2月 03, 2024 14:40 Asia/Tokyo

皆様こんにちは。イランで実際に使われている生きた表現をご紹介する「ペルシャ語ことわざ散歩」、今回は「撃ち殺していない熊の皮を売る」という表現をご紹介してまいりましょう。

この表現は、ペルシャ語ではPuust-e khers-e nazade mi-forusheとなります。

さて、先だって日本国内でも熊による人への被害が相次いで報告されていました。ところで、熊を初め、そのほかのどの動物でも、まずは捕獲して命を取らなければ毛皮が取れないことは容易にご想像いただけるかと思います。それでは、撃ち殺していない熊の皮を売るとは、いったいどのようなことを指すのでしょうか。

このことわざは、イランでは普通、空虚なできもしない約束で他人をぬか喜びさせ、自分はその約束を果たす責任から逃れる人のことを指しています。

また、理にかなった決断を下し行動を起こすのではなく、実現しえない空想や願望に思いを巡らせる人に対しても使われます。

このことわざに関しては次のような物語があります。

2人の狩人が、森に出かけて熊を捕まえ、その毛皮を売ってお金にしようという計画を立てました。この2人のうち、1人は非常に勇敢でしたが、もう1人は狩人にしては臆病者でした。2人は何日も頑張ったものの、獲物はさっぱり獲れませんでした。そうこうしているうちに、持ってきた食糧も底を尽きてしまいました。

そこで、臆病な狩人はある考えを思いつきます。それは、一度町に戻って、まだ捕まえていない熊の毛皮を前売りして買い手からお金を集め、それで食料や鉄砲の弾薬など必要なものをそろえればよい、というものでした。しかし、2回目の狩りでも結局熊を捕まえることはできなかったということです。

土地や建物などが正式に発売される前に、あるいは完成前に本来の価格より幾分安く販売される、という事例はイランで私も聞いたことがあります。しかし、まだ捕まえていない熊の毛皮を売って利益を得たと仮定するのは、日本語で言う「取らぬ狸の皮算用」に近いのではないかと思われます。

しかも、そうした空想により自分だけが損をするのではなく、他人をぬか喜びさせるというのはもっといただけないですね。さらに、実現しえない空想や願望にふけるだけで行動を起こさなかったり、責任をとらないというのでは、人生において何も成し遂げられないのではないでしょうか。

頭の中でありえない空想にふけるのではなく、論理的に考えて責任を覚悟して行動し、現実的な成果につなげたいものですね。それではまた。

この番組は、IRIBイランイスラム共和国国際日本語通信パールストゥデイがお送りしています。

 


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