米ロ首脳の西アジア訪問の間の相違点
(last modified Tue, 19 Jul 2022 06:03:38 GMT )
7月 19, 2022 15:03 Asia/Tokyo
  • バイデン米大統領とプーチン・ロシア大統領
    バイデン米大統領とプーチン・ロシア大統領

バイデン米大統領が、シオニスト政権イスラエルの占領地およびサウジアラビアを訪問した後、プーチン・ロシア大統領もイランを訪問しています。バイデン氏の地域訪問とプーチン氏のそれを比較すると、両者の間にはその目的や課題に明白な相違が存在します。

プーチン氏およびエルドアン・トルコ大統領のイラン訪問と、バイデン氏の地域訪問には、1つの大きな違いが存在します。バイデン氏は何よりも、対サウジ関係の修復および、同国を産油量増大に仕向けること、サウジ・イスラエル関係の深化、そして対イラン包囲網の結成を目的に、イスラエル占領地とサウジを訪問していました。一方のプーチン氏は、シリア問題に関するアスタナ(カザフスタン旧首都名、現ヌルスルタン)での協議プロセスの継続および、対イラン関係の強化目的に、イランを訪問しています。イランとロシアを相互関係の強化に駆り立てている共通の要因は、この両国に対する米をはじめとした西側諸国の各種制裁にほかなりません。

 

もう1つの訪問主題の相違は、バイデン氏のイスラエル占領地およびサウジへの訪問の目的の1つが、原油の値下がりを通じてロシアに更なる圧力をかけることだった点です。これに対し、プーチン氏のテヘラン訪問の主な目的は、自国がウクライナ戦争の圧力下にないこと、またプーチン氏の孤立化を狙うアメリカの政策が奏功しておらず、彼自身としてアメリカとの闘争を続ける意向である旨をアメリカ側に示すことことにあります。

ウクライナ戦争開戦以来、プーチン氏がロシア国外に出るのはこれが2回目となります。今回の1ヶ月弱前には、プーチン氏はカスピ海沿岸諸国会合に参加するため、トルクメニスタン首都アシカバードを訪問し、そこからさらにタジキスタンに向かいました、そして今回、彼はウクライナ戦争勃発以来2回目の外遊の目的地としてイランを選んでいます。これは、プーチン氏自身が決して孤立してしていないどころか、逆にアジア前線における自らの位置づけの強化により西アジアでの超大国間の新たな競争に遅れをとらないよう努力している、というシグナルを西側諸国に送ることを意味します。

 

実際に、バイデン氏は地域を訪問し、米として西アジアから撤退しないことを宣言し、地域におけるロシアと中国の勢力増大を許さないよう画策していたわけですが、その一方で、プーチン氏のテヘラン訪問および、そこで予想されるエルドアン・トルコ大統領との会談は、地域諸国との関係の増大を示すものです。おそらく、エルドアン氏はテヘラン訪問で、ウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦開始以来初めて、直接対面式によりロシア大統領と会談することになるだろうと見られます。そして、この会談はこの数ヶ月間に冷え込んだロシア・トルコ関係の改善につながる可能性があります。

 

もう1つの重要な相違点は、バイデン氏が今回の訪問において地域の変貌や二極化を狙っており、しかもそれが地域諸国からのマイナスの反応に遭遇していることです。言い換えれば、地域諸国の現実直視的なアプローチからは、「そもそも、アラブ版NATOという概念がどこから提示されたのか皆目分からない」というファイサル・サウジ外相の表明にも代表されるように、アメリカのイラン恐怖症プロジェクトという繰り返しの思惑が失敗したことが見て取れます。UAEアラブ首長国連邦、サウジ、エジプト、そしてイラクは、対イラン包囲網には一切加わらず、関係拡大を追求している旨を名言しています。

このため、アメリカ人アナリストの間でさえも、バイデン氏の地域訪問は大きな過ちであり失敗した、という見解がなされています。こうした中で、プーチン氏はテヘラン訪問において、ほかの地域諸国への思惑は持たず、また地域において特定の国に対する包囲網結成や地域の二極化を目論んでいないとともに、イランとの相互関係の強化を追求しているのです。

 


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