英が中堅国となった原因
(last modified Sat, 20 Apr 2024 07:26:20 GMT )
4月 20, 2024 16:26 Asia/Tokyo
  • 英元外相を務めたデイヴィッド・ミリバンド氏
    英元外相を務めたデイヴィッド・ミリバンド氏

英国でかつて外相を務めたデイヴィッド・ミリバンド氏が、「我が国は、EU離脱後に影響力を失い、世界に数十ある中堅国の一つに成り下がった」と語りました。

現在、IRC国際救済委員会委員長を務めるミリバンド氏はこの談話において、「我が国は、この(力の)減退のプロセスを反転させるべく、外交政策においてEUと新たな構造および協定を確立する必要がある」と述べています。

また、「我々はNATO北大西洋条約機構の枠組みでは強い関係を持つが、EUとの(単独の)関係はほとんどない。また、ドナルド・トランプ前米大統領が年内に大統領選で勝利すれば、我が国の減退はさらに加速するかもしれない」としました。

ミリバンド氏は、「たとえジョー・バイデン現米大統領が再選したとしても、世界において継続して積極的なリーダーシップを示すことに対するアメリカの意欲、忍耐力、能力については、依然として黄信号が灯っている」と語っています。

英ガーディアン紙によれば、ミリバンド氏は「EUが、ウクライナに武器を供与し同国から600万人の難民も受け入れ、発展の主要な担い手となり、さらにG20の一員として、貿易、気候変動、デジタルといった分野を管理する一大勢力となっている世界にあっては、我々が考え方を変える必要がある。英国の対ロシア政策が、EUから離れたことで弱体化し、効果も薄れていくであろうことを、我々は知っておく必要がある。中国に関する事柄も、同様のことが言える」と付け加えました。

そして、「英国は、2019年に行ったEUとの政治・外交政策上の関係の拒否という決定を変更する必要がある。外交、防衛、安全保障といった多くの共通分野で(EUと)協力・調整を進められる構造や協定を確立し、発展政策上の利益を作り出さなければならない」としました。

トニー・ブレア、ゴードン・ブラウン両首相の下で2007年から2010年まで外務大臣を務めたミリバンド氏はさらに、「英国のEU離脱の際に抱かれていた幻想の1つは、英国の運命が、自身の他国との交渉・駆け引き能力ではなく、自身の決断のみと関連する、というものだった」と述べました。

同氏はまた、「かつてのジョンソン政権は、英国の政策立案者にとって存在する危険因子を指摘した。それは、日増しに高まる世界的なリスクがあり、強力・狡猾で諸事に精通し時には略奪者ともなる国々、そして非政府の勢力が幅を利かせている世界においての、英国の力と地位についての空虚な思考である。我々は、自らが過去に持っていた力ではなく、今日持っている力の実情を認識しなければならない」としています。

加えて「我々には、サウジアラビアのような国家予算も、フランスにEUが下している碇も、トルコの地域的活動やリスク受容度も、はたまたインドやインドネシアのような圧倒的人口もない。我々はもはや、国際体制において複数の『中堅国』の一つでしかないのである」としました。

そして最後に、「イギリスの富、軍事資産、名声は、過去10年間で他国と比較し減退した。我々がなんとかしなければ、経済から気候危機、安全保障、国際的発展に至るまでの極めて重要な利益において、国の立場は益々不利になっていく。その理由は単純明快だ。それは、今や世界が不均衡という不健全な状態に進んでおり、英国は重要な一部の流れにおいて誤った方向を向いているからだ」と結びました。

 


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