7月 03, 2018 18:40 Asia/Tokyo
  • ズルカルナインの物語
    ズルカルナインの物語

今回は英知と賢明な行動によって、人々に健康と安全をもたらし、高い地位や権力を有していながら、決して驕ることのなかったズルカルナインという人物の物語をお送りしましょう。

コーランの物語の一つに、ズルカルナインという人物に関するものがあります。神は彼の物語を、第18章アル・キャアフ章洞窟で、このような言葉によって始めています。

 

「彼らは汝に、ズルカルナインについて尋ねるだろう。言え、『まもなくあなたたちのために、彼の物語を話すだろう』」

 

ズルカルナインは、栄光と権力を手に、軍勢を率いて西への旅を始めました。旅が終わろうとするとき、彼らは、空に広がっていた太陽の光が、少しずつ消え入っていく場所にたどり着きました。ズルカルナインは地平線を見つめ、美しい太陽がその彼方に沈んでいくのを見つめていました。そして、仲間たちに言いました。

 

「非常に美しい光景だ。あなたたちもそう思うだろう?」

 

仲間たちもそれに同意しました。ズルカルナインは言いました。

 

「この場所に留まることにしよう」

 

 彼らは町に入りました。人々は、ズルカルナインの威風堂々とした姿を見て、“彼もまた、他の傲慢な富裕者たちと同じように、自分たちのことを支配しに来たのだ”と考えました。そのため、ズルカルナインたちのために道を開け、脇に引き下がりました。しかし、ズルカルナインは穏やかに、謙虚な態度で、誰かを傷つけることもなく、彼らに向かって言いました。

 

「私があなた方に優しく対応するか、それともあなた方を苦しめるかの判断を、神は私に委ねられた」

 

人々は、ズルカルナインの最後の言葉を待っていました。ズルカルナインは続けました。

 

「しかし私は、あなた方に優しく対応しよう。神を崇拝する道を選び、ふさわしい行いをする人々は、私たちの支援を受けるだろう。だが、多神教崇拝に走り、圧制を行い、社会に損害を及ぼす人々は、処罰される。我々はあなた方に、簡単な指示を与えるだろう」

 

人々は、このような対応を受けるとは思っていなかったため、安堵のため息をつき、ズルカルナインのもとに駆け寄りました。

 

ズルカルナインは、西方の地域を征服した後、東方へと向かいました。彼は全ての場所で勝利を収めました。彼の公正なやり方は全ての人の耳に届いていたため、人々は一切、彼に抵抗することはありませんでした。

 

旅を続ける中で、ズルカルナインは、今も原始的な状態から抜け出しておらず、荒野で裸で暮らす民に出会いました。彼はそのような光景を目にし、衝撃を受け、言いました。

 

「彼らは太陽以外の覆いを持たないようだ。神よ、彼らによい暮らしを教えることができるよう、私をお助けください」 

 

それからまもなく、この地域の人々の状況が改善されました。彼らのうちの数人が、ズルカルナインの許にやって来て言いました。

 

「どうかここに留まり、私たちの長となってください」

 

 ズルカルナインは言いました。

 

「しかし、私は旅を続けなければならない」

 

 ズルカルナインはそれから間もなく、壮大な軍勢と共に出発していきました。

 

しばらく進んだ後、ズルカルナインは2つの山の間に到着し、また別の民に出会いました。

 

「彼らは経済的に好ましい状況にある。だが、なぜあれほど不安そうにしているのか。彼らの表情には恐怖が見え隠れしている」

 

 軍勢の一人が言いました。

 

「どうやら、何かを言いたいが、言葉を理解できないようだ」

 

 ズルカルナインはようやく、山の向こうにヤージュージとマージュージという野蛮な部族が暮らしていて、この地域の人々を常に攻撃し、堕落や腐敗の原因になっているということを理解しました。

 

その民の長老たちがズルカルナインの許にやって来て、自分たちを助けてくれれば、どんなものでも与えると言いました。ズルカルナインも彼らを助けることを約束し、言いました。

 

「神が私に与えてくれた信用と力は、あなた方が支払おうとしてくれるものよりもずっと優れています。人を集めてください。あなた方と彼らの間に大きな障壁を作るつもりです」

 

 町の様子が変わりました。人々は皆、一生懸命に作業を続け、ズルカルナインのために鉄の破片を集めました。ズルカルナインも、その2つの山の間に鉄の破片を積み重ね、そこに溶かした銅を流し入れて、強固で大きな壁を作りました。のぼることも、穴を開けることもできないような、大きくてしっかりとした障壁でした。人々は大喜びでした。祝祭が催され、人々は、ズルカルナインの驚異的な傑作を称賛し、彼を褒め称えました。しかしズルカルナインは、高慢になるどころか、謙虚な態度で人々にこう言いました。

 

「あなたがこれまでに目にしたこと、また今目にしていることは、ズルカルナインには関係がありません。私もあなた方と同じ、いつかは滅びる弱い人間です。このような賢い知恵と大きな可能性は皆、神から与えられたものです。神は私に慈悲を与えてくださました。神の約束がきたとき、この障壁も崩れ落ちることでしょう。神の約束は絶対に実現されるのです」

 

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