コーラン第33章アル・アハザーブ章部族同盟(2)
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聖典コーラン
今回も、前回に引き続き、コーラン第33章アル・アハザーブ章部族同盟についてお話ししましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
前回の番組でお話ししたように、アル・アハザーブ章の第9節から先の17節は、イスラムの歴史上、最大の出来事の一つであるアハザーブの戦いについて触れています。この戦いは、イスラム暦5年に起こりました。
アハザーブの戦いは、全ての人にとって大きな試練でした。この章の節は、この戦争で様々なグループの人々が取った態度について触れています。真の敬虔な人々、信仰の弱い人々、偽善者、彼らは皆、独自の行動を取りました。戦争が始まると、真の敬虔な人々は、神の預言者と共に戦おうとしました。しかし、偽善者はどのように行動したでしょうか?
アル・アハザーブ章の第12節を見てみましょう。
「そのとき、偽善者と心の中に病を抱える人々は言った。『神とその預言者は、偽りの約束しか私たちにしなかった』」
彼らはメディナの人々に、「敵の軍勢を前に、あなた方には何もできない。だから戦場を離れ、自分と家族のことを救いなさい」と言いました。このような偽善者の一団は、預言者に引き返す許可をもらおうとし、そのために口実を探しました。彼らは、「私たちの家は壁も扉もしっかりとした造りではありません」と言っていました。しかし彼らはただ、そこを離れて逃げたかっただけでした。コーランの節は預言者にこのように語りかけています。
「彼らに言え、『死んだり、殺されたりすることから逃げても、あなたたちには何の利益もない。現世での生活もあと数日を残すのみだろう。もしあなた方の死が絶対のものであれば、どこにいようと死に襲われる。だがもし期限が来ていないのなら、現世で屈辱にまみれた数日の生を送るだろう』と」
その後、戦場からは一歩離れ、信仰の弱い人たちにもそれを勧める偽善者の別のグループに触れています。彼らは、「私たちのところに来て、この戦いからは身を引くのだ」と言っていました。コーランは、偽善者について、次のように語っています。
「恐ろしく危機的な瞬間が訪れるとき、彼らが恐ろしさのあまり、目が飛び出た状態で、汝を見ているのを目にするだろう。まるでもうすぐ死んでしまう人かのように。だが嵐が過ぎ、恐怖が去ると、彼らは居丈高に叫び、乱暴な言葉で戦利品の分け前を求める」
コーランは続けて、この大きな戦いにおける敬虔な人間の仲裁と抵抗に触れ、まず、預言者に関して語っています。この偉大な船長は、船が激しい嵐に巻き込まれたときにも、決して弱さを見せません。彼は導きの明かりであり、人々の心を落ち着ける源です。誰でも彼に従えば、自分の道を改め、救済のための正しい道に入ることができます。アル・アハザーブ章の第21節は次のように語っています。
「あなた方にとって、神の預言者の中にはよい模範がある。神と最後の審判に希望を持ち、神の名を多く唱える人々にとって」
アル・アハザーブの戦いにおける預言者の司令官としての役割は、他者にとっての模範です。軍勢を導いて統率し、戦士たちに希望を与えること、様々な問題において協力し、抵抗すること。とはいえ、預言者を模範とすることは、戦場だけに限られません。人生のあらゆる場面において、預言者は敬虔な人間の模範なのです。
アル・アハザーブ章の第22節は、敬虔な人間の状態を説明しています。そこでは、彼らは敵の大軍を目にしても心に迷いを抱くどころか、信仰と神への服従の精神を高めた人々、とされています。彼らは預言者に追従する上で誰よりも先に立ち、コーランの言葉を借りれば、神との約束を誠実に守りました。一部の人々は約束を守って殉教し、また別の人々はそれを待ち、決して約束を変更したりはしませんでした。この節によれば、真の敬虔な人間は、常に神との約束を守り、それを後退したり、諦めたりすることはありません。
アル・アハザーブ章では、神の預言者の妻たちの地位、預言者の妻としての状態やすべきこと、してはならないことなどが述べられています。アル・アハザーブ章第33節を見てみましょう。
「まことに神は、あなた方預言者の一門から穢れを遠ざけ、あなた方を完全に清らかなものにすることを望まれている」
預言者の妻、ウンマ・サラマは次のように語っています。「ある日、ファーティマが食事を作って預言者のもとに運びました。その日、預言者は私の家にいました。ファーティマが料理を出すと、預言者は、ファーティマに夫のアリーと子供2人も呼んで、一緒に食事をしようと伝えるように言いました。彼らがやって来たとき、皆で一緒に食事を取りました。それから預言者は、着ていた上着を彼らにかけて、こう言いました。『神よ、彼らは私の一門であり、私の近親者である。だから彼らから穢れを遠ざけ、清らかなものにしてください』 そのとき、アル・アハザーブ章の第33節が下されました。そこで私は言いました。
『預言者よ、私もあなたと一緒でしょうか』 すると預言者は言いました。『あなたは私の一門ではない。だが善を行う女性であり、美徳を備えている』」
この節は、コーランの確かな節の一つであり、シーア派の多くの伝承に加え、スンニー派の伝承でも、預言者の近親者5人の地位について下されたとされています。この節は、「タトヒール・清潔」と呼ばれ、物質的な要素を捨て、最高の清らかさを手にした、気高い人間の真実を描いています。 彼らは神の満足を得、優れた人間性を具現する人々です。(了)