イマームアリーの生誕日に寄せて
今回は、シーア派初代イマーム、アリーの生誕日に際し、この人物についてお話しましょう。
イスラムの預言者の後継者で娘婿でもあったイマームアリーは、イスラム暦ラジャブ月13日、カアバ神殿で生まれました。
イマームアリーは、幼少の頃から、預言者ムハンマドの教育を受け、イスラムに信仰を寄せた最初の男性でした。その後、彼は預言者の娘のファーティマと結婚しました。
イマームアリーは、タブークの戦いを除き、全ての戦いにおいて預言者ムハンマドと共に参加し、常に、多くの苦労や困難の中で預言者を助けていました。
イマームアリーは、類まれなる勇敢な人物でしたが、非常に優しい心の持ち主でもありました。社会の虐げられた人々を助け、あらゆる圧制と戦い、常に、恵まれない人々を援助していました。イマームアリーは、統治においてイスラムの公正の真の象徴でした。彼は神への崇拝と服従を守り、礼拝の際には我を忘れ、神の栄光にひきつけられていました。
イマームアリーはイスラム暦40年、現在のイラク・クーファのモスクで礼拝中に敵の剣を受けて重症を負い、その2日後に殉教しました。イマームアリーが63歳、統治の座についてからは5年近くが経ったときのことでした。

太陽の光が照り付けていました。優しいそよ風が山の間から吹き、ゆっくりと音もなくカアバ神殿へと吹いていました。ラジャブ月の第二金曜日、大勢の人がカアバ神殿の周りを回っていました。ファーティマ(アリーの母)は疲れた表情で涙を流し、カアバ神殿の周りを回りながら、このようにつぶやいていました。
「神よ、あなたを信じます。本当に私は、あなたの家を作った預言者イブラヒームの教えを信じています。神よ、全知全能の神よ、あなたとこの家を作った方、私のおなかの中にいるこの子に誓って、この出産を私にとって容易なものにしてください」
そのとき突然、人々が驚く前でカアバ神殿の壁が裂けました。そして、ファーティマが入ったとたん元に戻ったのです。人々の間から驚きの声が上がり、続いて静かな沈黙が広がっていきました。人々はただ驚き、息を呑んでそこを見つめるしかありませんでした。
沈黙を破って、「少し前にカアバ神殿の壁が裂け、身重の女性がその中に入っていった」と言う勇気を持つ者は誰もいませんでした。そのようなことが起こったなどと、いったいどこの誰が信じたでしょう?この驚きが増したのは、カアバ神殿の鍵番がカアバ神殿の鍵を開けようとしても開かなかったときでした。
少しずつ人々の数が増えていきました。皆、この出来事の成り行きを固唾をのんで見つめていたのです。
しばらくの時が経ち、カアバ神殿が開きました。ファーティマがカアバ神殿で生まれた赤ん坊を胸に抱いて、中から姿を現しました。
この赤ん坊の父親は、こう叫びました。「人々よ、私の息子のアリーである。この子は神の家で生まれた」 この歴史的な出来事はラジャブ月13日の金曜に起きました。
アリーがカアバ神殿という聖なる場所で生まれたその日、人々は驚きに包まれました。なぜなら、それまでカアバ神殿で生まれた子供はおらず、その後もそのような出来事はなかったからです。これはその子の偉大さを示しています。今日はそのような完全な人物がこの世に生を受けた日なのです。
イマームアリーの知識は非常に幅広く、さまざまな学問の細かな点まで完全に精通していました。いかなる問題や質問に対しても戸惑うことはなく、直ちにその答えや解決法を導いていました。

イマームアリーは次のように語っています。
「預言者は、合法とされるものと禁じられるもの、あるいは正しいことと否定されること、あるいは最後の審判の日までに起こる事柄を忘れることなく、すべてのことを私に教えた。私もそれを守り、一言も忘れたことはない。それから、預言者は私の胸に手を当て、私の心を知識と理解、英知と光で満たし、私の中に無知が全く入り込まないように知識を与え、私がすべてを記憶できるよう神に願った」
そのため、為政者のウマル・イブン・ハッターブは、誰にも解決できないような問題に直面したときには、イマームアリーのもとに行き、このように言ったものでした。「私はあなたがいない人生から、神に助けを求める」 またこのようにも言っています。「もしアリーがいなかったら、私は滅びていただろう」
イスラムの偉大なる預言者ムハンマドの美徳を学ぶため、イマームアリーは弛まぬ努力を続けました。この彼の努力により、預言者は晩年、イマームアリーに自分の大きな知識を彼に授けました。
このような話があります。預言者ムハンマドは晩年、病床に就いたとき、「アリーを呼んできなさい」と言いました。アリーが預言者のもとに現れました。預言者はアリーに自分の服を着せると、彼の方に頭を寄せました。アリーが預言者の部屋から戻ったとき、人々は彼に尋ねました。「アリーよ、預言者はあなたに何とおっしゃったのか?」 アリーは答えました。「神の預言者は1000の扉のある知識を私に教えられた。そしてそれぞれの扉から、さらに1000の扉が開かれると」
イマームアリーの生誕日に際し、改めてお祝いを申し上げ、この完全なる人間の言葉をご紹介しましょう。
「あなたが死んだときは、あなたのために涙を流し、あなたが生きていれば、優しく親切にしてもらえるように人々と接しなさい」
