米大統領選
視点;国際社会がトランプの敗北を歓迎、 国際舞台での米国の敗北の象徴
2020年の米国大統領選挙で民主党候補のバイデン氏がトランプに勝利したことは、国際舞台で肯定的な反響を呼んでいます。トランプ氏がいくら敗北を認めないでいても、その政策に対する批判はすでに始まっています。
特に、欧州ではEUおよび主要国を含んだ諸国の高官が、この問題に反応を示しており、バイデン氏の勝利を歓迎すると同時に、トランプ氏の政策と業績を批判しています。ドイツのマース外相は、「米国の現在の大統領の国際レベルでの業績は、我々に大きな問題を引き起こしている。トランプ氏は今が引き際であることが分かっている」と語っています。
マース外相は、トランプ氏が政権を掌握していた期間、「アメリカファースト」のスローガンに則したトランプ氏の一方的な政策により大西洋の両側で生じた巨大な問題を指摘しています。これらの問題は、貿易、経済、軍事、安全保障、政治など、多岐にわたっています。トランプ氏は常にヨーロッパに貸しがあるようなアプローチを採り、ヨーロッパの主要国、特にドイツに対しては自国の利益追求のため米国を利用した、と非難しています。しかしその一方で、米国大統領はその就任当初から物議をかもし、米国がNATO北大西洋条約機構にどのように参加すべきかについて不協和音の種をまいたと同時に、NATOに加盟する欧州諸国に軍事予算及びNATO分担金の割合いの増額を求めました。そしてそれゆえ、ドイツに圧力をかけるべく、米国は自国軍の一部をドイツから撤退させました。
通商および経済の側面においても、トランプ氏は、経済保護主義政策に則し、米国のライバル、特に中国との貿易戦争を生み出しただけでなく、米国のヨーロッパのパートナー諸国との広範囲かつ継続的な貿易上の対立を引き起こし、現在でもそれが続いています。その一方で、トランプ氏は国際条約、特に気候変動に関するパリ協定、JCPOA核合意、中距離核戦力全廃条約(INF)などの武器管理条約といったヨーロッパが非常に重要視している条約を破棄しました。オープンスカイ協定は事実上、ヨーロッパや世界の安全を深刻な危険にさらしています。と同時に、トランプ氏は常に、ヨーロッパの自国の同盟国を含む世界の諸国を軽蔑し、見下していました。ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領などの諸国の指導者を無礼な物言いで繰り返し侮辱してきました。トランプ氏の行動は、日を追うごとに世界での米国の孤立の高まりにつながったことから、バイデン氏はトランプ氏が世界でアメリカへの尊敬を喪失させたことを認めました。
もちろん、トランプ氏が去りバイデン氏と交代したことに満足しているのは、アメリカと同盟関係にある欧州諸国だけではありません。反米的な諸国やアメリカのライバル諸国もこの交代をプラスに捉えています。中国は、新型コロナウイルスワクチンをまもなく市場で販売すると発表しました。事実上この措置は、新型コロナウイルスの流行に中国がかかわっていたとするトランプ氏の非難に対する一種の反論です。トランプ政権時代に米国から最も厳しい制裁と圧力を課されたベネズエラのマドゥロ大統領は、新しい米国政権と交渉する準備ができていることを発表しています。その一方で、反帝国主義の政治関係者らもトランプ氏の任期終了を歓迎しています。モラレス前ボリビア大統領は、米大統領選でのバイデン民主党候補の勝利に対し、「ファシストで人種主義者のトランプ氏が敗北したことを嬉しく思う。 もちろん、バイデン氏の勝利が我々にとって喜ばしいのではなく、我々はトランプ氏の敗北を喜んでいる」と語りました。
このスタンスは、バイデン氏が大統領になることで喜んではいけないことを示しています。というのは、米国で共和党と民主党のどちらかの大統領が政権を握っても、米国の長期的な目標、特に世界の支配は、ハイパワー、制裁などのミディアムパワー、そしてプロパガンダ戦争などソフトパワーを用いての反米国、ライバル国との対峙であり、それは常にホワイトハウスの措置の筆頭にあり、その中にあって戦術だけが変化しているのです。
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