イスラエルが犯した6つの戦略的失敗
(last modified Sun, 20 Oct 2024 08:28:50 GMT )
10月 20, 2024 17:28 Asia/Tokyo
  • イスラエル議会でのネタニヤフ首相
    イスラエル議会でのネタニヤフ首相

イスラエルは開戦当初から、西側のメディア帝国主義の大々的な支持を受け、被害者を自称して自らの陰謀計画を推進し、戦闘での勝者・正当な権利者を自認しました。しかし、イスラエルを支持していたメディアも自身のメディアとしての信頼失墜への恐れから、その親イスラエル的なトーンを控えることになりました。

【ParsTodayイラン】昨年10月7日にハマスが対イスラエル作戦「アクサーの嵐」を実行してから1年以上が経過しました。一部では、戦争の勝者と敗者という区分でこの戦争の評価がなされています。表向きには、あらゆる場所の破壊、ポケベルの爆発、敵対勢力の指揮官や政治家の暗殺といった行為によって、イスラエルが目標を達成しつつあると多くの人々の間に思わせていることに成功しているように見えます。

イランの国際情勢アナリストであるアスガル・ゼバルジャディ氏は、イラン日刊紙「ジャーム・ジャム」のコラムでこうした見方を強く否定し、イスラエルの戦略的失敗について以下の6つを挙げました。

 

 戦略1:勝者の偽装

第1の戦略は、勝者を偽装することです。一部の思想家は、現代世界を「メディアによるナラティブ拡散の世界」だとしています。戦場での勝利は、ナラティブ拡散能力の高い国のものになります。 問題は正しいか誤りか、真偽の如何ではなく、世論における影響力なのです。シオニスト政権イスラエルは開戦当初こそ、西側のメディア帝国の広範な支援を受けて自らの陰謀計画を 推進し、被害者としてふるまい、戦場の勝者かつ正当者を自称しました。

しかし、犯罪と残虐行為が激化し続け、それが極限に達したことからイスラエルを支持する過激派メディアも、メディアとしての信頼失墜への恐れからこの政権への支持を控え、事実上のイスラエル批判をするという事態にまで至りました。そして今や、イスラエルは国際世論において最悪の状況に立たされています。

 

 戦略2:抵抗組織幹部の殺害

2番目の戦略は、抵抗組織のネットワークの指導者を抹殺することです。武装組織や抵抗勢力のネットワークに対峙する際、指導者の抹殺・排除という行為は、そうした勢力組織の弱 体化や破壊に繋がります。

しかしこうしたやり方は、抵抗運動への対処法としては非常に間違った選択であるといえます。抵抗勢力は高い精神性、価値観、国民および国際的な動機を持ち、しかも近年においては構造化、組織化されてきました。

その一例として、過去1年間においてイスラエルがハマスを完全には殲滅しきれず、同組織の様々な階級の司令官や指導者らの排除に失敗していることが挙げられます。そしてこの戦略の事実上の失敗により、新たな指導者が出現してくるという結果になりました。

 

戦略3:占領地周辺での緩衝地帯の設置

3番目の戦略は、イスラエル占領地周辺に緩衝地帯を設けることです。抵抗勢力との間に物理的・地理的な距離・間隔を設けることは、ある意味で抵抗勢力を誤って理解・認識していることになります。占領者の物でない土地に距離・間隔を設けるのは、抵抗勢力側の土地で遊ぶことに等しいのです。

 

戦略4:戦費共有を目的とした地域・世界への危機分散

4番目の戦略は、危機を世界や周辺地域に分散させ、戦争にかかる費用を他国と共有することです。こうした決定は、戦略的ではなく戦術的な性質を有しています。おそらく、この手法の最初の段階では各国も危機を阻止するため妥協するかもしれません。しかし、後になれば確実に相手方自身の問題・戦略と化し、彼らはその根本的な解決のために行動する必要に迫られます。

これまで、見せかけの和平は地域で受け入れられておらず、この戦略の成果は、将来的に地域諸国がシオニスト政権イスラエルという政体を解体するしかないということで一致することになると思われます。

 

戦略5:市民への抵抗組織への対抗の奨励、二重基準の形成

5番目の戦略は、一般市民を傭兵として抵抗組織に対抗させ、様々なダブルスタンダードを形成させるというものです。ネタニヤフ首相は、抵抗組織について「地域における平和・平穏の欠如の元凶である」と吹き込み、民間にルーツを持つ抵抗組織の様相を破壊しようとしています。

過去に対する人々の認識は大きく異なってきており、地域における危機の元凶がイスラエルという不吉ながん細胞であることを認識しているという現実に、ネタニヤフ氏は気づいていないのです。

このような戦略を選んだことで、地域や世界では反イスラエル世論が形成され、そしてこうした動きが非常に急速であることから、アラブ諸国の政権はパレスチナ不支持やその結果としての自らの地位の動揺を理由に、自分たちに対する本格的な市民からの抗議に直面することを危惧しているのです。

 

戦略6:戦争の継続・拡大

そして6番目の戦略は戦争を拡大することです。イスラエルは もはや、戦略的な深みが欠如していることは百も承知です。しかし、今や抵抗戦線は広範囲に及んでおり、イランからイエメンに至るまで幅広く深い戦略性を持っています。 

そのため、イスラエルは空軍を頼みにして、効果が限られた戦術的作戦に訴えています。彼らは、本腰を入れるべきは地上戦である事を熟知しています。今はまだ、地上戦にまでは至っていませんが、最も恐れているのはその地上戦なのです。 抵抗組織との様々な前線における戦闘により、イスラエルは情報・軍備・政治面で疲弊してきています。

 


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