4月 15, 2019 17:26 Asia/Tokyo

コーラン 第31章ルクマーン章 ログマーン 第12節~第13節

慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において

第12節

「またまことに我々はルクマーンに、神に感謝するよう、英知を授けた。誰でも感謝する者は、自分のために感謝をするのである。また誰かが感謝をしなかったとしても、[神が損害を蒙ることはない。なぜなら]神は他を必要とせず、賞賛された方である」(31:12)

(12)وَلَقَدْ آتَيْنَا لُقْمَانَ الْحِكْمَةَ أَنِ اشْكُرْ لِلَّهِ وَمَنْ يَشْكُرْ فَإِنَّمَا يَشْكُرُ لِنَفْسِهِ وَمَنْ كَفَرَ فَإِنَّ اللَّهَ غَنِيٌّ حَمِيدٌ 

 

この節とその先の数節は、賢者ログマーンと彼の息子への忠告について語っています。コーランや伝承によれば、ログマーンは預言者ではありませんでしたが、高貴な人物であり、神から英知を授けられていたとされています。英知とは洞察力や聡明さのことであり、神を知ることによって生まれ、その影響は、人間の言動に明らかになります。言葉をコントロールする、欲望を抑える、責任感を持つ、謙虚である、無意味な行いから遠ざかる、これらは人間に英知が生まれるきっかけとなる事柄です。とはいえ、この地位に達したのはログマーンだけではありません。伝承によれば、自らの言動において正直で純粋であった敬虔な人間は皆、神からそのような偉大な恩恵を与えられています。

 

ログマーンの忠告は、神が直接、コーランの中でも述べることができましたが、それらをログマーンの口から、息子に対して述べさせています。それによって、英知の真の意味と、他人を指導する上での英知を持つ人間の責務を私たちが理解できるようにするためです。

 

ログマーンの息子への忠告は、次の2つの事柄に集約されています。ひとつは、家庭や社会関係において、よく考えてものを言い、よく考えて行動すること、そしてもうひとつは、生活の中で神の指示を実践することです。それこそが英知の意味するところであり、真の賢者とは、この2つの特徴を兼ね備えると共に、人々をもそれに導くような人のことを言います。

 

当然のことながら、このような段階に達し、このような偉大な恩恵にさずかるには、無限の感謝が必要です。真の感謝とは、あらゆる恩恵をしかるべきときに用いることであり、そうすればその利益は再び人間に返ってきて、人間の成長や向上の源となります。しかし、恩恵を誤った形で用いることは、それに対する裏切りと同じです。人間が言葉では神に感謝しても、行動が神に背いたものであれば、その感謝は何の意味も持たず、それどころか、損害をもたらす原因となります。その損害は人間自身にふりかかるのであって、神には何の害も及びません。

 

第12節の教えを

  • 普通の人間も、清らかで正直であれば、神の恩恵や慈悲にさずかり、たとえ高い知識を持たなかったとしても、英知に達します。
  • 人間の行動による利益や損害はその人自身に返ります。また、神の恩恵への感謝やそれへの裏切りの結果も、その人自身に返るのであって、神に影響はありません。

 

第13節  

「また、[思い起こすがよい。]ログマーンが息子に忠告を与えながら、こういった時のことを。『息子よ、何ものも神と同等に据えてはならない。本当に多神教信仰は大きな圧制である』」(31:13)

(13)وَإِذْ قَالَ لُقْمَانُ لِابْنِهِ وَهُوَ يَعِظُهُ يَا بُنَيَّ لَا تُشْرِكْ بِاللَّهِ إِنَّ الشِّرْكَ لَظُلْمٌ عَظِيمٌ 

 

ログマーンの息子に対する最初の忠告は、多神教信仰から遠ざかることでした。それは、信条でも、行動でも同様です。偶像、太陽や月、星、動物への崇拝は、歴史を通じて、さまざまな民族の間に見られてきました。多くの人は、無知によって、これらの魂のない物体や一部の生き物が、自分たちの人生や運命に影響を及ぼすと考えています。そのため、それらが世界の管理や人間の問題に関わっていると考え、それらを崇拝するのです。神の唯一性を信じる敬虔な人の中にも、神以外のものに頭を垂れたりはしなくても、行動の中で、多神教を信仰している人が数多く存在します。彼らは富や権力の服従者であり、それらを手に入れるためなら、あらゆる罪を犯すこともいとわない人々です。

 

多神教信仰による影響や損害を知っている賢者ログマーンは、自らの道徳的な指導を始める前に、息子に対し、神以外のものを信じてはならないと諭し、それを非常に大きな圧制であるとしています。その圧制とは、最初はその人自身に、その後、神の預言者と宗教に損害を与えます。

 

興味深いのは、この節が、子供に教育を施し、正しい信条を教える上での両親の義務を間接的に述べていることです。とはいえ、その方法も重要です。そのような訓戒の説き方は、支配的、あるいは命令的な口調よりも影響力が強く、子供にも受け入れられやすいものです。

 

第13節の教えを

  • 全ての人間は訓戒を必要としています。シーア派初代イマーム、アリーは、教友たちにこう言っています。「私に訓戒を施してください。なぜなら、聞くことには、知ることにはない影響がある」。
  • 子供の教育方法を、偉人や賢者から学びましょう。そうすれば、その道において過ちに陥ることが少なくなります。
  • 子供たちのことを常に気にかけましょう。子供は両親の忠告や指導を必要としています。最も適した子供の教育方法のひとつは、子供に人格を与え、愛情を注ぎ、親密な会話を交わすことです。