禁じられていた漁が、儀式が終わった後には合法であることが指摘されています。

 

アル・マーイダ章の第3節は、死んだ動物の肉や豚肉、血などの11個の禁じられた食べ物に触れ、その後で、イスラムの歴史における重要な出来事を挙げています。コーランによれば、その日、不信心者たちはイスラム教徒を支配することを断念しました。イスラム教徒は完成し、敬虔な人間に対する神の恩恵が全うされたのです。

「今日(きょう)、不信心者たちは、あなた方の宗教に絶望した。だから彼らを恐れてはならない。私のみを畏れる方がよい。今日、私はあなた方の教えを完成させ、あなた方への恩恵を全うした。そしてイスラムをあなた方の宗教として受け入れた」

 

 

スンニー派やシーア派の数多くの言い伝えは、この節で言われる「今日」は、「ガディール・ホムの日」だとする点を認めています。その日、イスラムの預言者ムハンマドは、後にシーア派初代イマームとなるアリーを自らの後継者として紹介しました。そしてその日は、イスラムの教えが完成し、不信心者が希望を失った日だとされています。不信心者たちは、イスラムは預言者一人に依存したものであり、預言者が亡くなれば、イスラムも消えてなくなると考えていました。しかし、預言者がアリーを後継者として紹介したために、不信心者はそのような望みを失ったのです。

 

イスラムの預言者ムハンマドは、最後のメッカ巡礼から戻る際、ガディールホムと呼ばれる場所で、旅を共にしていた数千人の巡礼者に、重大な発表があるため、そこで停まってほしいと言いました。そして演説を行った後、アリーの手を上に上げ、彼は、知識、敬虔さ、勇気、公正の点で、預言者の後、イスラム共同体の間で最も優れた人物だとし、アリーは自らの後継者であると宣言しました。預言者の演説が終わった後、まだ人々がその場を離れないうちから天使が啓示を下し、この節が預言者に読まれました。「今日、私はあなた方の宗教を完成させ、あなた方への恩恵を全うした」 そのあと、預言者ムハンマドは言いました。「神は偉大である。その神は、自身の教えを完成させ、あなた方への恩恵を全うし、私の使命と、私の後のアリーの統治に満足された」

「ガディール・ホムの日」

 

ガディールの出来事の後、イスラムの敵たちは、イスラムがしっかりと根を張った持続的な宗教であることを悟りました。この節で、神は人々に対し、自分の宗教を完成させ、彼らへの恩恵を全うしたと語っています。そのため人々も、ふさわしい指導者であるイマームに従い、彼らを自分の見本にする必要があります。コーランによれば、人々を統治する地位とは、実際、神のみのものであり、他の人々による統治は、神に認められた場合にのみ、受け入れられます。

 

アル・マーイダ章の複数の箇所で取り上げられているのは、啓典の民、特にキリスト教徒の人々の考え方における逸脱です。この章では、第72節から先の幾つかの節の中で、イーサーの本質に関するキリスト教徒の考え方は、真理からの逸脱だと見なし、非難しています。第72節と73節には次のようにあります。

「『神はマリヤムの子、イーサーである』と言った人々は、明らかに不信心者である。イーサーは言った。『イスラエルの民よ、私とあなた方の主である唯一の神を崇拝しなさい』 誰でも神に別のものを配する人間に、神は楽園を禁じられる。その人の居場所は地獄である。『神は三つのうちの一つである』と言った人々は、明らかに不信心者となった。唯一の神以外に、崇拝の対象はいない」

 

この2つの節は、イーサーの神性と三位一体に関するキリスト教徒の考え方は、明らかな不信心だとしています。イーサー自身ははっきりと、イスラエルの民にこう言っています。「私とあなた方の主である唯一の神を崇拝しなさい」 これにより、自身を神の僕とし、神に別のものを配することを否定しました。イーサーは、このことを強調するために、このように語っています。「誰でも神に別のものを配する人間は、神から楽園を禁じられ、その居場所は地獄となる」

アル・マーイダ章の第75節は、それをさらに明らかにしています。

「マリヤムの子イーサーは使徒に過ぎなかった。彼以前にも使徒たちがおり、その母親は非常に誠実な女性だった。2人とも食べ物を食べていた」

 

この節は、簡潔な文章でイーサーの神性を否定し、次のように語っています。「イーサーは神の使徒であった。彼以前にも、神から別の使徒たちが遣わされた」 さらに、イーサーとその母マリヤムもほかの人間と同じであり、2人とも食べ物を食べていました。そのため、ほかの創造物と全く同類であり、ほかの創造物と同じように、滅びるものです。そのような性質を持った人間が、永遠の神であるはずはありません。また、イーサーが母親のマリヤムから生まれたことは誰もが知っています。そして、ほかの人間と同じように幼少時代を過ごし、成長しました。神が母親の胎内で育ち、様々な成長の段階で母親を必要とする、そのようなことがあり得るでしょうか?

 

アル・マーイダ章の第110節から最後の節までは、イーサーの運命と、神が彼と彼の共同体にもたらした恩恵について触れています。例えば、イーサーがゆりかごの中で言葉を話したこと、また、ユダヤ教とキリスト教の英知が彼に教えられたことです。第112節から115節では、神から食べ物・マーイダが下されたいきさつについて述べています。第114節には次のようにあります。

「マリヤムの子、イーサーは言った。『神よ、主よ、私たちに天から食料をお送りください。それで、私たちの最初と最後の贈り物、あなたからのしるしとしてください。また私たちに日々の糧をあたえてください。あなたは日々の糧を与える上で最高の方であられます』」

 

次の節は、神と預言者イーサーの復活の日の会話について触れています。

「神はマリヤムの息子、イーサーに言う。『あなたは人々に、私とは母を神以外の2つの崇拝の対象に選べと言ったのか?』 イーサーは言う。『神よ、あなたは無謬の存在であり、私は、自分にふさわしくないことを言う権利はありません。もしそのようなことを私が言ったのならば、それはあなたが知っておられるでしょう』 イーサーは続けて言う。『私は彼らに、私が言うよう命じられている内容以外のことを言っていません。私は彼らに、神を崇拝しなさい、神は私の主であり、あなた方の主であると言ったのです』」

 

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