視点
IAEA理事会での対イラン決議に対するロシアの反対
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ロシアのウリヤノフ在ウィーン国際機関常駐代表
オーストリア・ウィーンでは、6日月曜からIAEA国際原子力機関理事会の会合が始まっており、10日金曜まで継続される予定です。この会期中に予想される対イラン決議採択は、ロシアが焦点をあてる議題となっています。
ロシアのウリヤノフ在ウィーン国際機関常駐代表は7日火曜、ツイッターで「これまで以上に、「IAEA理事会の今回開催中の会議での対イラン決議の採択という、ウィーン協議の西側のメンバーの意図は、核合意にとって非常に破壊的なものだ」と書き込みました。
また、IAEA理事会での対イラン決議案の採択という、予想される米英独仏の決定に言及し、「ロシアはいかなる形でもそのような決議には賛同しない」と強調しています。
ウリヤノフ代表はこれに先立ち、「イラン問題はおそらく、かなり高い確率で8日水曜、IAEA理事会により審議されるだろう」としていました。
IAEA理事会の今回の会議における、あらゆる対イラン決議採択へのロシアの猛反対は、事実無根の口実による対イランキャンペーンの展開を目指しての、米を筆頭とした西側諸国の団結および、破壊的なアプローチに着眼して取られた対応です。
アメリカおよび、いわゆる欧州トロイカと呼ばれる英独仏はIAEA理事会に対し、共同の対イラン決議案を提出しており、「イラン国内にある未申告の核施設でのウラン粒子発見問題が未解決のままとなっていることは、重大な懸念材料である」とまで主張しています。
この4カ国はまた、「イラン側の協力が不十分」なために、一連の対立や保障措置の問題が未解決のままとなっていると主張し、イランに対して「保障措置関連で残された問題を全て解決するためのさらなる協力というIAEA提案を直ちに受け入れる」よう求めています。
こうした中、イラン国内の3箇所でごく微量の濃縮ウランが発見されたという申し立ては、そもそも数十年前の物質に対するものであり、既にイランの核開発に関する「軍事的側面の可能性(PMD)」という枠組みで、IAEAによってすでに調査が行われ、イラン側からの回答により解決済みとなっています。イランが現在、様々な濃度での濃縮ウラン数百kgを保有している中で、彼らが指摘する施設においてのごく微量のウランの保有・存在目的は何か、などという疑問を追及することは、全く無益かつ行う必要性が理解できないものです。しかし現在、特にラファエル・グロッシ事務局長を筆頭とするIAEAは、IAEAはおろかNPT核兵器不拡散条約にすら加盟していないシオニスト政権イスラエルの主張に踊らされ、この件に関してイランに対し一連の疑問を提示するとともに、イランがしかるべき回答を過去に示したにもかかわらず、説得性に欠けると再び言いがかりをつけています。
その一方で、グロッシ事務局長は今月3日、被占領地パレスチナを訪問して、IAEA理事会を目前にベネット・イスラエル首相と会談しました。ここで浮かび上がる疑問は、この訪問・会談が一体どのような意図で行われ、6日月曜の会合でグロッシ事務局長が提起した一連の主張にどのような影響があったのか、ということです。
グロッシ事務局長はIAEA理事会会合の開会演説において、「自国内の未申告の3つの核施設で発見された核物質に関するイラン側の説明は、技術面で説得力のあるものではなく、これに関する保障措置問題が残されている」と語りました。
これに対し、イラン原子力庁のエスラーミー長官は、「IAEAに対するわが国の回答は正確なものだった」と強調し、「IAEA事務局長は、我々の回答が納得のゆくものだったとする意志が微塵もない。IAEAは、特にイスラエルを筆頭とする我々の敵の諜報活動に基づく報告を論拠としている」と述べています。
IAEAおよびその事務局長の中立性に疑問を投げかけるもう1つの問題は、核の番人とも称されるこの国際監視組織とその長がなぜ、イランの専門核施設やイラン人の核研究者に対するイスラエルの複数回に及ぶ攻撃を非難せず、これに関して何らかの立場表明さえしてこなかったのか、ということです。
イランは、IAEA理事会での対イラン決議草案の提出という西側諸国の敵対行為の続行、そして、IAEA事務局長による私欲がらみのアプローチに関して押し黙っていることはなく、確実に国益保護のために必要な措置をとることになるでしょう。