イスラエルがカタール攻撃するも、米国がペルシャ湾南部アラブ諸国の安全保障順守を主張する理由とは?
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マルコ・ルビオ米国務長官
米国が、「サウジアラビアやGCCペルシャ湾岸協力会議に加盟する他の諸国の安全保障を順守している」と主張しました。
【ParsToday国際】マルコ・ルビオ米国務長官は、サウジのファイサル・ビン・ファルハン外相との電話会談で「米国はペルシャ湾岸諸国の安全保障を順守している」と主張しました。この主張がなされたのは、GCC加盟国の1つ・カタールの首都ドーハに対するシオニスト政権イスラエルの最近の侵攻を受け、これらの諸国が米ホワイトハウスへの不信感を募らせている中でのことです。
米国のこの主張は、駐米カタール大使メシャール・ハマド・アル・サーニー氏が、最近のイスラエルによるドーハ攻撃に際しアメリカが何もしなかったことを背信行為だと非難したことを受けたものです。同大使は、カタールがパレスチナ・ガザ地区での停戦交渉中だったことに触れ、「我々は裏切られ、カタールは攻撃対象となった」と語りました。
イスラエルによるドーハ攻撃の際にパトリオット・ミサイル防衛システムが機能しなかったことに対し、アル・サーニー大使は「イスラエルはある種の技術的優位性を有している。そのため、我が国のパトリオット防衛システムのほとんどは、別の方角に向けられていた。誠に遺憾ながら、我々は米国の同盟国として協力関係にあり、イスラエルからはそのようなことはしないと確約されていたため、今回の行動には驚きを禁じ得ない」と述べています。
最近のイスラエルによるドーハ空爆では、同市内にあったパレスチナ・イスラム抵抗運動ハマス指導部の滞在場所が標的となりました。一部のイスラエルメディアは、この作戦を米国政府とドナルド・トランプ大統領自身が調整したものだと報じましたが、イスラエル首相府はこれを否定し、独自に行われた行動であると強調しています。一方で、カタール外務省はこの攻撃を卑劣な犯罪行為として非難し、「このような攻撃はカタールの国民と住民の安全にとって深刻な脅威となる」と警告しました。
イスラエルによるカタール攻撃は、シオニストが「新たな悪の枢軸」と称する新たな枢軸への対抗策とみられます。この点に関して、シオニスト政権のディアスポラ(イスラエル占領地外ユダヤ人問題担当)大臣であるアミハイ・チクリ氏は、トルコ、カタール、シリアの3カ国を「新たな悪の枢軸」だとしました。過激派として知られるこのシオニスト関係者は、イスラエル占領政権に対抗する新たな地域連合の形成に懸念を示し、「トルコ、シリア、カタールは新たな悪の枢軸であり、これは新たなイランだ」と述べています。
アブ・ムハンマド・アル・ジャウラニ氏率いるシリア新政権の妥協的な姿勢や、トルコ・イスラエルの継続的な経済貿易関係、エジプトや米国と並んでガザ戦争での仲介役を務めるカタールの立場に注目しても、このシオニスト当局者の主張は疑問や不信感を抱かせるものです。しかし、この発言の重要な点は、シオニスト政権がカタールなどの米国の地域同盟国を含む他の国々からのいかなる行動、あるいは穏健な姿勢さえも受け入れず、ハマス指導者をカタールに住まわせているという口実で、ガザ戦争の停戦案の交渉というアメリカの欺瞞的な行動のもと、ドーハで空爆によってハマス指導者の暗殺を狙ったものの、この点では失敗したということです。
ここで主な疑問が生じてきます。それは、イスラエルによるカタール空爆が米国とトランプ大統領の認識と調整なしには実行不可能だったにもかかわらず、アメリカ政府関係者、特にマルコ・ルビオ国務長官がなぜ、アメリカによるペルシャ湾岸協力会議諸国の安全保障の順守を主張し続けているのか、ということです。
これに対し、ネタニヤフ・イスラエル首相・トランプ米大統領の2人組は、2025年初頭以降の出来事や展開を鑑みると、これまでに前例のない行動や挑発行為を引き起こす能力を事実上示しており、非常に危険なコンビであると言わざるを得ません。実際、こうした行動の例として去る6月のイランへの攻撃、そして先般における、地域の主要なアメリカの同盟国の一つで、西アジア最大の米軍基地アル・ウデイド軍事基地が所在するカタールへの空爆が挙げられます。
トランプ氏はネタニヤフ首相に対し、シオニスト政権の利益と目標に必要と主張する地域諸国に対するあらゆる行動を容認した模様です。したがって、米国とペルシャ湾南部のアラブ諸国、特にカタールとサウジアラビアとの間に安全保障協定が締結されているにもかかわらず、アメリカがこれらの協定を遵守するという保証はありません。もちろん、マルコ・ルビオ国務長官の発言内容から明らかなように、同長官がこれらの国々の安全保障を遵守すると述べる際、彼が意味しているのは、イラン排斥主義的な計画という形で、イランからもたらされるという架空の、そしてあくまでも主張に過ぎない脅威を指しています。
最近の出来事は、地域諸国に対する主な脅威がシオニスト政権から発生していることを示しています。シオニスト政権は、国際的な原則や法規範を完全に無視し、いつでも望むときにこれらの国々を攻撃してきました。イスラエル人アナリストらは、2023年10月7日のパレスチナ側による対シオニスト攻撃「アクサーの嵐作戦」以降、シオニスト政権は国家安全保障政策を転換し、対処を先送りせずに、あらゆる潜在的な脅威を差し迫った脅威として扱うようになった、と主張しています。
一昨年10月7日からの2年間、イスラエルは近隣諸国に対し、かつてないほど多数回の攻撃を繰り返すという攻撃的な行動パターンを示してきました。2年間のガザ戦争中におけるその矛先は西アジア6カ国、パレスチナ(ガザ)、レバノン、シリア、イエメン、イラン、そしてカタールでした。実際、カタールへの攻撃は今や、トルコなどの国々に警鐘を鳴らしています。