6月 09, 2022 02:25 Asia/Tokyo

イランは、神の恩恵に満ちた地です。この広大な大地の至るところには、手つかずのままの自然が溢れ、他では見られない光景が広がっています。今回は、イラン南部にある、ハラーという名の森林をご紹介致しましょう。

私たちは通常、森林と聞くと、木々の生い茂った場所を想像します。木々が地面に根を下ろし、鳥のさえずりが聞え、様々な生物が生息している場所です。しかし、今夜ご紹介する森林は、通常の森林とは少し異なっています。この森林の木々は、淡水ではなく、海水に根元が浸っており、時には水中に隠れたり、また水中から姿を現したりし、波の動きと共に上下に揺られます。このような森林は、西アジアでも、エジプト、サウジアラビア、イラン南部の海岸に見られます。

ハラーは、くまつづら科に属する植物で、イランの偉大な学者、イブン・スィーナーが、この植物に関する多くの研究を行ったことから、この植物の学術名は、彼の名から、「アヴィセンナ・オフィシナリス」と呼ばれています。ハラーの木は、互いに枝が絡み合うようになっており、イランにある8つの自然保護区に生えていますが、中でも、ゲシュム島の北西にあるハラーの森は、ペルシャ湾の美しい観光地のひとつです。ハラーの森林は、海水の中にあることから、他では見られない植物が生まれています。

ハラーの森林は、海の森林・マングローブと呼ばれ、イラン南部にある海岸地帯の、エコツーリズムの特徴のひとつです。この種の森林は、バンダルアッバースの西140キロのゲシュム島の北にあるラーフト港の周辺、ハミール港など、植物が密生している地域でも見ることができ、ホルモズ海峡から東に、インド洋やオマーン海まで広がっています。また、ゲシュム島の周囲の、幅50から100メートル、長さ150キロメートルの範囲に広がっており、その面積は、7200ヘクタールを超え、荒廃地や沼地を除く、純粋な森林の面積だけでも、およそ6000ヘクタールとなっています。ハラーの森林の中でも、最も広いのは、ラーフト港と、ゲシュム島の北西にあるポル港です。このマングローブは、海岸の浸食の結果、できあがった泥の上で成長し、常に潮の満ち干きにさらされています。干潮の際、森林は水の中から姿を現し、散在する島のような形になりますが、満潮の際には、ハラーの森林全体が、水中に姿を消してしまいます。

ハラーの森林は、海水から自然に塩分を取り除き、そこから養分を得ています。ここにある木は、通常、7月から8月にかけて、花が咲き、実を結びます。花は鮮やかな黄色で、4枚のがくがあり、そのさわやかな甘い香りは、数メートル離れた所でも感じられます。ハラーの木々の実は、甘くて美味しく、アーモンドの形をしています。しばらくすると、母樹に果実がなり、そこから種ができ、やがて水中に落ちます。こうして水中に落ちた種は、荒波に揺られ、波の静かな場所まで運ばれていきます。ハラーの種は、海の底のやわらかな場所に留まり、成長します。

ゲシュム島とハミール港の間の一帯は、波が穏やかであることから、多くの種は、この地域で生育します。4メートルの高さにもなるハラーの木は、細長い楕円形をしており、特に茎につながる部分は、非常に細くなっています。葉の裏は白か灰色で、葉の長さは、およそ5センチから7.5センチほどです。また、ハラーの葉は、非常に栄養価が高いことから、家畜の餌として利用されています。地元の人々は、その昔、ハラーの枝を薪に使っていました。ハラーは、雑草や害虫に強く、その樹皮は、ハンセン病の治療に効果があるとされています。また、維管束に含まれる液体には、ホルモズガーン地域特有の肌の乾燥を防ぐのに効果的です。ハラーは、木材の接着や、インクのもとになる、タンニンの生産など、産業の分野でも利用されています。

 

●ハラーの木の特徴

 

ハラーの木の特徴のひとつは、その根にあります。ハラーの根は浅くて短く、そこから短い海綿状の根が、垂直に上に向かって延び、その長さは平均して、地上から30センチにもなります。この空中に延びる根は、次第に木の幹の周りにはりつき、こうして、水棲動物の生息に適した環境が整えられます。この根は、周囲の土の中の塩分濃度を減少させる働きを持ち、植物が海水から栄養分を取り入れることができるようにしています。ハラーの海の森林は、24時間に2度、海水に浸ります。というのも、海水が24時間に二度、干潮と満潮を繰り返すからです。このことにより、ハラーの森林には、生物が生息するのに適した環境が生まれています。満潮の際には、多くの魚がハラーの森に向かって集まります。このことは、地元の猟師たちにも、よく知られるところです。

ハラーの美しく唯一無二の森林は、環境の条件が整っていることから、秋と冬の寒い季節、渡り鳥にとって、格好の生息地となります。また、それ以外の季節にも、適した場所を見つけられない土着の鳥たちが、この森林にやってきます。この森林には、フラミンゴやペリカンなどの水鳥や渡り鳥の他、各種の魚、両生類、節足動物なども見られます。さらに、ミドリガメ、鷲、毒蛇なども生息しています。現在、ハラーの森林は、水路が整えられ、美しい水鳥や、手つかずの自然などが見学でき、イランの自然を愛する観光客にとって、非常に美しい景観を楽しめる場所となっています。

 

 


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