1月 22, 2017 16:40 Asia/Tokyo
  • 温室効果ガス
    温室効果ガス

前回は、温室効果ガスの影響についてお話しました。今回は、世界各国の温室効果ガスの排出量についてみていくことにいたしましょう。

産業革命は、化石燃料が大量に消費されるきっかけとなりました。当時から現在まで、人類は温室効果ガスの排出によって、地球温暖化と気候変動を引き起こしてきました。一般的に現在、私たちが生産し、消費している、或いは廃棄しているもののほとんどは、温室効果ガスの排出を意味しています。

 

アメリカ・ワシントンDCにある世界資源研究所、そしてIPCC・気候変動に関する政府間パネルが発表した統計によれば、温室効果ガスの排出の最も大きな原因は、発電所や人間の活動であるとされています。発電所は、世界の温室効果ガスの排出量の25%を占めています。世界の原子力発電所の稼動はほとんどが、天然ガスや石炭、石油といった化石燃料に依存しており、温室効果ガスの排出に関してそのほかの人間のどの活動よりも重要な要因となっています。

 

温室効果ガスの2番目の排出原因は、森林破壊であり、これは排出量全体の20%を占めています。森林破壊は、二酸化炭素の吸収力を減らし、樹木に蓄積されたメタンや炭素の多くが大気中に排出される原因となります。

 

そのほかの要因としては、自動車などの排気ガスが挙げられ、これは温室効果ガスの排出量の13%を占めています。自動車の1キロ当たりの温室効果ガスの排出量は、飛行機に比べて、わずか5%少ないだけですが、鉄道に比べて3倍近く多くなっています。

 

また、天然ガスや石油の生産の際にも、メタンや二酸化炭素が発生しており、これは温室効果ガスの排出の原因のおよそ6%を占めています。石油や天然ガスの採掘・精製には、莫大なエネルギーが必要になり、これにより地下からメタンガスが大気中に放出されます。メタンガスによる温暖効果は、二酸化炭素の20倍とされています。

さらに、農業活動も温室効果ガスの排出に関係しています。化学肥料は、窒素酸化物の生産を伴い、温室効果ガスの発生原因の6%を占めています。現代の農業は、原油や天然ガスから生産される化学肥料や殺虫剤に強く依存しています。こうした肥料を消費することにより、窒素酸化物が発生し、それがひいては世界規模での温暖化につながります。窒素酸化物に潜んでいる温暖作用は、二酸化炭素の300倍に達します。

 

そのほかの要因として、メタンガスを排出する畜産業が挙げられ、これは原因全体の5%以上を占めています。世界で排出されるメタンガスのおよそ半分は、畜産業が原因となっています。

 

さらに、温室効果ガスの排出の原因としては、セメント産業、航空業、製鋼業、そして廃棄物処理業などがあります。それでは、ここからは世界各国のうちどの国が、温室効果ガスを多く排出しているかについて見ていくことにしましょう。

 

気候変動に関する国際戦略委員会が、2007年に発表した統計によれば、温室効果ガスの主な排出国の筆頭に挙がっていたのはアメリカでした。しかし、最近の報告では世界最大の温室効果ガスの排出国は中国とされています。中国は現在、急激な経済成長により、世界全体の温室効果ガスの排出量の4分の1を占めています。

 

もっとも、アメリカと中国の順位が入れ替わったことは、注目すべき重要なポイントです。気候変動に関する国際戦略専門委員会の報告では、中国においては大量の鉄鋼が生産されているものの、これらの鉄鋼は最終的にはアメリカに輸出されるということです。このことにより、結果的に中国は鉄鋼の生産により大気汚染の直接の原因となっているものの、それはアメリカの鉄鋼の需要を満たすためなのです。

温室効果ガスの排出場所ではなく、それがどこで消費されるかに照準を当ててこのガスの排出量を測定したとしても、やはり中国が首位となっています。とはいえ、2位のアメリカとの差はわずかです。これに基づいてみると、世界の温室効果ガスの排出量全体の21.9%が中国、18.1%がアメリカとなっています。AP通信は、この点について次のように報じています。「中国とアメリカに次いで温室効果ガスの排出量が多い国は順にインドが6.6%、ロシアが5.1%、そして日本が3.7%となっている」

 

自然環境の専門家の警告を受け、1997年12月に京都議定書が採択されました。この議定書は160カ国により批准され、地球温暖化の阻止に努めることが約束されています。京都議定書によれば、36の先進国が2012年までに自国の温室効果ガスの排出量を1990年の水準より5%削減することが取り決められています。しかし、先進国の中で唯一、アメリカがこの議定書に参加しなかったことから、この目的は達成されませんでした。

 

アメリカの政治家は、京都議定書による温室効果ガスの排出量の削減が、自国の経済発展を鈍らせ、結果的に他国との競争における現在の地位を失うことになる、と考えていました。この点から、当時のアメリカのブッシュ大統領は、京都議定書への不参加を正当化し、京都議定書を批准すれば、アメリカ経済が4000億ドルの損害をこうむり、しかも失業者がおよそ500万人に達すると主張しています。

 

アメリカは、京都議定書に参加しなかったことで国連から強く非難され、G20・ 20カ国・地域による自然環境関連の首脳会合で孤立しました。アメリカは2006年1月、中国、オーストラリア、韓国、日本、インドと共に、「クリーンな水と空気の発展に関するアジア・太平洋地域の協力」と題した会議を開催し、孤立を免れようとしました。しかし、京都議定書は、各国に参加を義務付けるものではなかったことから、世界の環境学の専門家から強く非難されています。

 

アメリカでは、クリントン政権時代にゴア副大統領が次のように述べています。「京都議定書は、アメリカを強く叱責しており、まず採択されることはないだろう」 アメリカで行われた世論調査の結果でも、多くの国民が、気候変動の危機は国連が騒ぐほど深刻なものではない、と考えていることが明らかになっています。

 

長年にわたるこのような政策により、アメリカは温室効果ガスの排出量の削減で成功できなかったのみならず、気候変動に関する政府間パネルの報告では、アメリカでの温室効果ガスの排出量は以前と比べて増加しているとされています。こうした中、多くの科学者らは、京都議定書で定められている、温室効果ガスの5%削減という目標では十分でないと考えており、受け入れられる条件として、最低でも60%の削減を求めていました。

 

自然環境が危機的な状況に陥り、温室効果ガスが過剰に排出されていることから、2007年にはインドネシア・バリ島にて、気候変動に関する政府間パネル国際会議が開催されました。この会議には、およそ1万の代表団が、アメリカや中国など、京都議定書に参加しなかった国を含めた、全ての国が批准できる国際条約の締結を目的に参加しています。

 

バリ島での国際会議での最も重要な議題の1つは、化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出量の削減目標を、先進国と貧困国の間で公平に分割することでした。この会議でのアメリカの反応は、実に驚くべきものでした。それは、当初は京都議定書を決して批准しないと主張しておきながら、後になって京都議定書への賛成を表明したからです。

 

時が経過し、温室効果ガスや気候の変動がアメリカの人々の生活にどのような影響を及ぼすかが明らかになるにつれて、オバマ政権はクリーンなエネルギーの獲得と、環境汚染につながる要素の解消に努めるようになりました。アメリカ民主党は、今後数十年後における環境汚染の影響を回避するための費用は、現在の経済的な利益よりもはるかに大きい、という結論に達しました。アメリカに対する、気候変動枠組み条約を批准するようにとの国際世論の圧力は益々高まり、アメリカ政府はついに京都議定書の批准へのやむなきに至りました。

 

しかし、厳しい国際条約の実施をアメリカ政府が認めるには、まだ長い道のりが存在します。アメリカでは、通商貿易や工業が民間部門に握られているため、これらの産業の実業家らが多国間の取り決めによる、自然環境の再生のための大きな経済負担を簡単に受け入れるとは考えられません。同時に、アメリカで大きな権力を有する石油企業や自動車メーカーは、政府の決定に抵抗する力を持っています。これらの要因を総合すると、気候変動への対処と、温室効果ガスの削減に関するアメリカの能力と意欲には、大きな疑問が残るといわざるを得ません。

 

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