1日1冊、本の紹介(17)
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イラン文化圏がその発展に大きく寄与した学問のひとつが、医学です。
(last modified 2025-08-16T09:55:59+00:00 )
12月 14, 2016 16:17 Asia/Tokyo
  • 1日1冊、本の紹介(17)

イラン文化圏がその発展に大きく寄与した学問のひとつが、医学です。

この分野に関する書籍に、『イランにおける医学の変遷』があります。この書籍は、かなり前から出版され、医学の視点からイランの文明と歴史をざっと振り返っています。

12章から成るこの書籍は、レザーイー氏とマーリー氏が共同で編纂し、伝説上の医学者たちの生涯から現代の医学に至るまでの事柄が述べられています。また、それぞれの章において1つの歴史的な時代にスポットを当て、その時代の政治的な特徴に注目した上での学術的な変遷について述べられています。さらに、それぞれの時代の最も重要な医学者が紹介され、医学や病気の治療における彼らの発見などについて言及されています。

本書にはさらに、様々な情報が満載されています。例えば、水を沸騰させることにより、その衛生を保つことができる、とする最初の報告はアケメネス朝時代のものであること、初めての専門的な医学教育が、サーサーン朝時代にジョンディシャープール大学で始まったこと、手首の複雑骨折に関するはじめての説明が、イランの偉大な医学者イブン・スィーナーによって行われたこと、そして、イブン・ナフィースというイランの医学者により、現在知られる血液の循環が発見されたことなどです。

本書は、医学の専門知識が全くない一般の読者にも読みやすいように記されています。さらに、本書では風刺的な要素も見られます。本書の一部には次のように述べられています。「イスラム以前のイランでは、医師の給料はその技術ではなく、患者の収入や地位によって決められていた。例えば、ある地方の支配者は治療の代金として、オスの牛4頭を、またある町の支配者は良質のオスのラクダ1頭を、さらにある大地主はロバ1頭を差し出した。患者が子どもだった場合には、これらの家畜の子ども1頭が医者に渡されていた」

時には病気が治った場合にのみ、治療費が支払われていたこともありました。また、高い治療費を取ることは犯罪とされ、薬も生活必需品として国に管理され、その値段を吊り上げる権利は誰にもなかったということです。

『イランにおける医学の変遷』は、全部で220ページです。