視点
アメリカで拡大する銃規制強化要請と抗議デモ
アメリカで最近、武器製造業者ロビーの圧力やホワイトハウス当局者の軽視を背景に、集団銃撃事件や銃暴力が頻発し、その犠牲者が激増していることから、国内で市民による抗議が高まっています。
このことを裏付ける例として、11日土曜には数万人の米国民らが全米数十か所で抗議行進を行い、銃暴力を規制する法案の可決を求めました。抗議者らは、特に首都ワシントンDCでのものをはじめとしたこれらの集会が、国内の政治指導者らへの明白なメッセージであるとしています。その内容とは「あなた方の消極姿勢がアメリカ人を殺している」というものです。
またこれらの人々はアメリカ政府関係者に対し、国内での銃暴力に対し、銃所持の許可年齢を21歳に上げることをはじめとした措置を早急に講じるよう求めています。こうした抗議行動が繰り広げられているのは、同国テキサス州の小学校での銃乱射事件により児童19人を含む合計21人が死亡してからわずか数週間後のことです。
米オハイオ州にあるザビエル大学のCheryl Lero Jonson准教授は、「すべての大きな銃撃事件は、次に起きるコロンバイン高校、バージニア工科大学、またはサンディフック小学校での事件のような犠牲者にならないという確信が得られるような、学校内の安全性の増強という要求につながっている」と語りました。
これ以前にも、安全保障問題を専門に扱うシンクタンク、新アメリカ安全保障センターが報告書において、「国内における最近の集団銃撃事件は、国家安全保障の再定義の必要性を物語っている」と指摘しています。米国の銃による暴力の統計を提供するサイト「ガン・バイオレンス・アーカイブ(Gun Violence Archive)」の統計データによりますと、アメリカ国内では今年に入ってから現在までに既に、240件もの集団銃撃事件が発生しています。近年において、アメリカ国内では集団銃撃事件の件数が増加しており、ちなみに2019年の417件から2020年は611件に増えました。そして、2021年にはそれよりもさらに多い693件もの事件が起きており、それにより702人が死亡したほか、2800人以上が負傷しています。
アメリカ国内における最も重要な問題の1つとしての、死者を出す銃暴力事件は増加傾向にあり、もはや同国の政府や警察による取り締まりでは手に負えないものとなっています。安全保障の専門家らの話によりますと、国内安全保障に関してアメリカを脅かしているのは、国際テロでも外国からの脅迫でもなく、白人至上主義団体やそうした思想を持つ人々をはじめとした極右派および、銃の大々的な使用をはじめとした暴力の拡大、さらには集団銃撃事件の相次ぐ発生は束になって、アメリカ社会にとっての真の脅威となっているのです。
今やアメリカでは銃器が最も注目される死亡要因とされています。アメリカは、各種の兵器や銃の所持・売買が自由となっている、世界でも数少ない国の1つです。このため、米国内の武器製造企業は各種の銃器の製造販売により莫大な利潤を得ているのです。アメリカでは、国民100人当たりおよそ120丁の兵器が存在していると推測され、このことから当然ながら、精神面や職業上で抱える問題に始まり、さらには個人や家族、社会的な報復にいたるまでの、様々な理由での銃使用が増えることになります。その一方で、武装組織、さらには過激派志向のある個人の手中にある武器も、アメリカでの集団銃撃事件発生の激増につながる見逃せない要因となっています。
特にドナルド・トランプ前米大統領をはじめとする米共和党派は根本的に、国内での銃問題の解決や武器販売の規制という信条を有していません。一方で、オバマ元大統領やバイデン現大統領をはじめとした民主党派は、少なくとも表面上は銃所持法における何らかの改正を試みました。バイデン大統領は最近、「国内での集団銃撃事件の増加により、わが国の首脳陣による”理知的な措置”の実施が必要とされている」と述べています。アメリカの法律によれば、現時点では米国民はライフルなどで使用され、連射を可能にする最大30発入りの弾層や手軽に携帯・使用できる半自動式の武器を購入できることになっています。
バイデン大統領は、「我々は、殺傷力のある武器や、弾丸を大量に装填できる弾層を禁じる必要がある。もしそれらを完全に禁じることができないのなら、銃購入許可年齢を18歳から21歳に引き上げるべきだ」と語りました。
しかし、武器販売が莫大な収益をあげていることから、武器製造・販売企業はアメリカ議会内における自らの強力なロビーを利用し、銃の販売・所持を規制する一切の法律の可決・施行を阻止しています。アメリカ国民の多くは、銃の所持問題とその関連規制の改正に関する同国の政府と議会の無関心と怠慢こそが、国内での銃乱射事件の連続発生の主要な原因だと考えています。