コーラン第60章アル・ムムタヒナ章試問される女(2)
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聖典コーラン
今回も前回に引き続き、コーラン第60章アル・ムムタヒナ章試問される女を見ていきましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
アル・ムムタヒナ章は全部で13節あり、メディナで下されました。
この章では、主に、神のための友好と敵対、多神教徒との友好の否定、預言者イブラヒームからインスピレーションを得るようにとのイスラム教徒への呼びかけ、友好と敵対の境界、移住した女性たちと彼女たちへの試練、またそれに関する戒律、イスラム教徒の女性たちと忠誠を誓う際の条件が述べられています。
コーランは、人類を教育するため、さまざまな節の中で、実際のモデルを提示しています。この章の第4節では、イスラム教徒に対し、すべての民に尊敬される偉大な指導者として、預言者イブラヒームを模範にするよう求めています。預言者とその教友たちは、神の敵たちにはっきりと嫌悪を示し、多神教徒の民に対し、このように言っていました。「私たちは、あなたたちと、あなたたちが神以外に崇拝するものを嫌悪する。私たちはあなたたちの教えを信じない。あなたたちが唯一の神を信仰しない限り、私たちの間には永遠の敵対がある」 当然のことながら、イブラヒームのような偉大な模範は、非常に影響力があり、時の経過によってその役割が薄れることはありません。
この章がムムタヒナと名づけられたのは、メディナに移住した女性たちが試されたことに関する第10節からきています。神の預言者は、ホダイビーヤの和平の中で、メッカの多神教徒たちと契約を結びました。この契約の内容のひとつは、誰でもメッカの出身者でイスラム教徒に加わった者がいれば、その人を戻すべきだが、イスラム教徒がイスラムを捨て、メッカに戻れば、その人を戻さなくてもいいとするものでした。そのとき、一人の女性がイスラムを受け入れ、ホダイビーヤの土地でイスラム教徒に加わりました。彼女の夫は預言者のもとに行き、言いました。「預言者よ、妻を私のもとに返してください。それは私たちの契約内容の筆頭です」
このとき、アルムムタヒナ章の第10節が下され、移民の女性たちを試すよう指示がおりました。その試問とは、「その移住が、夫への敵対心、別の男性やメディナという土地への関心、あるいは別の物質的な目的によるものではなく、イスラムのためだけだったと誓いを立てなさい」というものでした。その女性は本当に信仰を寄せたと誓いを立てました。ここで、神の預言者ムハンマドは、その女性の夫が支払っていた婚資金を夫に返して言いました。「この契約によれば、男性だけを戻すのであって、女性はそれに含まれない」 こうして、彼女が戻ることは妨げられました。
アルムムタヒナ章の第12節では、女性たちへの忠誠について述べられています。
「預言者よ、信仰を持った女性たちが汝のもとにやってきて、神に別のものを配さず、盗みをせず、不義を働くことも子どもを殺すこともなく、自分の手足の間で、いかなる誹謗中傷も行わず、いかなるふさわしい行いにおいて、汝に背を向けないと誓約するとき、汝も彼らに誓約し、彼らのために神の赦しを求めなさい。神は寛容で罪を赦される方であられる」
この節では、預言者に対し、心からの信仰と預言者への服従が確認された女性たちと誓約を交わすよう求めています。コーラン解釈者たちは、メッカ征服の日、預言者がサファーの山に登った際、男性たちと誓約を交わしたとしています。また、信仰を寄せていたメッカの女性たちも、忠誠の誓いを立てるために預言者のもとにやって来ました。そのとき、この節が下され、女性たちとの誓約の条件が明らかにされました。これにより、預言者は彼女たちと誓約を交わしました。その方法とは、預言者がその手を水の入った器の中に入れ、その後で、女性たちに、「誓約のために自分の手を器の中にいれなさい」と言いました。
このことは、「イスラムは人間社会の半分を占める女性たちを軽視している」と言う主張に反し、イスラムは女性たちに、最も重要な政治・社会問題に参加させていることを示しています。そうした例の一つは、預言者への誓約の問題であり、女性たちも男性と肩を並べて、この神の誓約に参加しました。この節で、預言者と女性の誓約の条件として挙げられている事柄は、建設的で価値のあるものです。このような状況により、女性の人間的なアイデンティティを生きたものとし、男性たちの欲望を満たすための価値のないものという見方から女性たちを救っています。
また、この節から明らかに分かることは、女性は独立した存在であり、権利や法的な人格を持っているということです。預言者の時代、女性たちは直接、預言者と話し合い、さまざまな問題について意見を交換していました。(了)