9月 19, 2023 14:13 Asia/Tokyo

皆様こんにちは。シリーズでお届けしております「ペルシャ語ことわざ散歩」、今回は「船が沈没した」という表現をご紹介してまいりましょう。

この表現は、「非常に落ち込んでいる、がっかりしている」という意味を表しており、ペルシャ語では基本的に、Kashtii-haa ghargh shode と読まれます。

そして、誰誰の船とすることで、この文の主語が決まります。

例として「彼の船が沈没した」となれば、ふさぎ込み落ち込んでいるのは「彼」ということになり、さらに「あなたの船が沈没したのか」とすれば、相手に対し「なぜそんなに落ち込んでいるのか」と尋ねることになります。

さて、この慣用句の由来や典拠ですが、最も有力な説としては昔、貿易商人が貨物船で商品をほかの国や地域、大陸に運んでいたことに由来すると言われています。

つまり、貨物船に積まれている商品は、貿易商人にとっては自らの利益を生み出す元手や資産、財産であり、それを積載している船が嵐などで沈没すれば自らの財産や資本の源を失うことと同様です。そのようなことになった場合、貿易商人の立場からすれば精神的に大きなショックを受け、落ち込むことは容易にご想像いただけるかと思います。

アジアとヨーロッパの十字路に位置するイランはその昔、中国やヨーロッパと盛んに交流していましたが、その際に貿易商人が利用したルートとしては特に、中国からの絹が運ばれていた絹の道、すなわちシルクロードが最も有名ではないかと思われます。

しかし、イランはカスピ海やペルシャ湾にも面していることから、こうした陸路だけでなく、海を通っての貿易も盛んだったと言われています。

また、奈良の東大寺に収蔵されている五弦の琵琶は、サーサーン朝ペルシャから伝来したと言われ、当時のイランと日本がシルクロードを通じて交流があったことを裏付ける貴重な品とされています。しかし、日本は島国ですから、中国あるいは朝鮮半島までは陸路だったとしても、そこから先は船で運ばれたと予想できると思います。

今回ご紹介した表現は、シルクロードやそれ以降の時代、航空機や自動車はおろか、まだ鉄道も発達していないころの様子が見て取れると思われます。

以上、今回は昔のイランの船舶による貿易に関すると思われる表現をご紹介しました。それではまた。

この番組は、イランイスラム共和国国際日本語通信パールストゥデイがお送りしています。

 


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