アメリカ諸州はなぜパレスチナ擁護を理由に処罰されるのか?
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ドナルド・トランプ米大統領が、「パレスチナを支援しシオニスト政権イスラエルの企業をボイコットする国内の州や都市は、自然災害対策および国土安全保障のための緊急資金を受給できなくなる」と警告しました。
(last modified 2025-08-16T09:55:59+00:00 )
8月 06, 2025 15:53 Asia/Tokyo
  • アメリカ諸州はなぜパレスチナ擁護を理由に処罰されるのか?

ドナルド・トランプ米大統領が、「パレスチナを支援しシオニスト政権イスラエルの企業をボイコットする国内の州や都市は、自然災害対策および国土安全保障のための緊急資金を受給できなくなる」と警告しました。

米国連邦政府は、イスラエル企業をボイコットする州や都市は災害対策資金を受給できないことを強調し、「FEMA連邦緊急事態管理庁が設定した条件に照らし、米国内各州はこの資金の受給条件として、イスラエル企業とのビジネス関係を具体的に打ち切らないことを認める必要がある」と発表しました。

【ParsToday国際】この物議を醸す決定により、米連邦政府の重要な援助は事実上、反イスラエル派に対する政治的圧力の手段と化しており、米国の国内構造においてシオニスト・ロビーの影響力拡大を示す憂慮すべき兆候となっています。

近年、米国の国内政治は西アジア情勢、特にイスラエルとの関係にますます深く結びつくようになっています。こうした依存は外交・軍事分野のみならず、連邦資金の配分といった国内のデリケートな分野にも浸透しています。その明確な例としてトランプ政権が最近、パレスチナを支援する、あるいはイスラエル企業との協力関係を打ち切った米国内の州や都市への緊急支援金の打ち切りを示唆したことが挙げられます。

ここ数カ月にわたり米国内外で、パレスチナへの支持を表明したり、ガザ戦争に反対する抗議活動に参加したがために米国の名門大学から多くの学生らが停学処分・追放となった事件が大々的に報道されています。これらの学生は多くの場合、公民権運動や人権運動の枠組み内で活動しており、連邦政府の対イスラエル支援という公式方針と相容れない意見を表明したというだけの理由で、さまざまな懲戒処分を受け、場合によっては退学処分となっているのです。言論の自由の擁護者を主張する国の大学によるこうした行動は、特に米国の戦略的盟友であるイスラエルの利益が危機に陥る場合には、アメリカでも表現の自由や公民権運動の規制が厳格化し広範囲なものになり得ることを明確に示した形となりました。

この点において、イスラエル企業への制裁不履行を連邦資金の支給条件とするトランプ大統領の決定は、こうしたアプローチの継続と捉えるべきものです。この決定によれば、アメリカでは倫理、政治、あるいは人権上の理由からイスラエル企業との取引関係の打ち切りを選択した州や都市は、少なくとも19億ドルの災害対策資金が受給できなくなります。これらの資金は通常、捜索救助隊の装備、危機管理担当者の給与、非常用電力システムの強化、その他緊急時の重要な任務の遂行に使用されます。簡単に言えば、米連邦政府は金融手段を用いて国内各州に対し、自国とイスラエルの政治的利益に沿う貿易政策を強制しているということです。

この措置は、アメリカ主要都市が対イスラエル制裁の非適用を承認し、テロ対策予算5億5350万ドルの割り当て受給を義務付けていることと相まって、米国の国内意思決定プロセスへの外交政策の介入が増大していることを如実に物語っています。特に、こうした状況は地方自治体の意思決定の独立性を揺るがし、アメリカの国際政策に対する批判や国内からの反対の余地を狭める格好となっていますが、これは州の相対的な自治を基盤とするアメリカ連邦主義の精神と明らかに矛盾するものです。

社会的観点から見ても、この種の政策は、米連邦政府と地域社会の間の亀裂を深めるなど、広範囲にわたる影響を及ぼす可能性があり、それは特に、パレスチナ問題への国民感情やガザの人権擁護への支持が高い地域で顕著になっています。そしてこれらの政策は長期的に見て、アメリカの政府システムの公正さと公平性に対する国民の信頼を損なう可能性も孕んでいます。

このことに加えて、こうした政策の影響は国際レベルにも及びます。米国は常に表現の自由、組織機関の独立性、そして人権擁護を声高に主張してきたものの、国内政策が特定の外国勢力の利益に明らかに合致している場合、こうした主張は国際社会ですぐさま疑問を突き付けられることになります。

しかし、肝心なのは、なぜトランプ現米政権がこのような政策を採用したのか、ということです。その答えは、アメリカの極右運動とシオニスト政権イスラエルの間のイデオロギー的かつ政治的に深い繋がりの中にあります。トランプ氏は大統領就任以来、前回の任期中も現在も、常にアメリカ国内の強力な親イスラエル派ロビーの満足を取り付けることに熱を挙げてきました。特に米国大使館を占領下の聖地ベイトルモガッダス・エルサレムに移転させたこと、UNRWA国連パレスチナ難民救済事業機関への援助停止などは、すべてこの大掛かりな戦略に沿ったものに他なりません。

こうした経緯を考えれば、トランプ大統領が最近パレスチナを支援する国々に対して行った脅迫も理解が可能になります。その狙いは、たとえ米国内といえど、アメリカの無条件の対イスラエル支援に反対するあらゆる声を封じ込めることにあります。

一方で、これらの決定は、アメリカ世論におけるパレスチナ人への同情の高まりに対する政治的反応と捉えることもできます。近年の世論調査では、特に若年層、学生、人種的少数派、そしてイスラム教徒やヒスパニック系コミュニティにおいて、パレスチナへの支持およびイスラエルの政策への批判が高まっていることが明らかになっています。この変化は、アメリカにおける伝統的なイスラエル支持派らの懸念を引き起こしています。そのため、資金面での脅迫や意見表明の場の制限といった圧力行使によりこの傾向を反転させ、あるいは未然に防ごうとする試みがなされているのです。

結局のところ、このような行為はアメリカ民主主義の基本原則に反するだけでなく、事実上米国民の安全と幸福を危険に陥れる可能性があります。このような状況では、次のような疑問への答えがこれまで以上に重要になってきます。それは、「アメリカ国民の安全はイスラエルへの無条件の忠誠のために犠牲にされるべきなのか?」というものです。

 

 


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