光の彼方への旅立ち、ルーム章(4)
コーラン 第30章 ルーム章 ローマ 第20節~第22節
慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において
第20節
「また、神の[力の]しるしのひとつは、あなた方を[魂のない]泥から作った。その後、あなた方は人間[の姿]で[地上に]散らばった」(30:20)
(20)وَمِنْ آيَاتِهِ أَنْ خَلَقَكُمْ مِنْ تُرَابٍ ثُمَّ إِذَا أَنْتُمْ بَشَرٌ تَنْتَشِرُونَ
前回の番組では、死人をよみがえらせたり、生きた人間を死なせたりする神の力についてお話ししました。この節とその後の節は、存在物の創造、特に人間の創造における神の力のしるしに触れ、まず、次のように語っています。「今日、地球上に散らばっているあなた方人間の存在の源は、魂のない泥である」 この節は、コーランの別の節でも述べられている、“人間は最初、土から創造された”ということを指しているとも取れますが、また、人間は直接、あるいは間接的に土から得られるものを栄養源にしていることを指している、とも捉えることができます。その意味でも、人間は土からできていると言えるでしょう。
自らの生と創造の源に注目すれば、世界の創造主が、どのようにして、魂のない土から、人間に技術や知識の進歩をもたらす脳細胞を作ったかがわかるでしょう。土は、感情や理解力、動きを持ちません。それが驚くべき変化の中で細胞に変わり、人間はそれらによって、理解力や感情、動きの持ち主となるのです。これは非常に驚くべきことです。
第20節の教え
● 自分を知ることは、神を知ることの前段です。人間は、地上における神の明らかな創造物のひとつです。
● 私たち人間は皆、土から生まれ、土に戻ります。そのため、意味のない誇りを捨て、高慢にならないようにしましょう。
第21節
「また、神のしるしのひとつは、あなた方自身の中から配偶者を創造されたことである。あなた方は配偶者の傍らで安心を得、あなた方の間には友好と優しさが与えられた。明らかに、この中には、考える人々へのしるしがある」(30:21)
(21)وَمِنْ آيَاتِهِ أَنْ خَلَقَ لَكُمْ مِنْ أَنْفُسِكُمْ أَزْوَاجًا لِتَسْكُنُوا إِلَيْهَا وَجَعَلَ بَيْنَكُمْ مَوَدَّةً وَرَحْمَةً إِنَّ فِي ذَلِكَ لَآيَاتٍ لِقَوْمٍ يَتَفَكَّرُونَ
人間の創造に続き、この節は、神の別のしるしである男女のつがいの法則に触れ、次のように語っています。「神はあらゆる人間に配偶者を設けた。人生において、常に援助者となり、その人の傍らで安らぎが得られるように。このような結びつきは、配偶者の間に神から与えられた関心や愛情によって生まれ、人生を通して、互いに心の結びつきを持つ。この結びつきは、男女を互いに補い合わせ、喜びと活力を与える。間違いなく、この結びつきの重要な効果は、出生率の増加と人類の種の存続である。家族の結びつきはまた、社会の基盤、社会的な責任を受け入れる基盤となる」
第21節の教え
● 女性は男性よりも劣った存在であるとする逸脱した考え方が一部に存在しますが、男女の創造の源はひとつです。
● イスラムの教えや文化において、好ましく容認される家族とは、夫婦が互いの安心の源となっている家族であり、互いにストレスを与え合ったり、対立するような夫婦ではありません。
● 愛情は、神から夫婦に与えられた贈り物です。それにより、夫婦の結びつきは永遠のものとなります。
● 愛情や関心が夫婦の結びつきの要素となるように、共同生活を続けていくためにも、愛情が必要となります。
第22節
「また、天と地の創造、あなた方の言語や肌の色の違いは、彼のしるしのひとつである。本当にその中には、賢い者たちにとってのしるしがある」 (30:22)
(22)وَمِنْ آيَاتِهِ خَلْقُ السَّمَاوَاتِ وَالْأَرْضِ وَاخْتِلَافُ أَلْسِنَتِكُمْ وَأَلْوَانِكُمْ إِنَّ فِي ذَلِكَ لَآيَاتٍ لِلْعَالِمِينَ
この節は、天と地の創造と共に、人間の創造について提起し、人間が自分自身と共に、周囲の世界についても注目するよう促しています。衛星や望遠鏡などの存在にも拘わらず、人類は今なお、天体について深い知識を得ることができていません。しかし、その偉大さは認識しています。大地もまた、たくさんの驚嘆すべき要素を有しており、人類にとって、その大部分は未知のものです。大地には、石油や天然ガス、鉱物資源など、多くの物質が眠っています。海洋の奥深くには、たくさんの魚が存在し、人間はそれらの恩恵に授かっています。
この節は再び、人間の2つの重要な特徴を指摘しています。それは、言語と肌の色の違いです。言語はさまざまな方言が形作られる要素であり、肌の色は、人種の違いを生じさせています。もし全ての人間が同じ姿、同じ肌の色、同じ声を持ち、互いに似通っていたら、それぞれの人間をどのように区別していたのでしょうか?子供たちは、たくさんの同じ年頃の男女の中から、どのようにして自分の両親を見分けることができていたでしょう。また夫婦はどのようにして、互いの存在を確かめていたのでしょうか。このような言語や姿形の違いは、人間を互いに見分ける上での要素です。もしこのような違いがなかったら、人間の社会生活は単調で面白味のないものになっていたでしょう。皆が同じモデル、同じ色の車に乗っている町に入るのと同じようなものではないでしょうか。
第22節の教え
● 自然科学は、人間が自然を活用できるようにするだけでなく、全知全能の創造主である神を信じる心を強化する助けとなります。
● 学者たちによれば、人種、肌の色、言語の違いは、神の偉大さのしるしです。しかし、無知な人間は、このような違いを、他人をあざけり、自分を誇るための要素と見なします。
● あらゆる言語はそれぞれに価値を有しています。そのため、他の人種や言語を嘲笑する権利は誰にもありません。