May 27, 2024 19:49 Asia/Tokyo
  • 仏領ニューカレドニアの植民地主義との闘い
    仏領ニューカレドニアの植民地主義との闘い

フランス領ニューカレドニアで、新住民へ地方選挙参政権を拡大するなどのフランス政府の計画に抗議するデモが騒乱に拡大し、太平洋上のフランス諸領において1980年代以降最多となる死者が出たことは、同島の先住民族、入植者の子孫、新住民の間の隠された格差を、白日の下にさらしました。

ニューカレドニアにおける大規模な抗議デモは、フランス議会で先日、同島の地方選挙参政権が1998年以前の住民に限定されていたものから現地に10年以上暮らす住民にも拡大される憲法改正案が可決されたことを受けて起こりました。

 

ニューカレドニアとは?

豊富な天然資源を有するニューカレドニアは、インド太平洋地域でフランスが統治下に置く島嶼地域のひとつにあたり、太平洋において自国の影響力を高めようという同国のマクロン大統領の計画の軸となっています。

オーストラリアおよびフィジーの間に位置する人口30万人強のこの島は、フランス海外領土の中で最大のものの一つであり、同国の太平洋上の勢力として重要な部分を占めています。一方、ニューカレドニアの先住民族・カナックの人々は、フランスの植民地支配に長年不満を抱き、自分たちの住む島の地位を変えようとしてきました。

フランスは1853年にニューカレドニアを併合した後、この島へ意図的に多くのフランス国民を送り込みました。そのためニューカレドニアでは、フランスからの独立をめぐり長年にわたり緊張が続いていました。

 

ニューカレドニアはフランスにとってなぜ重要か?

アフリカの旧植民地諸国への影響力を失いつつあるフランスは、ニューカレドニアおよびインド太平洋地域にある他の海外領土を維持することを、地域的影響力保持という大きなビジョンの鍵だと考えています。

フランスは、重要な海運ルートへのアクセス地域でプレゼンスを維持することは、自国企業の利益になると考えています。また、自らを台湾や南シナ海の問題をめぐる米中間の緊張を調整できる勢力だと見なし、自国の地域での恒久的軍事駐留は、海上で深刻な事態が起きた際に対処するためだとしています。

フランスの海外領土は、太平洋のポリネシア、ウォリス・フツナ、クリッパートン、そしてインド洋のマヨット、レユニオンなど複数の島々に及んでおり、その人口は165万人にのぼります。

ニューカレドニアの人々は、フランスに有利に働くような憲法改正などの同国の拡張主義的措置に反対しており、それに対する抗議活動は、死者を出すまでに拡大しています。

ニューカレドニアでは、独立を求める先住民族・カナックの人々と、この島がフランス領であることを望む植民地時代の入植者の子孫との間で、数十年にわたり緊張が続いてきました。前出の参政権拡大をめぐる憲法改正は、この島の非先住民族の有権者数を増やすことを目的とするものであり、独立支持派からは非難されていました。

この件について、ある大学講師は、「他の人口の増加によってカナックの人口が埋没し、ほぼなくなってしまうという懸念が感じられる」と指摘しています。

一方、ニューカレドニアの抗議活動指導者の一人は、この島で今日起きている暴力は実のところ、植民地時代から現在まで行われてきた暴力への反応であると考えています。また、ニューカレドニアの若者にとって植民地主義は過去のものではなく、彼らはフランスを自分たちの機会を奪う存在と捉えています。

マクロン大統領は、ニューカレドニアで激しい抗議活動により数人の死者が出たことから、同島に非常事態を宣言しました。

前述のように、ニューカレドニアは1860年代にフランスの植民地となりましたが、植民地主義に対する最初の抗議運動は1878年に起こり、その結果、少なくとも800人が死亡したほか、カナック数千人が追放されました。さらにこれらの抗議活動を受けて、一部の先住民族は地上から消滅させられました。

フランス当局はこれまで、ニューカレドニアに対し自治を与えると約束し続けてきましたが、それらはすべて最終的に、抗議運動への暴力的弾圧へとなっています。

しかしフランスは1998年、ついにニューカレドニア住民への権限譲渡プロセスを「不可逆なもの」と位置づけたヌメア協定に署名し、これは同島住民から広い支持を受けました。

こうして、ステンレス鋼や電子機器用バッテリーの製造に不可欠なニッケルの世界埋蔵量30%を有するニューカレドニアは、かつてはフランスにとって黄金郷になる可能性を秘めていたものの、今や同国にとっての時限爆弾となりました。

2019年の国勢調査によれば、ニューカレドニアの人口は41%以上がカナック、24%がヨーロッパ系となっています。しかしカナックの人々は、フランスのニューカレドニアに対する植民地主義的政策のために、低賃金や貧困率上昇などのより多くの経済的・社会的問題に直面しており、その例には、「ニッケル協定」と呼ばれるニューカレドニア現地産業への投資計画などが挙げられます。

 

 


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