IAEA視察団が近くザポリージャ原発入り
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ザポリージャ原発
IAEA国際原子力機関のラファエル・グロッシ事務局長は8月29日、IAEA視察団が今週中にもウクライナ南部にあるザポリージャ(ザポロジエ)原発入りすることを明らかにしました。
ロシア・スプートニク通信によりますと、これに先立って同原発のあるザポリージャ州エネルゴダル市行政当局は、ウクライナ軍がIAEA視察団の訪問を阻止しようと同市への攻撃を強めていることを明らかにしました。
また、この原発の上空で米国から供給のウクライナ軍の攻撃用無人機「スイッチブレード300」が撃墜された、としています。
今月27、28日の両日、ウクライナ軍はエネルゴダル市の居住区を砲撃しました。
ウクライナ軍はエネルゴダル市の居住区を攻撃する前日の今月26日、自国ウクライナへ電力を供給する4本目の送電線を切断しています。
米CNNによりますと、 ロシア軍が制圧したザポリージャ原発で事故の懸念が高まるなか、IAEA調査団が近く現地へ派遣される見通しとなりました。
IAEAは28日日曜のツイートで、グロッシ事務局長が同原発での安全確保のため、今後2~3日のうちに調査団を派遣する方向で全関係者との協議を進めている、と表明しています。
米紙ニューヨーク・タイムズによりますと、派遣団のメンバーにはグロッシ氏自身が含まれるほか、主に中立的な立場の加盟国から専門家13人が参加するということです。同紙はまた、ウクライナへの支援でロシアから強い反発を買っている米国と英国はメンバーに入っていない、と報じました。
一方、IAEAはメンバー構成にに冠する28日のCNNと照会に対し、同組織としてそのような情報は公開しないとしたうえで、「調査団のメンバーは常に関連の専門知識に基づいて選ばれる。それぞれの出身国ではなくIAEAを代表して、国際社会に奉仕する立場だ」と強調しました。
ザポリージャ原発はヨーロッパ最大の原子力発電所で、ウクライナ戦争が始まってからロシア軍によって制圧されました。
同原発の周辺は何度も砲撃を受けていますが、ロシアとウクライナはこうした砲撃の責任を認めず、相互に相手側の攻撃だとして非難しています。
ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは今月27日、「ザポリージャ原発が直近24時間に繰り返し砲撃を受けた」とし、また今月25日には同原発への送電網が切断されて電力供給が停止したものの26日、「再接続された」と発表していました。
ザポリージャ市当局は事故発生の事態に備え、住民を対象に被ばくを抑えるヨウ素剤の提供を開始しています。
エネルゴアトムは28日日曜、風向きの予報を基に、重大な事故が起きた場合はウクライナ南部とロシア南西部に放射性物質を含んだ雲が広がると警告しました。
この一方、ロシア国防省は「ウクライナが挑発を続け、ザポリージャ原子力発電所で核災害を引き起こすと脅迫している」と表明しています。
そのうえで、「28日日曜には、ウクライナ軍の2つの砲兵部隊がザポリージャ原発の周辺地域を砲撃した。しかし、ロシア軍は同発電所に向けて発砲したウクライナ軍を迎え撃った」としました。
ザポリージャ原発の軍民地域行政の責任者であるエフゲニー・バリツキー氏は、「ウクライナ軍の砲撃により起きる可能性のある同原発での事故は、この地域でチェルノブイリや福島の悲劇の二の舞となる原発事故になりうる」と警告しています。
同氏は、「チェルノブイリ原発事故は数十カ国に影響を与えた。これゆえ、ザポリージャ原発への攻撃で放射能が漏出・拡散されれば、ザポリージャ周辺だけでなく地域全体に壊滅的な結果をもたらすことになるだろう」と語りました。