敵基地攻撃能力が閣議決定 戦後日本の転換点
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岸田首相
政府は16日、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有などを明記した安保関連3文書を閣議決定しました。

カタール衛星通信アルジャジーラの東京支局は、今回の閣議決定を戦後日本の安保政策の転換点と報じています。
これまでの日本国憲法の解釈では、自衛隊の海外での武力行使は禁じられてきましたが、2015年の安倍政権下で成立した安保法制により集団的自衛権が容認され、自衛隊と米軍の共同任務の範囲が広がりました。
これに加えて今回の敵基地攻撃能力の閣議決定により、日本が相手領土の軍事拠点を直接攻撃することが可能になります。

アルジャジーラは、「日本政府は、国民が敏感な先制攻撃という言葉の代わりに、反撃能力という用語を使用している」と指摘し、今回の閣議決定は日本の安保政策を180度転換するものだとしています。
朝日新聞によりますと、今回閣議決定された文書では、「我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境のただ中にある」と強調され、中国の海洋進出や日本領海への船舶侵入などを念頭に「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と記しています。
政府はこれに先立ち、今後5年間の防衛費を総額43兆円とする方針を固め、今回の閣議決定にも盛り込んでいます。
与党もこの方針を追認していますが、一部議員や閣僚からは財源確保のための増税に反対する意見も出ています。

増税は国民世論を気にする政府にとって常に頭の痛い問題ですが、今回はウクライナ戦争や北朝鮮のミサイル問題、中国・台湾関係の緊張など、日本や世界をとりまく安全保障環境が激変していることを理由に、政府が押し切った形です。
現在、日本の防衛費は世界第9位ですが、今回の閣議決定どおり防衛費が増加すれば、2027年度には世界第3位の規模にまでなります。
増税による防衛費確保には閣僚からも異論が出ています。

高市経済安保担当相は10日、ツイッターに、「再来年以降の防衛費財源なら、景況を見ながらじっくり考える時間はあります。賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解出来ません」と投稿し、首相の増税検討指示を批判しました。

さらに、その経緯をめぐって「普段は出席の声がかかる8日の政府与党政策懇談会には、私も西村康稔経済産業大臣も呼ばれませんでした。国家安全保障戦略には経済安全保障や宇宙など私の担務分野も入るのに。その席で、首相から突然の増税発言。反論の場も無いのかと、驚きました」と記しています。
その西村経産相も9日の会見で、「今後5年間は日本経済再生のラストチャンスという思いで取り組まなければいけない。大胆な投資のスイッチを押そうとしている時に水を差すべきでない。増税については慎重にあるべき」と述べ、今は増税論議のタイミングではないとの見方を明確にしました。