今日の話題:預言者ムハンマドの芸術的表現
預言者ムハンマドの天界飛行は、多くのイスラムの絵師によって描かれてきたテーマのひとつです。
芸術史におけるどの時代においても、絵師は預言者ムハンマドの天界飛行を描く中で、多大な努力を行ってきました。こういった作品の全てにおいては、天界飛行の解釈により、そして、その歴史的、思想的ななイメージから、預言者ムハンマドの天界飛行をテーマにしてきました。
イランで天界飛行に関して描かれた最も重要な例は、ティムール朝時代のヘラート派によるもので、そのうち最高傑作とされる作品は、ティームール朝の王・シャールフの天界飛行の書であるといえます。ティムール朝期において、天界飛行の絵は、様々な内容を含む手稿に必要なものとなり、または、独立して、天界飛行の書という形で描かれました。
この絵の中で、その聖性を表現していた預言者の光背は、長いあごひげとともに装飾的で描かれ、イランの伝統的な描かれ方で示されています。確かに、インドやエジプト、イラクなどほかのイスラム諸国でも、天界飛行の描かれ方の例が存在します。
たいてい、この種の絵画では、瑠璃色や金色は天界の象徴として、緑は預言者ムハンマドの服の象徴として重要視されています。この天界飛行の絵は、サファヴィー朝の時代、預言者ムハンマドの顔は覆い隠されています。複雑に絡まった雲は、宇宙空間を想起させ、また天使たちが見ているのは預言者ムハンマドで、そのいずれも、敬意を表すために、贈り物を手にしています。この絵では、預言者ムハンマドの頭の周りは暖かい金色の光が放射しているように描かれています。光り輝く場所を頭部に選んだのは、頭が人間の本質を構成する場所だからであり、確かに一部の絵画では、光は預言者の全身を包んでいますが、絵師はこれにより、預言者ムハンマドの全存在を神の光の顕現であると表現しようとしているのです。
いずれにせよ、預言者ムハンマドの天界飛行を描くことにより、1400年にわたって驚くべき作品が作り出されてきました。これらの芸術作品からは、はっきりと、預言者ムハンマドが、イスラム教徒の芸術家にとって、あらゆる善と清らかさの模範であったということが理解できるのです。