7月 26, 2018 00:36 Asia/Tokyo
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    マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

今回は、イラン北部マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園についてご紹介しましょう。

マーザンダラーン州の自然

 

マーザンダラーン州では、自然の博物館とも言われる、400万年の歴史を持つヒルカニアの森林の存在により、樹木や植樹、庭園作りは、建築と敷地内での植物の秩序、植物との共存、芸術を示すものとなっています。アッバースアーバード庭園は、ベフシャフルという町から9キロ離れたアルボルズ山脈の裾野、深い森林の中にあります。アッバースアーバード庭園は、2011年にユネスコの世界遺産に登録されたイラン式庭園のひとつとなっています。この庭園は、サファヴィー朝時代の庭園で、他の歴史的な庭園と比べて優れた特徴を有しています。サファヴィー朝時代に、この地域に設置された灌漑システムは類を見ないものであり、この庭園が世界遺産に登録された理由の一つは、灌漑に関するこの独特のシステムにあります。とはいえ、建築の点でも、この庭園は、際立った特徴を有しています。

 

ヒルカニアの森林

 

アッバースアーバード庭園は、丘の上に階段状に建設されています。サファヴィー朝時代の設計者たちは、丘を切り崩し、そこに段を作って表面を平らにし、階段状の庭園を造りました。そして丘の最上部には建物を建てました。アッバースアーバード庭園は、他に類を見ないイラン式の庭園です。また、中央には大きな池が、その周りに小さな池が建設されています。庭園の建築、デザインは、完全にシンメトリーになっており、それが庭園の美しさを倍増させています。この庭園の建設は、陶器の管や傾斜の他、水のせせらぎが効果的に使われています。

マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

 

アッバースアーバード庭園は、北側にベフシャフル平原とカスピ海、南側にはアッバースアーバードのダム湖を見渡すことができます。この庭園には、ダム、貯水槽、ハンマームとよばれる公衆浴場、600メートルに渡る水の供給設備、そして、庭園から186メートルのところにある2本のレンガ造りの塔があります。この庭園は、サファヴィー朝のアッバース1世の指示により、現在のベフシャフルの建設と同時に、1611年、当時のイラン人の建築家や芸術家たちによって建設されました。アッバースアーバード庭園は、現在、イランの非砂漠地帯にある庭園の中でも最も重要なものとされ、その広さは500ヘクタール近くに及びます。

マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

 

アッバースアーバードのダム湖は、貯水量60万立方メートルで、モルタルでできています。このダムはイラン文化遺産協会によって文化・歴史遺産に登録されています。アッバースアーバードの湖は、10ヘクタールを超える面積を有し、周囲から流れ込む水によって湖の水のかさがふえ、水面が上昇すると、中央にある建物が18メートルも水の中に沈み、その天上と天上に植えられた木々が見えるのみとなります。

マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

 

アッバースアーバードのダムの貯水槽の4つのアーチの建物は、ダムにかかる水の圧力を減らすためと、娯楽のための2つの機能があります。庭園の奥には、そこへと続くレンガ造りの階段があり、貯水槽の中には、木製の橋の跡が明らかです。4つのアーチの上には、池と噴水の跡があり、見る物を魅了しています。これらの建物へは、陶製の管を通して水が送られています。

 

マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

 

水の供給設備は、庭園から600メートル離れた場所にあります。この場所は坂の途中の平らな場所にあり、この場所と庭園の高さはおよそ10メートルも違います。泉の水がこの場所へと導かれ、その後、数々の池を回って浄化され、陶製の管をとって坂を下り、メインの庭園へと流れ込んでいたと考えられています。水の供給設備がある場所の広さは、およそ3500平方メートルで、残っている建築により、サファヴィー朝時代、この敷地内の塔は、灌漑における重要性により、見張り人によって保護されていました。

 

マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

 

庭園から北におよそ5キロ離れた場所、ミヤーンカーレ湾とベフシャフル平原を見渡す山の上に、サファヴィー朝時代の建築の跡が見られます。当初の建物は、50メートルかける40メートルで、主な建築資材は石とレンガです。そこに行くには、庭園から続く石畳の道を通ります。建物が山の上にあること、トルコブルーや緑、茶色のうわぐすりが塗られた陶器が発見されたこと、アッバースアーバードの庭園のメインの敷地内では、宮殿の建築跡が発見されていないこと、これらから、この場所は、恐らく、アッバースアーバードのサファヴィー朝の皇帝たちの宮殿だったと考えられています。

 

マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

 

庭園の西の角、庭園よりも少し下の場所に、160平方メートルの敷地面積を持つ歴史的な公衆浴場・ハンマームがあります。これまでの調査やその外観から、ハンマームの建物の天上はドーム型をしていて、その主な資材はレンガでしたが、タイル細工やモルタルも使用されています。ハンマームの建物には、脱衣所や体を洗う場所など、様々な箇所があります。この建物の重要性は、水の移送方法にあります。水は、ハンマームの建物の東側から、この建物の壁の内側にある陶製の管を通り、ハンマームの壁の北側を通って、西側の内部に入り、貯水槽を満たします。この貯水槽が満たされた後、陶製の管を通して水が温められ、別の浴槽に移されます。このハンマームでは、お湯も冷たい水と同じように届けられています。ただし、冷たい水は、ハンマームの東側を通り、建物の外にある池を満たしてから、陶製の管を伝って浴場にある浴槽を満たしていたところが異なります。言い換えれば、ベフシャフルのアッバースアーバードの歴史的なハンマームの浴槽は、水とお湯の2つの水の移送方法を有していました。

マーザンダラーン州のアッバースアーバード庭園

 

アッバースアーバードの歴史的な庭園には、サファヴィー朝時代の、直径7メートルと14メートルの2本の塔が残っています。この塔は、モルタルとレンガでできています。水の供給設備の上に、この2本の塔が造られているため、この塔は単に見張りのみを目的としたものではないと考えられます。庭園とこの敷地の高低差を考えると、2本の塔は、実際、サファヴィー朝時代の技術者たちが、水の圧力によるダメージを防ぐために設置したものだと思われます。また、この地域は豊かな森になっており、塔から遠くを見渡すことはできません。また、敷地内には、この他に塔が見当たりません。そのため、この2本の塔は、見張りのためだけではなく、水の圧力を緩和するために建設されたものだと言えるでしょう。

 

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