6月 01, 2022 16:31 Asia/Tokyo
  • イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール
    イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

これまでのシリーズでは、イラン中部の古都イスファハーンを訪れ、この町の歴史的な建造物についてご紹介しました。

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

イスファハーンのバザールは、イランにあるバザールの中でも最も興味深い構造をしています。今回はまず、イスファハーンのゲイサリーイェ・バザールをご紹介しましょう。このバザールは、建築様式とそこに使われている多様な要素から、国内外の建築家や市民の注目を集めています。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

古都イスファハーンには、様々な時代に首都とされたこと、貿易ルート上にあったこと、さらにそこで多くの取り引きが行われていたことから、数多くのバザールが建設されました。中でも代表的なのが、ゲイサリーイェ・バザールです。ゲイサリーイェ・バザールは、サファヴィー朝時代、最も栄えた商業の中心地で、そこには外国の商店も軒を連ねていました。現在は、イランの伝統工芸品を扱う最大のバザールとなっています。ゲイサリーイェ・バザールは、サファヴィー朝時代の1620年、ナグシェジャハーン広場の北側に建設されました。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

イランのナーセルホスローやフランスのシャルダンといった著名な旅行家は、ゲイサリーイェ・バザールについて語っています。シャルダンは、10年以上の歳月をイスファハーンで過ごしており、イスファハーンの大きなゲイサリーイェ・バザールについての記述を、その入り口から始め、次のように記しています。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

「イスファハーンの大バザールは、ナグシェジャハーン広場の北側に位置し、タイル細工を施した美しい入り口がある。その両側には大きな石の台があり、その台の上に品物が広げられ、貴重なコインや宝石、様々な装飾品が売られている」

シャルダンは、バザールの内部の空間について、このように語っています。「ゲイサリーイェの入り口から、イスファハーンで最も壮麗なバザールに入ると、そこには貴重な布を売る店があり、その中央には模様の描かれた大きなドームがある」

この旅行家は、ナグシェジャハーン広場の周囲には、本、箱、馬の鞍、靴を売る店、また鍛冶屋や数多くの隊商宿があるとしています。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

イスファハーンのバザールは、イランのみならず、イスラム世界においても、最も興味深く、規模の大きなバザールとなっています。イランの中でも、イスファハーンのバザールほど壮麗なバザールが見られる都市は、他にありません。このバザールは、ナグシェジャハーンとも呼ばれるイマーム広場から入る入り口を持ち、古い広場であるセルジューク朝時代の町の部分と、後のサファヴィー朝時代の新しい部分を結び付けています。このバザールの先は、ジャーメモスクにつながっています。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

イスファハーンのバザールは、イスファハーン中部の多くの都市のバザールと同じように屋根のある通路があり、その両側には様々な店が連なっています。幅はおよそ4メートルから8メートルあり、両側の建物は二階建てになっていて、非常に大きなバザールです。天井は高くて美しいドームに覆われています。バザールの内部に光を取り入れたり、空気を入れ替えたりするために、ドームには小さな窓が作られており、そこから、太陽の光がバザールの内部に優しく差し込んでいます。このバザールは様々な箇所に分かれ、それぞれ決まった場所で品物が売られています。かつて、このバザールでは、色とりどりの絹の布が売られていましたが、現在では、イスファハーンの様々な伝統工芸品を提供する場所になっています。また、規模が非常に大きいことから、メインのバザールから分かれた数多くの小さなバザールがあり、そこでは金細工や銅細工、靴作りが行われています。これらのバザールは、それぞれの場所で取引される品物に従って名前がつけられています。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

イランの他のバザールと同じように、イスファハーンのバザールも、人々に生活必需品を提供するため、数多くのアーケードや小さなバザールを設けており、それぞれが独自の品物を扱っています。このバザールの傍らには、モスクや神学校、預言者一門を祀るイマームザーデの他、公共の水のみ場や公衆浴場、隊商宿、喫茶店などがあります。そのため、バザールはこれらが合わさって一つの集合体を生じさせており、生活、経済、社会、政治、宗教など、全ての面で人々のニーズを満たしています。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

今日、バザールは、過去の部分を残しながら、多くの修復が加えられていますが、経済取引の大部分は、バザールではなく、町の中にある商業施設へと移転されています。町の主要道路沿いには、数多くの商店が入ったショッピングモールが人々のニーズに応えています。しかし、イスファハーンのバザールは、サファヴィー朝時代の貴重な遺物の存在により、今もなおその魅力を保っており、連日、何百人もの観光客が、曲がりくねった通路を通り、この歴史的なバザールを見学すると共に、イスファハーンの想い出として様々な品を買い求めています。

 

イスファハーンのゲイサリーイェ・バザール

 

イスファハーンのバザールの特徴は、ここまでお話ししたことに限られません。町のいたるところにもバザールが存在し、それぞれが独自の魅力を持っています。