湿地の特徴、湿地の保存に関する国際条約「ラムサール条約」(画像)
第一回目の今回は、湿地の定義と特徴、湿地の保存に関する国際条約「ラムサール条約」、湿地を形成する上でのイランの自然環境についてお話しすることにいたしましょう。
湿地は水や食料の確保における重要な源です。そのため、人間、そして様々な動植物にとって、維持されるべきものです。この神の恩恵ともいえる湿地は、ほぼ地球の歴史を物語っており、地球上で最も多様な生物の生息地となっています。
地球上の生命は水に関連しています。湿地は、陸と水をつなぐ場所にあり、水と食料の重要な起源と見なされています。湿地は、赤道から北極や南極まで、地球全体に見られます。湿地は自然のほかの要素と同じように、地球の生命バランスの維持において重要な役割を担っています。それらはさらに、地球上の最も美しい地点とも言え、長い年月、画家、旅行家、詩人、写真家にインスピレーションを与えてきました。
湿地は、野生動物をひきつける場所です。そこでは希少な動植物が見られます。
湿地は大小さまざまなものがあります。湿地の大きさや場所によってその重要性が変わることはなく、全ての場所で多かれ少なかれ湿地の機能は同じです。食料や燃料が確保され、人間にとって憩いの場であると共に、生物にとっての生育・生息場所でもあり、洪水や台風、砂塵、津波などの災害から数百万人を守ってくれる機能があり、これらが湿地のない世界を考えられない理由となっています。
湿原、湿地の定義は、「水が動植物の生息地を形成する基本的な要素となっている環境」ということができます。湿原は通常、浅い水が大地を幅広く覆っている状況で形成されますが、湿地の保存に関する国際条約・ラムサール条約の定義はこのようになっています。
「湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(塩水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮(干潮)時における水深が6メートルを超えない海域を含む」
この定義に注目すると、湿地は川、湖、海岸、森林、泥炭地、さらには珊瑚礁といったものも含まれます。また養殖用のプールや農業用の小さな池といった人口のものもこの定義に含まれます。
湿地は、美しい景観に加えて、世界の最も生産性のある環境です。例えば湿地で作られる作物である米は世界人口の半分の食料を供給しています。このエコシステムは、世界の多様な生物の大きな源であり、無数の動植物の生存において重要な役割を果たしています。
湿原には、鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類といった生物が生息しています。例えば、世界レベルで知られているおよそ2万種類の魚類のうち、40%以上が淡水、つまり湿原に生息しています。湿原は植物の遺伝子の重要な備蓄地とも言えます。
湿地などの自然環境のエコシステムの価値は常に、専門家や経済学者によって調査、評価されています。こうした調査は、エコシステムの経済的価値を少なくとも33兆ドルと見積もっており、このうち9兆4000億ドルが湿地に属するものとなっています。
湿地の物理的、生物学的、化学的な要素は、土壌、水、動植物と同じように、相互に影響を及ぼしており、湿地において数多くの活動を生じさせています。水の備蓄、台風対策、洪水被害の軽減、海岸線の維持と侵食の抑制、地下水の再注入、水の浄化といった活動が、こうしたものに含まれています。
資源はその国の経済的特権と見なされており、この資源のひとつに湿原があります。ここからは、湿原の重要な経済的利益についてお話することにいたしましょう。
動植物の種の保存、水の供給、水生生物の飼育、農作物の生産、木材の生産、エネルギーの確保、運輸、娯楽・観光利用、こういったことは湿原の最も重要な利点です。世界の漁獲量の3分の2以上が湿地の健全性に関係していると言われています。さらに湿原は水や食料の確保によって、その周辺地域の観光に重要な役割を果たしています。
湿原の特徴、利点により、私たちはできる限り自然環境や天然資源の保護に努めようとしています。このため、これに関する新たな法規の制定が非常に重要となっています。国際法は世界レベルでの環境の原則を実行する下地です。
もしこのような限られた数の環境に関する国際的な合意や協定が存在しなければ、環境保護は現在私たちが直面しているもの以上にはるかに難しいものになっていたでしょう。こうした法規は、世界的な基準を設定するだけでなく、多くの政府を協定の署名、あるいは国内法の制定に奨励しています。
ラムサール条約は、湿地の保護を訴える歴史ある国際条約です。この条約は1971年2月2日にイラン北部のラームサル市で発効しました。この条約は1975年に法律となりました。この条約は152の加盟国に国際的に重要な湿地の保護を義務付け、それらを賢明な方法で利用することが薦められています。
イランは多様な気候、多くの低地や高地、北と南に海を有し、塩分を多く含む土地が広がっていることから、マングローブ原生林や珊瑚礁などの湿地、山岳地帯の湖や塩砂漠が存在します。さらにイランが渡り鳥の二つの主要な通り道に位置していることも、イランの湿地の重要性を増しています。
興味深いのは、ラムサール条約によって世界で認識されている42種類の湿地のうち、一種類を除くすべてがイランには存在することで、これはイランの湿地が非常に多様であることを物語っています。さらに、イランの湿地は、その面積が数ヘクタール以下から50万ヘクタール以上になるものまで様々です。
これまでイランでは国際的に重要性を持つ少なくとも84の湿地が確認されており、そのうち24の湿地がラムサール条約に含まれています。