1月 04, 2017 20:32 Asia/Tokyo
  • ガシュガーイー族の女性
    ガシュガーイー族の女性

前回の番組ではイラン南部ファールス州の民族についてお話しました。この民族はガシュガーイー、ハムセ、ママサニーの三つの大部族と8つの独立した部族で構成されています。ガシュガーイー族がイラン最大の民族の一つであることを考慮し、彼らの民族的特徴や生活様式についてお話しすることにいたしましょう。今夜の番組では、ガシュガーイー族の風俗習慣、そして伝統工芸についてご紹介いたします。

通常、各民族の結婚式は、彼らの風俗習慣を表すものとなっています。部族社会において、結婚は二人の男女、二つの家族を結びつけるというだけでなく、双方の属する部族を結びつけるという点でより幅広く重要な問題となっています。部族の間の結婚により、敵対関係が終わることもあります。

ガシュガーイー族の間では通常、結婚年齢は低く、結婚は部族内の親族間で行われており、めったに親族や部族の枠内を越えて結婚することはありません。家族は若者の結婚において大きな役割を担っており、通常、両家の長の同意を得て、同じ階級同士で行われます。実際、結婚は親族や部族間の絆を深めるために行われているのです。

ガシュガーイー族の結婚の重要な動機の一つとして、家族の拡大を挙げることができます。家族は、部族の基本的な柱であり、ガシュガーイー族は自給自足の生活を送っているため、生活の基本的なニーズを自分たちで確保しなければなりません。そのため、経済活動において労働力が第一に重要となっています。

それに加えて、高齢になると仕事ができなくなるため、遊牧民の男女は自らの子供に頼っています。家族における父系性もまた、家系の存続のために子供を持つことが重視される特徴を有しています。子供は両親を助けるだけでなく、穀物の管理や家畜の飼育などにも協力します。分家を持つ一族は、製造業などにおいて抱える問題が少なく、たいてい家族で仕事を分担するため良好な状況にあります。

遊牧民の間で離婚は非難されるべき問題であり、ほとんど見られません。

ガシュガーイー族は、結婚式といった祝祭を、避暑地の高原の水のあふれる泉のそばに数多くのテントを張って、色とりどりの衣装を着て行います。乗馬や弓術、歌といった多くの伝統行事も結婚式の中で行われます。

ガシュガーイー族による地元の踊りは、厳しい生活に対抗するためのエネルギーや精神を強化するものとなっています。同時にこの舞踊は団結と連帯、友好の象徴と見なされています。人々は色とりどりのハンカチを手に持ち、肩を組んで大きな輪になって踊ります。

ガシュガーイー族の男性によって行われる舞踊の一つに、ダルマロウがあります。この中で、男性は二組になって、順に短い棒と長い棒をもって楽器のメロディーに合わせて戦うように踊ります。メロディーが次第に盛り上がっていくと、リズムも早くなり、相手側の足を棒でたたくことで、長い棒を奪い、相手を舞台から外に追いやります。こうして踊りが続けられ、最終的な勝者が明らかになります。

ここまでガシュガーイー族の結婚式などの祝祭の習慣についてお話しいたしました。この他のこの部族の慣習として挙げられるのは、羊毛刈りです。家畜である羊の毛は部族にとって特別な重要性を有しています。羊毛はガシュガーイー族の最も重要な伝統工芸、つまり様々な織物の原料であり、それらは彼らの重要な収入源になっています。

羊毛刈りは、二つの段階において行われます。第一段階は春の初め、二段階は真夏に行われます。通常夏に刈られた羊毛はフェルトに使われ、それであずまやが作られます。

羊毛はガシュガーイー族の織物の第一原料とされ、この織物の重要性に注目し、ここからはイランの伝統工芸品の一つであるファールスの遊牧民の手織り製品についてご紹介することにいたしましょう。

概して、ガシュガーイー族の織物は、絨毯やギャッベ、そしてゲリームや刺繍の二つに分けることができます。

ファールスの部族には、今も非常に美しい絨毯が存在し、それは努力と芸術の融合であり、女性たちの手によって織られています。とくにガシュガーイー族は、どの部族にもまして絨毯織りに勤しんでいます。

ガシュガーイー族の間では短期間で織り終わる絨毯が作られています。なぜなら遊牧民は年に二つの地域を移動する生活を送っており、それが絨毯産業の拡大を制限しているからです。このため通常、遊牧民が織る絨毯は小さなサイズとなっています。

遊牧民の織る絨毯に、ギャッベがあります。ギャッベは遊牧民の生活の美しさ、快活さ、喜びを顕現しています。この絨毯の地は、遊牧民が生活する緑の草原であり、美しい自然の模様が女性たちの手によって織られています。

イランの各地で織られているギャッベには羊毛の自然の色が使われています。しかしガシュガーイー族のギャッベには様々な色や模様が使用されています。ライオンの図柄はガシュガーイー族が好む図柄の一つで、歴史的な重要性に加えて、勇敢さの象徴であり、地域にライオンが存在していたことと無関係ではありません。また、星や動物の模様もギャッベには見られます。ガシュガーイー族のギャッベは全羊毛でできています。通常ギャッベは100センチ×200センチ、または200センチ×115センチの大きさとなっています。

この他、ジャージームもガシュガーイー族の織物の一つで、これは寝具やテントの内部に使用されます。小さなサイズのジャージームは、寝具として使用されます。ジャージームは様々な色で織られ、明るい色が多く使用されます。

ゲリームもガシュガーイー族の織物です。彼らのゲリームは純羊毛でできています。繊維は非常に細く、使用されている羊毛はとても繊細なものとなっています。おそらく洗濯や光に対する色の耐久性が、ガシュガーイー族のゲリームを世界に知らしめている最大の要因でしょう。

紡績、染色、織りのすべての工程を担っているのは女性たちです。そのデザインは多様で複雑であるにもかかわらず、下絵があるわけではなく、織り子の独創性によってのみ織られています。このため彼女らの作品は、機械織とは異なり、同じものが二つとありません。さらにデザインや色使い、大きさなどは部族によって異なっています。

 

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