ペルシャ語ことわざ散歩(167)
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
これまで既に、このシリーズではイランの大詩人サアディの詩作を由来とすることわざを数多く取り上げてまいりましたが、今回は特に有名なサアディの名句をご紹介しましょう。
今回ご紹介するのは、「未熟な者が成熟するにはたくさんの旅が必要であり、禁欲者も情愛や名誉などの欲望の杯に飲み込まれないようにするには、そういったものを脱して完全に純粋になる必要がある」という、非常に有名な句です。
ペルシャ語での読み方は、Besyaar safar baayad taa pokhte shavad khaamii,
Suufii nashavad saafii taa dar-nakeshad jaamiiとなります。
すでに皆様もお気づきのように、この句は文章の中ほどと文末で韻を踏んでいます。
サアディがこの句の中で述べているように、また皆様もご存知のように、私たち人間は特に、普段自分の暮らしている環境から一時的に離れ、別の場所を旅することで、今まで気づかなかった多くのことを学び、気づきを得て成長を遂げるとされています。国内であってもどこかに旅行した場合は、短期間であっても普段自分が身を置いている環境を離れ、別の空間で生活することになります。一人旅であれ、旅仲間がいたとしても普段と違う環境や出来事に遭遇することから、必然的に平常時にはない多くの学びや気づきが得られるとは、よく言われることです。
また、ペルシャ語で「困難が人間を形成する」と言われている例も聞いたことがあります。あえて旅行に行かずとも、日常生活の中で予期せぬ困難に遭遇し、その解決に取り組んだことで忍耐力や問題解決能力が身につき、またそれまでとは違う物事の捉え方ができるようになった、というご経験は、皆様にもおありかと思います。
私自身も、生まれ育った日本を離れて、言葉や文化、習慣が全く違う外国での環境に暮らしたことで、おそらくは日本国内ではできなかったであろう沢山の貴重な経験ができたと感じています。一方で、日本人としての自分を自覚し、逆に母国語である日本語や日本の文化を大切にしようという感情が芽生えたような気がします。
以上、今回はイランの大詩人サアディの名句を由来とすることわざをご紹介しました。それではまた。