同胞の死に沈黙しイスラエルを支持するクリスチャン・シオニスト
ガザはシオニスト政権イスラエルによる虐殺が続く中でのクリスマスを終えました。イスラエル軍による攻撃では、ガザに住むキリスト教徒も多数が犠牲になっています。しかし、その現状を無視し、なおもイスラエルを支持し続ける勢力がいます。それが彼らと同じキリスト教徒を名乗る「クリスチャン・シオニスト」という存在です。
キリスト教関連のニュースを扱う「クリスチャン・トゥデイ」によると、今月16日、ガザ地区唯一のカトリック教会である「聖家族教会」の敷地内で、キリスト教徒の女性2人がイスラエル兵による狙撃を受け死亡、ほか7人が負傷しました。
また、教会敷地内にある修道院もイスラエル軍によるロケット弾攻撃を受け、修道院唯一の電力源である発電機と燃料タンクが破壊されたということです。この修道院には障害者54人が居住していましたが、この攻撃により住む場所を失いました。
同教会を管轄するラテン典礼エルサレム総大司教庁は声明を発表し、「2人は交戦者のいない小教区の敷地内で冷酷に撃たれた。教会全体がクリスマスを控える中、なぜこのような攻撃が行われたのか、理解に苦しむ」とイスラエル軍の行動を批判しました。これに対し、イスラエル軍は「教会敷地内にロケット弾発射機が存在する」などと主張しています。
この日は、ガザ地区YMCAの建物もイスラエル軍による攻撃を受け、6人が死亡しました。世界YMCA同盟は事件をうけ、「一般市民に対するこの恐ろしい攻撃を強く非難し、イスラエル政府に対して無差別暴力行為をやめるよう求める」とする抗議声明を出しました。
聖家族教会とガザYMCAはいずれも大勢の一般市民の避難場所となっていました。「ハマスだけを攻撃対象としている」とするイスラエルの嘘がまたしても証明されたことになります。
カトリックの慈善団体「エイド・トゥ・ザ・チャーチ・イン・ニード」(ACN)によると、イスラエル軍によるガザ地区のキリスト教徒の殺害はこの2件が初めてではなく、今月12日の時点ですでに22人のキリスト教徒が死亡していました。このうち17人は10月19日に聖ポルフィリウス教会に避難していたところ、イスラエル軍による空爆で死亡しました。ほか5人は医療機関のまひで治療が受けられなかったことで死亡したということです。
10月7日にガザ戦争が始まって以降、日本国内外の様々なキリスト教団体が停戦を求める声明を出してきました。そのほとんどが、ハマス・イスラエル双方を批判し、停戦を求めるという内容です。しかし、そうした双方に自制を求めることすらせず、むしろイスラエルによる攻撃継続を強く支持し続ける「キリスト教徒」がいます。それがクリスチャン・シオニストです。
都内にある教会「カルバリーチャペル・ロゴス東京」の牧師を務める明石清正氏(@AkashiKiyomasa)は、SNS上での活動が活発な日本人クリスチャン・シオニストのひとりです。最近は、駐日イスラエル大使のコーヘン氏とも個人的に面会し、シオニスト政権への支持を伝えています。
明石氏のイスラエル擁護のデマは枚挙に暇がありませんが、一例として今月5日のXへの投稿では、イスラエル軍による発表を無批判に引用し、「イスラエル軍の難易度の高い戦いを、高い倫理性をもって戦っている証左」として、イスラエル軍が民間人の犠牲を最小限に抑えているとして称賛しました。
明石氏の言い分は、ハマスが民間人を人間の盾として利用しているため、どうしても民間人の犠牲は出てくるが、それでもイスラエル軍はそれを最小限に抑えているというものです。
この種のデマは10月7日にイスラエルによるガザ攻撃が始まった当初から繰り返し出されているものです。仮にハマスがガザの民間人を人間の盾にしているとして、では、なぜ人間の盾になり得ないジャーナリストや国連職員、国境なき医師団のスタッフまでもが多数犠牲になっているのか。それを考えるだけでも、イスラエル擁護勢力の嘘は一目瞭然です。
明石氏は、先に挙げた聖ポルフィリウス教会への攻撃について、この「人間の盾」論法を用い、10月21日のXへの投稿で、「イスラエル軍は、釈明を公にすべきです。ハマスが人間の盾に使っていることをしっかり釈明してから、わずかに外れたのですから、犠牲者を悼む言葉を一言でもいいからかけるべきです」と投稿しました。
そして釈明が出ると「ついにイスラエル軍の報道官が釈名をしてくれた。ハマス要員が教会の隣にある建物に隠れていたとのこと。トーンが弱いが教会の人たちが死んでしまったことを遺憾に思うことを言い表している」と同24日に投稿しています。
また、11月1日の投稿では、他のユーザーからの問いかけに答えて「ガザの教会の破壊については、何度かポストしました。とてもつらいです。知人のガザ出身のパレスチナ人クリスチャンが泣いているのを知りました」とだけ記しています。
最初に報じたとおり、イスラエル軍によるクリスチャン殺害はその後も続きますが、明石氏がそれに触れたのは、後にも先にもこれらの投稿が最後です。信仰を共にする人間が殺されたことに対する最大限の反応が「釈明の要求」と「つらい」の心情表明で、抗議するそぶりすら見せようとしません。
明石氏の本音が垣間見える動画があります。札幌の教会で牧師を務める飯田結樹氏との対談動画(https://youtu.be/BdVMjnXu7DU?si=Ue7uhyCxi1bIaDK3)で、明石氏は民間人の犠牲について「悲しいけど荒療治」と述べ、民間人が犠牲になっても作戦を進めることが「将来ガザの人たちにとっても利益になる」と主張しています。
明石氏の論法で特徴的なのは、自分がイスラエル絶対支持者ではないと強調しつつ、結局は現在イスラエルが行っていることをすべて擁護している点です。この動画の随所でも「イスラエルのすべてが正しいとは思っていない」「イスラエル内でも様々な意見がある」「細部での批判はあってもいい」などと述べつつ、最後には「批判しすぎるとハマス擁護になる」とまとめるのです。明石氏にとってクリスチャンの死は、このような「総論イスラエル支持」を補完する申し訳程度の遺憾表明のツールでしかないのです。
クリスチャン・シオニズムは、聖書にあるとされる「イスラエルの回復」をイエス・キリスト再臨および千年王国の誕生の条件とする思想で、そのために現在のシオニスト政権イスラエルを聖書の中の「イスラエル」と同一視し、支持しています。千年王国見たさにシオニスト政権に入れ込み、大使との会談に現を抜かす。その傍らで死にゆく同胞に向けて自らの信仰を証明できる言葉を持ち合わせているのでしょうか?
善人は隣人のために保証人となり 恥知らずな者は彼を見捨てる。(シラ書29章14節)
川端寛海氏は、プロテスタント牧師の松本章宏氏のYouTubeチャンネルに度々登場し、解説を装ってデマを拡散するクリスチャン・シオニストです。
川端氏は今月8日に公開された動画(https://youtu.be/QXBWaXou-YY?si=J4tnUCW-TDRvdNa-)で、聖書のエピソードから「偽善」について語り、「自分の道徳基準のために他人に負担を強いるのが偽善者」と述べています。そして、その理屈を敷衍して「戦争に反対する人がいるが、国を守るコストを支払っているのはイスラエル人」という主張を展開します。
しかし、イスラエル外からこの戦争を批判する人は、イスラエルに守ってもらっているわけでもなく、何ら負うところはありません。それを強引に結び付けて「イスラエルに負担をかけている」とする荒唐無稽な議論です。
川端氏はさらに、「虐げる側が悪で、虐げられる側が善であるとする正義観がはびこっている」とし、「イスラエル/パレスチナ」「男性/女性」「白人/黒人」といった例をあげ、こうした構図を「マルクス主義にもとづく危険な思想」と主張します。
そして、こうした正義観が存在する理由として「ねたみ」をあげています。つまり、強者に対するねたみから彼らが虐げる側にされるという理屈です。そして、「白人や男性といった生まれつきの特性を批判することは危険」と飛躍し、それを「虐げられる側によるアピール」「弱者だからといって正しいわけではない」とまで言い張ります。
言うまでもなく、白人や男性が虐げる側として批判されてきたのは、その属性自体ではなく、歴史上その立場を利用してもう一方を搾取してきた事実に対してです。
川端氏の論理展開は、もはや聖書とは何の関連もなく、近年のネット上で流行っている、既存の倫理・価値観に異を唱えて見せることを斬新でスマートだと持てはやす冷笑・逆張りの思考でしかありません。
動画では川端氏は「先生」と呼ばれていますが、その実は、専門家を装って学問上も信仰上も根拠のないただの流行りの詭弁を弄しているだけです。
明石氏と川端氏の2名を見るだけでも、クリスチャン・シオニストらの主張がいかに荒唐無稽で不誠実な言論であるかがわかります。内心で思う分にはそれを阻むものはありませんが、SNS上でそうしたデマと突飛な議論を拡散するのは社会的害悪でしかありません。
ヨブ記第20章には、神に逆らう者を指して次のような記述があります。
彼は流れを見ることがない 蜜と凝乳の川を
彼は労苦して得たものを取り戻しても吞み込めず 商いで得た富を喜ぶことができない。
彼は弱い人々を虐げて見捨て 家を奪い取っても、建てることはしなかったからだ。 (ヨブ記20章17-19節)