国連が米での人種差別に警告
国連の専門家が、「米国は、表面的措置や場当たり的な対処を止め、黒人に対する警察の暴力や人種間の不平等という現在の問題に対峙すべきである」と述べました。
2020年の夏、アメリカでは黒人男性ジョージ・フロイドさんの殺害に対する抗議に続き、ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)・「黒人の命は大事だ」 運動が起こりました。
同年5月に起きたジョージ・フロイドさん殺害事件が国連安全保障理事会の注意を引いたことにより先日、アメリカでの人種差別と黒人市民の権利侵害の調査の一環で国連専門家が初めて行った公式な訪米は2週間後の現地時間5日金曜、全日程を終了しました。
国連の代表者らは、アメリカで黒人が日常的に法とともに経験している差別に対処するため、国を挙げての取り組みを行うよう求めました。
この報告に基づけば、国連人権理事会は2021年4月、「法執行における人種的公正・平等の促進に向けた専門家メカニズム(EMLER:Expert Mechanism to Advance Racial Justice and Equality in Law Enforcement)」を立ち上げています。
このメカニズムは、国連の独立専門家や識者による組織の一部であり、各政府がより多くの措置を取って自国の人権状況を改善するために用いられます。
訪米した2人の国連独立専門家の1人であるトレイシー・キージー(Tracie Keesee)博士が今回行われた調査の間に語ったところでは、アメリカの人種的不平等はその建国時にまでさかのぼり、早急な解決策はひとつもないということです。
同博士はまた、「今日までに人種差別は、対応・逮捕から判決・選挙権剥奪といった、警察や法執行機関による行動のありとあらゆる過程で確認されている」と述べました。
同博士はアルゼンチン出身のファン・メンデス(Juan Mendez)氏とともに15日間、アメリカを訪れてワシントン、アトランタ、ロサンゼルス、シカゴ、ミネアポリス、ニューヨークの6都市を視察しました。
かつて国連人権理事会の拷問に関する特別報告者であったメンデス氏は、すでに取り上げられているフロイド氏の殺害を含めた人種差別的殺人事件について、関与した警官に有罪判決が下されることを望むとしながら、「この一方、別の多くの事件は依然として未解決のままであり、このような例の一部が不起訴となる度合いを示している」と述べました。
続けて、「専門家らは米司法省に対し、このような例において地元警察署に対処できる権限を、より真剣かつ積極的に行使するよう求めている」として、政府がこの件に関しより一丸となって対処する必要があると強調しました。
今回の報告によれば、国連専門家らは今年9月もしくは10月にスイス・ジュネーブで開催予定の人権理事会で最終的な報告書を提出するということです。
一連の人種差別的な黒人殺害事件の最新の事例には、ニューヨーク市の地下鉄で白人の元海兵隊員が行った、黒人男性ジョーダン・ニーリーさん殺害事件が挙げられます。
ニーリーさんの死はアメリカ国内で、人種差別に対する抗議の新たな波を呼びました。
抗議者たちは、ニーリーさんの首を圧迫して殺害したダニエル・ペニー容疑者が刑事告訴されるよう求めています。