一日一冊、本の紹介(13)
ウォールアートとは、壁や公共の場所にさまざまな絵や形、言葉やシンボルを描くことです。
また、簡単な言葉や絵を象徴的に壁に描くことも、ウォールアートと呼ばれます。ウォールアートは、はるか昔から、古代ギリシャ、ローマ帝国、中国、イランで見られました。「イランにおけるウォールアートの変遷」という本は、イランにおけるウォールアートの歴史を知るためのアリーレザー・キャマーリーによる研究結果であり、さまざまな時代の特徴的な作品や文化的な流れを紹介しています。これまで、あまり知られてこなかったイランの絵画の重要な部分が、この本では研究対象とされています。
作者は歴史的な内容を研究する中で、ウォールアートの作品をイランの文化のビジュアル的な資料として紹介するとともに、イランの絵画の系統だった構造を、長い歴史における様式の点から強調しています。
作者はこの本を、イスラム以前とそれ以降の作品の2つの部分に分け、その上で、あらゆる時代の歴史的な作品を、細かい特徴とともに説明しています。この本には、古代文明に関するウォールアート、イスラム期のウォールアート、公共の場所における宗教的な内容のウォールアートといった章があります。
この本の一部には次のようにあります。「ウォールアートはイランの絵画芸術の一部であり、それが存在していたしるしは、イランの南部や東部のサーサーン朝やパルティア帝国時代から残る壁画である。また、イラン西部ロレスターンの洞窟の壁に残されたデザインや壁画は、この芸術がイスラム以前にも広まっていたことを示している。これらの絵画に使われた主なデザインは動物で、優しいタッチで描かれ、狩猟や戦の場面を示している。またつかわれている色は、赤や黒などの植物や鉱物の色である」
この本の最終章で、作者は、現在も都市空間の壁は、人々と関係を築き、相互に影響を及ぼしあうための大きな機会だとしています。その空間は、美しさを必要とするだけでなく、都市の壁には、人々の文化、見識、趣向のレベルを向上させるためにさまざまな方法が用いられる必要があります。
「イランのウォールアートの変遷」という本は全部で292ページあり、美しい写真も掲載されています。