コーラン第16章アン・ナフル章蜜蜂(3)
今回も引き続き、コーラン第16章アン・ナフル章蜜蜂についてお話しましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
アン・ナフル章の第48節には次のようにあります。
「彼らは神の創造物を見なかったのか。どのようにしてそれらの影がミギに左に動き、神のために謙虚に平伏すのかを」
この節は、神の偉大さの別のしるしに触れています。ここでは、神が様々なものの影を、その偉大さのしるしとして右に左に動かすことが提起され、それらは、主のために平伏す状態にあるとしています。言い換えれば、それら自体だけでなく、その影など、様々なものの痕跡も、神に対して謙虚であると言っているのです。
明らかに、様々なものの影は、私たちの生活において大きな役割を担っています。太陽の光が、生物の生活の源であるのと同じように、その影もまた、光りの強さを調節するために、重要な役割を果たしています。太陽の一定の光が、それも長い間、照らされれば、すべてのものが枯れ果ててしまいますが、影の優しさが、それらをバランスの取れた状態に保ちます。この節は、影が平伏す状態について語っていますが、次の節は、それを、全ての生物に共通の事柄として述べ、次のように語っています。
「天と地にあるすべてのものは、生物も天使たちも、神に平伏し、高慢になることはない」
平伏すという行為は、最大の謙虚さです。全ての存在物が、それらの影さえも、神に対して謙虚であるとき、なぜ人間は高慢になり、反抗するのでしょうか。創造世界における神の全ての創造物は、世界の共通の法則に従っています。一方で、この法則は皆、神からのものです。そのため、実際、すべてのものが神に平伏しているのです。天と地にある全ての生き物は、神に平伏す、という表現は、大地だけでなく、天にも、生き物が存在することをはっきりと示しています。
アン・ナフル章の第65節から数節は、神の様々な恩恵に触れています。まず、このようにあります。「神は天から雨を降らせ、死んだ後の大地を、それによって蘇らせる」 大地が天から降る雨によって蘇ることは、コーランの数多くの節の中で提起されています。乾いて死んだ大地は、次から次へと降る雨によって、またそれに続く太陽の光によって動き出します。様々な種類の花や植物が大地に顔を出し、それに続いて、昆虫や鳥、様々な動物が、生をささやき始めます。これは本当に、創造の傑作のひとつです。
コーランは、次の節、第66節で、家畜の存在という恩恵に触れています。
「また、明らかに家畜の存在の中には、あなた方にとっての教訓がある。我々はあなた方を、彼らの腹の中にあるものから、消化された食べ物、血液の中から、飲むためのきれいな乳で満たす」
乳という純粋で清らかな物質、エネルギーを与えるおいしい飲み物は、血液の中から、老廃物の混ざった消化された食べ物の中から得られます。穢れた嫌悪すべき源から、このような有益でおいしい、きれいなのものが手に入るというのは、実際、驚くべきことです。
神の恩恵に関して述べた節に続き、アン・ナフル章の第68節では、蜜蜂と、ハチミツという重要な食べ物について述べられています。
「汝の主は、蜜蜂に啓示を下した。山や木、人々が作る棚に巣を選ぶようにと。そこで、全ての果実から食べ、汝の主の道を謙虚に進みなさい。彼らの腹の中からは、色とりどりの飲み物が出される。その中には、人々の薬がある。この中には、考える人々にとってのしるしがある」
この節は、蜜蜂に対し、山や木、その他の場所に巣を作るよう啓示が下されたと述べています。コーランでは、啓示という言葉が、様々な意味で使われています。例えば、神の預言者たちに対する啓示、神がムーサーの母親に下した啓示のように、神からのインスピレーションを意味する啓示、そして時には、蜜蜂をはじめとする生物の中に神が与えた、本能的な啓示があります。
コーランは、蜜蜂の神秘的な生活に触れています。現在、科学的な研究により、蜜蜂は、驚くべき集団生活を有していることが分かっています。この節では、まず、蜜蜂の役目は、巣を作ることとされています。私たちはよく、蜜蜂の巣を目にします。蜜蜂は六角形の家を、非常に緻密に、正確に作ります。コーランで指摘されているように、この巣は時に、山の中の険しい岩の間に、また時には木々の枝に、あるいは、人間が提供するくぼんだ場所などに作られます。蜜蜂の行動も興味深いものです。朝になると、蜜蜂の集団が、花のある地域を確認するために巣から出て行きます。彼らは、不思議な方法によってそれを確認した後、巣から花までの距離や方向を、仲間たちに伝えます。その上で、彼らは様々な色とりどりの花の蜜を吸います。これにより、蜜蜂から出される特別な飲み物、液体は、様々な色をした花や果実のエキスです。このような清らかな飲み物は、人間にとって、特別な効果があります。人間はハチミツを通して、花や植物の治療の効果を得ます。蜜蜂のような小さな昆虫による、巣の作り方、花の利用、ハチミツの生産は、世界の創造主である神の偉大さを示す明らかなしるしです。