ペルシャ語ことわざ散歩(65)「髭とはさみを誰かの手に渡す」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「髭とはさみを誰かの手に渡す」です。
ペルシャ語での読み方はRiish o qeichii ra dast-e kasii daadanとなります。
この表現は、誰かを完全に信用して何かの権限をゆだねる、あるいは自分が非常に大切にしているものを誰かに預ける、といった意味を表します。
この表現の由来は、昔は男性の間で特に髭が大切にされ、ある事で誰かの保証人になったりするような場合に、自分の髭を担保にしていたことにあります。つまり、当時は髭を担保にすることは、男の約束の証、絶対の約束を表し、約束した相手側に確信を持たせることを意味していたということです。特に髭は男性であることのシンボルとされることから、男性が髭を生やすことは非常に重要視され、本人の承諾なしに他人が勝手にその人の髭を剃ったり短くしたりすることは決して許されていませんでした。このことから、髭とはさみを理容師の手にゆだねることは事実上、理容師を信用して自分の威信の象徴である髭を預けることを意味し、それが転じて、誰かを完全に信用して何か重要な物事をその人にゆだねることを意味するようになりました。
イスラム圏では、髭は男性らしさの象徴とみなす傾向があるようですが、イランでもそのせいでしょうか、髭にまつわることわざや慣用句が数多く見られます。そのため、ペルシャ語には日本語的な発想とは大きく異なる表現も決して少なくありません。今後も、ことわざや慣用句を通して、そうしたペルシャ語の面白さを皆様に味わっていただければと思います。それではまた。
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