11月 25, 2019 13:54 Asia/Tokyo
  • ソフラヴァルディー
    ソフラヴァルディー

今回も、前回に続いて、12世紀のイランの著名な哲学者シャハーボッディーン・ソフラヴァルディーについてお話することにいたしましょう。今夜は特に、イランのこの偉大な哲学者の生涯と作品、業績についてご紹介いたします。

ソフラヴァルディーは、イスラム神秘主義哲学の伝播に重要な役割を果たしており、イスラム哲学の最も重要な学派の1つである、照明哲学の創始者です。

前回お話したように、イランの偉大な哲学者ソフラヴァルディーは1150年から1155年ごろの間に、現在のイラン西部ザンジャーン州近郊のソフラヴァルドという村で、この世に生を受けました。彼は1191年ごろ、38歳でアイユーブ朝サラジンの命を受けたシリア北西部アレッポのイスラム法学者の陰謀により殺害されたと言われています。しかし、彼は短くも実り多いその生涯において、50に上る著作や論文を残しています。

ソフラヴァルディーの作品は、学識の高さや熟練度の点で驚異的なものとして賞賛されており、力強く成熟した散文形式となっています。また、彼の作品はイランの文学史を通して、最も優れた哲学分野の散文作品の例とされています。アメリカのジョージ・ワシントン大学でイスラム学の教鞭を執るイラン人教授、セイエド・ホセイン・ナスル博士は、次のように述べています。

「おそらく、1000年にわたるペルシャ語の散文の歴史において、ソフラヴァルディーほど流麗で滑らかな文体で哲学を語った人物はいないだろう」 

ソフラヴァルディーの作品の一部は、ペルシャ語により、また他の一部の作品はアラビア語で執筆されています。

 

ソフラヴァルディーは、照明哲学の長と呼ばれていますが、それは彼が生み出した哲学の学派が照明哲学として知られていることによります。照明哲学とは、単に知性や論所のみをより所とせずに、論証を心や精神のあり方を伴ったものにするというやり方です。また、その言葉の特別な意味が示すように、ソフラヴァルディーが中世イランの偉大な哲学者ブー・アリー・スィーナーのアリストテレス学派やイスラム神秘主義、古代イランやギリシャの哲学的な思想に基づいて生み出した哲学とされています。

照明哲学とは即ち、論証を基本や必須事項とみなし、この哲学では英知を求める人々にとって、完成度を高める最初の段階が知性と論証の力の秩序にあると考えられています。実際に、照明哲学は哲学と修辞学の境界線上にあり、庵での修行による純粋なイスラム神秘主義ということになります。ソフラヴァルディーは、照明哲学が理知的な論証にそって見出した全ての事柄を、内向的な経験によっても見出そうと努力していると考えています。彼はまた、純粋な論証により哲学を研究しても結論は得られず、また一方で理知や論証の教育を伴わない精神的な修行は迷いの元になると見なしています。

 

ソフラヴァルディーの見解では、哲学はギリシャ神話に登場するヘルメスにより打ち立てられたとされています。ソフラヴァルディーの思想の源は多岐に渡っており、例えばイスラム以前のイランの哲学的、宗教的な思想はこうした源流の1つです。彼は、イランの哲学者の持論の基本は、光と闇の法則に沿った世界観と、自己の内面の浄化にあると考えています。プラトンやアリストテレスといった古代ギリシャの哲学者と、ソフラヴァルディーの違いはまさにこの点にあり、それはまた宗教的、新プラトン主義的な思想と混合したイラン的、アジア的な配色を帯びています。ソフラヴァルディーは、自らの思想の世界においては自分がギリシア人に負うところが大きいと考えるよりも、イスラム以前の時代、あるいはイスラム以降のイランの神秘主義哲学者の方向に傾いています。

『照明哲学の泉』という著作を著したサマド・モヴァッヘドによれば、ソフラヴァルディーは次に上げる3つの方法によりイランの古代哲学を知ることになったとされています。その3つの方法とは、当時イラン全域に広まっていたゾロアスター教徒との交流と、彼らの口伝えでの教えの活用、当時までにパフラヴィー語からアラビア語やペルシャ語に翻訳されていた書物や論文の購読、そしてゾロアスター教の教えと非常に類似しており、共通点が多いとされる、イランの純粋な神秘主義の理解です。

しかし、ソフラヴァルディーはギリシャ哲学にも注目しており、特にプラトン主義や新プラトン主義の影響を受けました。また、伝えられるところではアリストテレスの自然哲学や論理を活用し、それらを新プラトン主義の方式によっても扱っています。

セイエド・ホセイン・ナスル博士は、ソフラヴァルディーによるペルシャ語の作品について執筆した著作の序文において、次のように述べています。

「ソフラヴァルディーは、自らをギリシャとイランという2つの古い伝統の継承者とみなしており、彼の見解では、プラトンとゾロアスター教、古代イランの見識ある歴代の王、そしてソクラテス以前のギリシャの哲学者は、真理を注釈し、また精神的なメッセージを分析しているとされている。ソフラヴァルディーは、自らそれを復活させたと考えていた」 

セイエド・ホセイン・ナスル博士はまた、照明哲学の重要な特徴の1つとして、古代イランの哲学とイスラム哲学、神秘主義哲学の融合を挙げており、次のように述べています。

「ソフラヴァルディーの論文の中でも、最も特徴的な部分は、照明哲学による特殊な見解から見て、自己の内面に関する部分である」 

ソフラヴァルディーはまた、自らの著作における自然や元素に関する部分においては、アリストテレス学派の学者のように語っていますが、自己の内面に関する話題になると、アリストテレス学派とは異なる見解を示しています。

 

自己の内面について、ソフラヴァルディーとアリストテレス学派の間には相違点があります。イスラム教徒であれギリシャ人であれ、アリストテレス学派の哲学者は心理学を自然科学の1つとみなしています。しかし、ソフラヴァルディーは心理学を神学的な議論に近づけており、人間が物質的な世界から救われる方法について論じています。照明哲学的な心理学は常に、ソフラヴァルディーの哲学の原則の1つと抱き合わせになっており、それはまさに万物の主の信仰であり、アリストテレス学派にそったものです。ソフラヴァルディーは、プラトンを照明哲学の先駆者とみなしており、プラトンが議論や論証を神秘主義哲学の趣向をもって集大成したと考えています。ソフラヴァルディーの哲学は、光と闇の真理をベースとしており、まさにこの理由で彼の起こした哲学の学派は光り輝かせることを意味する、照明哲学と命名されたのです。

照明という言葉は、光や明るいことを意味する一方で、東という地理的な方向をも示しています。それは、照明哲学がそもそも神秘主義的な空間に基づいており、それによれば東は純粋な光の世界であり、かつ神に頭を垂れる天使の世界であるとされていることによります。その世界は、物質的ではないため、地上の存在物はこれを見ることができないのです。ソフラヴァルディーの哲学において、西という方角は暗黒の世界、あるいは物質的な世界とされています。

ソフラヴァルディーは、事物の現実を光により解釈しており、それぞれの存在物の間の違いは、光の度合いの強弱によるとみています。真理の光は本質的に明るく、万物の輝きはこれに依存しています。このため、万物は光の明るさの度合いにより定義されます。絶対的な創造世界(の主)である崇高なる神は、すべての真光の源です。ソフラヴァルディーは、コーランからインスピレーションを得て、これを光の中の光と呼んでおり、救われることとは、礼拝などによってこの真光である神に到達することだとしています。

アリストテレス学派の哲学において、存在物の間の因果関係と呼ばれるものは、照明哲学では超自然的な愛と解釈されます。すなわち、完全な光という自らの霊魂に対する愛が、存在物に芽生え、神の慈悲と美徳という光のもとで、存在物の出現のすべてのプロセスが生み出されるからです。

 

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