外国人差別思想を内包するイスラエル支持者
ネット上でイスラエル擁護の主張を展開しているアカウントは、概して保守・右派思想と親和性が高い傾向があります。中には外国人差別の思想を隠そうとしないアカウントも存在します。
岩本龍弘氏(@tatsuhiro_iwamo)はX上でイスラエル擁護を展開するアカウントのひとりです。クリスチャンを名乗り、その投稿内容は他のイスラエル擁護勢と同じくデマで占められ、目ぼしい特徴もありませんが、その発言を看過できないものにしているのは、彼が「行政協力員」という公共性の高い職に就いていることです。
自身でプロフィール欄に記載しているとおり、岩本氏は愛知県半田市の行政協力員を務めています。半田市のサイトによると、行政協力員とは、市行政と市内各区を結ぶパイプ役であるとされ、現時点で市内42区に行政協力員が区長として配属されています。
区長は各区から推薦を受けた人物を市長が委嘱する形で任命しています。報酬もあり、担当区の世帯数によって異なりますが、年額30万円前後が支給されます(https://www1.g-reiki.net/handa-fd/reiki_honbun/i507RG00000457.html)。もちろん原資は税金です。
岩本氏は半田県住区の区長を担当しています。県住とは県営住宅の略で、市内にある県営半田住宅の敷地が岩本氏の担当区です。
しかし、岩本氏は県営住宅住民の福祉向上に努める立場にありながら、外国人住民の排斥を訴えています。2021年9月6日の投稿では、自治会の負担が増しているとして、これ以上外国人を県営住宅に入居させないよう愛知県住宅供給公社に送付した要望書の画像を投稿しています。
外国人の公営住宅入居を禁止・制限できる法的根拠は一切存在しません。旧建設省が外国人についての記載がない公営住宅法を補完するものとして、1992年に各自治体に通達を出し、在留資格を持つ外国人に対しても入居申込資格を認めるとしています。
岩本氏はこの投稿のおよそ2カ月前にも、外国人に県営住宅への入居を認めている「法的根拠」を県に問い合わせ、「できないという根拠がない」という当たり前の回答を受け取っています。
仮に外国人入居者の増加により問題が生じているのなら、その調停・解決に努めるのが本来の行政協力員の職務であるはずです。しかし、岩本氏はそうした努力を一切見せず、単に外国人の入居の禁止・制限を県に求め、それを誇らしげにSNS上でアピールしています。
日頃からイスラエルのデマ情報を拡散し、地元では外国人排斥を唱えるような人物が、税金で報酬を貰いながら県営住宅エリアの区長を任されている。そのことと外国人入居者の増加のどちらが地域にとっての脅威なのか。答えは明確です。
「イスラエルに咲く桜」(@israelsakura)はイスラエル人の夫を持つ現地在住邦人です。彼女は今月6日のXへの投稿で、「移民をガンガン入れたいならね、日本人はみんな武道の達人になった方がいいと思いますよ。結局それが制止になるので」と記しています。
典型的な移民排斥思想ですが、特徴的なのは彼女自身が移民であることです。かつてはフランス、現在はイスラエルに在住する経験を持ちながら、自分は移民を「選別」できる立場にいると思い込んでいる。これは、かつてアパルトヘイト体制下の南アフリカに駐在していた日本人が「名誉白人」として扱われていた事実を想起させます。
当時の南アフリカは、白人以外の有色人種を総じて差別の対象としてきましたが、日本人などの一部の非白人人種は、その国との経済関係の重視などの理由から、「名誉白人」として扱われ、(制度上は)差別の対象外とされていました。
実際、多くの駐在日本人がこの「名誉白人」という地位に嬉々としていたといいます。そのことは、当時の三井物産の社内報に「名誉白人は実質的白人になりつつある。最近は、多くの日本人が緑の芝生のある広々とした郊外の家に白人と親しみながら、そして日本人の地位が南ア白人一般の中において急速に向上していることはまことに喜ばしい」などと記されていることからもうかがえます。
「イスラエルに咲く桜」の投稿は、自分は在住先に認められていると思いながら、特定の国・人種からの移民に対しては差別感情をあらわにする「名誉白人」しぐさそのものです。
彼女に限らず、イスラエル擁護アカウントはその多くが保守・右派思想と親和性がある投稿を見せています。彼らはパレスチナやハマスを批判する際、「パレスチナのことを本当に考えているのはイスラエル」などと嘯きますが、差別思想を内に抱えるこのような人物の本音がどこにあるかは明白です。
アパルトヘイト体制のイスラエルを支持する人間が、自らもアパルトヘイト思想を内面化していくのは当然の帰結なのです。