イラク民兵組織ハシャド・アルシャビの謎と、米がその解体を追求する理由
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イラク民兵組織ハシャド・アルシャビの謎と、米がその解体を追求する理由
イラクのアル・スィヤーダ連合のメンバーであるアフマド・ダリミ氏は、同国の民兵組織ハシャド・アルシャビ解体が引き起こす結果について警告し、「アメリカはイラク民兵組織の排除により、一触即発の状態にある地域の一大勢力を脇に追いやろうとしている」と語りました。
【ParsToday西アジア】同氏はさらに、「軍事上の原則からして、ハシャド・アルシャビ解体の意味は、治安の崩壊およびテロ因子のイラク侵入を招く治安上の隙間を作り出すことである。アメリカはイラクにおける自らの陰謀実行のため、常にこの戦術を使って危機を作り出そうとしている」と述べました。
こうした中、イラクの政党「イラク・イスラム最高評議会」のフマム・ハモウディ代表は3日、同国で行われたイラン・イスラム革命防衛隊ゴッツ部隊のソレイマーニー元司令官とハシャド・アルシャビのアルムハンディス元副司令官の追悼記念式典で、「我々はイラクという国の安定、進歩、建設、安全保障の秘訣である。我々は安全保障から手を引き、自らの権力の一つを失うべきなのか?」と疑問を呈しました。
ハシュド・アルシャビの長を務めるアル・ファイヤズ氏もこの式典で「当組織は国民を団結させており、権威者の下にある」と述べ、「イラク民兵組織は国軍の最高司令官の命令の下にある1つの正式な機関であり、その活動範囲もイラク国境内となっている」と述べました。
ところで、イラクのこの民兵組織ハシャド・アルシャビとはどのような組織なのでしょうか?
イラクのシーア派権威スィースターニー師の「聖なる戦い」の教令
2014年6月13日、つまりテロ組織ISISの脅迫および、民兵動員組織結成に関する閣僚の声明が出された3日後、イラクの聖地ナジャフ在住のシーア派権威当局者の一人であるセイエド・アリー・スィースターニー師は、ISISとの戦いを義務とする教令を出しました。この教令は、ハシャド・アルシャビの形成にとって強力かつ本格的な刺激剤となりました。
法的な正当性
ハシャド・アルシャビは、2016年11月26日にイラク議会で「ハシャド・アルシャビ」法の承認を受けてイラク軍の一つとなり、同国軍総司令部の監督下に置かれました。
組織構造
ハシャド・アルシャビは複数の抵抗組織集団で構成されており、その数は42から68グループに及ぶと言われています。またこの民兵組織の人員数についても異なる記述があり、6万人から16万人と報告されています。一部では、この組織のメンバー数は13万人と推定されており、そのうち9万人がシーア派アラブ人、3万人がスンニ派アラブ人、7000人がトルクメン人、そして3000人がキリスト教徒だと言われています。さらに、この民兵組織におけるクルド人の存在も報告されています。
活動内容
ISISとその支部テロ組織との戦いにおけるハシャド・アルシャビの最も重大な役割は、特に中部サーマッラー市とアメルリ市の包囲を破り、ジュルフ・アル・サフル州、ティクリート州、バイジ州、ディヤーラ州を解放したことです。この民兵組織の公式ウェブサイトによりますと、この組織は2015年末までにイラクの19都市からISISを駆逐し、同国の各都市を結ぶ52の街道の安全を確立しました。なお、このウェブサイトは、ハシャド・アルシャビによって解放された地域の面積を1万7500平方キロメートル(ISIS占領地域の3分の1)と推定しています。
ハシャド・アルシャビはまた、ISIS政権崩壊後、イラク首都バグダッド、サラー・フッディン、ディヤーラ、キルクーク、ニーナワー、西部アル・アンバールの各地にあるISISの残存勢力を掃討しました。この民兵組織はまた道路建設、砂漠化阻止、シーア派追悼行事アルバインの行進などの宗教儀式の保安、洪水などの自然災害への対処などの社会奉仕活動にも積極的に取り組んでいます。
ハシャド・アルシャビに関するイラク国内の立場
米国政府とその同盟国がハシャド・アルシャビの解体を望んでいる一方で、イラクの国民とエリート層は同国の安全保障にとってこの民兵組織が重要な要素であると考えています。イラクでこの民兵組織が相当の地位にあり正当なものとされていることを受けて、聖地ナジャフの権威者の1人、バシール・ナジャフィ師がこの組織を「イラクと権威の片腕」とみなしたことは注目に値します。また、イラクの「国民知恵運動」の指導者セイエド・アンマール・ハキーム議長は、この民兵組織をイラクにとって戦略的に必要なものと考えています。