預言者の後継者、イマーム(2)【音声】
預言者ムハンマドの後のイマームの問題について、イスラム教徒の中でさまざまな見解が存在します。
彼らの一部は、イマームは選ばれるべき存在だとしており、預言者ムハンマドの後、イマームはイスラム教徒による評議で決められるものだと考えています。また、ほかのイスラム教徒は、シーア派の人々のように、イマームは指名されるもので、預言者ムハンマドは神から明確な形で後継者であるイマームを指名するよう命を受けたと考えています。つまり、神が預言者を選んだように、神自身がその後継者を選んだのです。
西暦632年に当たるイスラム暦10年、預言者ムハンマドは、神からのメッセージを伝えるために、彼の最後となるメッカ巡礼で一緒だった、帰途につく途中の大勢のイスラム教徒を、メッカとメディナの間にあるガディール・ホムという場所に呼び寄せました。この重要なメッセージは、シーア派初代イマームアリーを、預言者ムハンマドの死後、イスラム教徒の指導者とすると表明していました。預言者ムハンマドはこの出来事の前後において、繰り返し、アリーとその子孫が預言者の後継者としてふさわしいと強調していました。
イマームの行動はいつの時代においても、彼らに従う人々の模範となっていました。間違いなく、人々は、精神的価値を体現した人物を知り、親交をもつことにより、容易に幸福が得られるようになります。イマームの歴史を勉強することで、彼らの正しい政治や行動を知り、彼らがすべての国の歴史で発生した出来事にどのように対処したか、彼らの実りある経験から助けを得ることができます。
イマームの時代は、それぞれ分割されています。第1の時代は預言者ムハンマドの死去から始まり、初代イマームアリーの殉教で終わります。預言者ムハンマドの死後、彼の強調や遺言がありながら、イマームアリーは政治的・社会的指導者の地位につくのを阻まれます。この期間、アブーバクル、ウマル、ウスマーンが預言者の代行を意味するカリフに就任していました。この25年の期間、アリーは常に新興のイスラム社会の状況に配慮しており、物事の決定の際、しばしば3人のカリフを助けていました。
3代目カリフのウスマーンが殺害された後、人々はイマームアリーに注目を寄せることになり、イマームアリーは人々の強い要請により統治を受け入れました。彼の治世は、5年にも満たないものでした。イマームアリーの殉教後は、息子のハサンがシーア派2代目イマームとなりました。ハサンの時代は、大変複雑な時代でした。イマームハサンは権利の実現と、不当な統治基盤を揺るがすために多大な努力を行い、カリフたちによって生じた宗教的な逸脱行為に注目して、その逸脱をただし、イスラムを守ったのです。
イマームハサンが殉教した後、シーア派3代目イマーム・ホサインの時代が始まりました。イマームホサインは勇気や謙虚、道徳のすばらしさなどを備えた人物として人々に知られていました。彼の時代、ウマイヤ朝の圧政者ヤズィードが不当な形でカリフの位についていました。ヤズィードは自分の政治体制を正当化するため、イマームホセインに忠誠の誓いを求めました。しかし、イマームホサインはヤズィードとの和解がイスラムの消滅を意味することを知っていました。このため、ヤズィードの要請を拒否しました。その結果、イマームホサインとその教友は、イラクのカルバラーでヤズィードの軍勢に包囲され、殉教しました。
イマームホサインの息子サッジャードがシーア派4代目イマームに就任したとき、彼の精神性が社会によい影響を及ぼしました。イマーム・サッジャードは、祈りを捧げる形で、個人的、社会的な教育というテーマを、社会に浸透させました。彼の残した貴重な著作として、『サッジャードの祈祷書』や『法の書』があります。
シーア派の5代目イマーム・ムハンマドバーゲル、6代目イマーム・サーデグも、自身の美徳と学識でイスラムを復興し、支持者にイスラムの英知を教えた人物でした。彼らがイマームだった時代にさまざまな見解や思想が出されたことで、彼らが大規模なイスラム大学を建設し、イスラム学者を育てる機会が生じました。
シーア派12代目イマーム・マハディがお隠れになる時代まで、預言者の一族から、第7代目イマーム・ムーサーカーゼム、第8代目イマーム・レザー、第9代目イマーム・ジャヴァード、第10代目イマーム・ハーディー、第11代目イマーム・ハサンアスギャリーがイマームに就任しました。確かにこれらの指導者は、それぞれの時代の状況や要請に注目し、人々を導く上でそれぞれ異なった方法を選んでいました。彼らは、その英知と洞察力により、様々な世代の人々を導く一つの光であることを示したのです。
シーア派12代目イマーム・マハディーの時代になると、人類は新しい時代を迎えました。イマーム・マハディーは、神の意志により隠され、彼が出現する状況が整ったとき、神の命により立ち上がります。イマーム・マハディーは世界の救世主であり、不正や抑圧を根絶し、真の正義を世界に広めます。
それでは、最後に、初めて断食を行った人の経験についてお話しましょう。この人は、次のように語っています。
「夜が更けたとき、驚くような不安を感じました。私は心が強く揺さぶられ、寝ることができませんでした。ベッドから起き、大空を見上げ、明日のことを考えました。明日の朝は初めて断食を行う日となっています。次の日は、私にとって重要な日でした。私の人生に重要な変化が起こる日です。私は次第に眠りに落ちていきました。夢の中で私を起こそうとする声を感じました。目を開けると、私のそばには誰もいません。しかし、確かに祈祷の声が聞こえました。この声は私の心に響き、私はうれしくなり、飛び起きました。驚くべき感覚が私をひきよせ、私の胸は高鳴りました。母が断食前の朝食を用意しました。私は、神に従い、神と関係を築きたいと強く感じ、父のそばにすわり、神に対する賞賛を唱えました。次の日、私は始めて断食を体験し、空腹を感じました。しかし神を崇拝することは、私にとって甘美なものでした。私の全存在を安心と希望で満たしてくれる大きな力に寄りかかっていると感じたのです。その日の断食明けのとき、驚くべき精神性が私の中に生まれました。このときから数年がたっていますが、初めての断食の思い出は、私にとって甘美で、気持ちを高めるものです」