イスラム教徒となった日本人女性が、その思いを語る
新たにイスラム教徒となった日本人女性が、日本でイスラム教徒であることは簡単なことではなく、国内ではイスラム教徒について多くの誤解があると語りました。
朝日新聞によりますと、高校教員の高雄咲さんは昨年11月25日の26歳の誕生日、大きな決意とともにイスラム教徒となりました。
高雄さんは、当日、自宅マンションの一室で家族や友人ら約15人に囲まれながら、「アッラーの他に神はなし、ムハンマドは神の使徒である」という意味の、新たにイスラム教徒となる人が唱えるアラビア語の文句「シャハーダ(信仰告白)」を読み上げました。
しかし、高校教師である高雄さんがこの決意をするのは、簡単なことではありませんでした。
日本で生まれ育った高雄さんは、大阪女学院大学の3年時、交換留学で半年間、台湾に留学しました。
現地では、留学生のパーティーで知り合ったトルクメニスタン出身の男性と友だちになり、英語でのコミュニケーションを重ねて2人で出かけるくらい仲良くなりました。
しかし、ある日みんなですき焼きを食べる計画が出た際に、彼が酒を使う割り下を「食べられない」と言ったことから、イスラム教徒であったことがわかりました。
高雄さんは、イスラムから過激派を連想して突然彼を「怖い人」と認識するようになり、それ以降は会うことも話をすることもせずに距離を置きました。
大学で国際関係や英語を学んでいた高雄さんは帰国後、イスラム教徒であるというだけの理由でこのような態度を取ったことに自責の念を抱き、2年後の2019年夏、トルコやインドネシアなどのイスラム教徒人口の多い国を巡る「イスラム教徒に会う一人旅」を行いました。
高雄さんはこの旅行中に多くの親切な人々に出会い、イスラム教徒とその信仰についてもっと知りたいと考えるようになりました。
大学卒業後、高雄さんは大阪の高校で英語教師として働き始めましたが、授業中にイスラム教について話した際、生徒たちがイスラムをテロリズムと結び付けて考える様子を目の当たりにしました。彼女はこの時、限られた人々の否定的なイメージが他のすべてを覆い隠していると感じ、自分の昔の姿を見たような思いになりました。
高雄さんはその後、イスラムについてもっと知ろうと近くのモスクを訪れるようになりました。そしてほぼ毎週通う中で、イスラムの戒律に従いアルコールや豚肉由来の食材を排除し調理された「ハラール料理」を食べたり、イスラム教が断食を行う「ラマダン月」にあわせて夜明けから日没までの断食を行うなど、イスラム教徒の生活も知っていき、徐々に改宗を考えるようになりました。
両親との話し合いや気持ちの整理などで、高雄さんの改宗はすぐには実現しませんでしたが、その後、現在の婚約者であるイスラム教徒のマレーシア人の男性と出会ったことで不安が払拭され、高雄さんは26歳の誕生日、晴れてイスラム教徒となりました。
高雄さんは、イスラム教徒として日本社会で生きることについて、「困難がないわけではない」としながらも、自分には2つの社会が開かれていると、明るい未来に目を向けています。
早稲田大学の店田廣文名誉教授らが行った調査によれば、日本のイスラム教徒人口は、2010年の11万人から2019年末までに23万人と、10年間で2倍以上に増加しています。このうち、日本国籍を持つ人や結婚などで永住資格を持つ人は、約4万7千人だということです。