2月 18, 2017 18:55 Asia/Tokyo
  • 寄木細工
    寄木細工

今回は寄木細工についてお話しすることにいたしましょう。

寄木細工はイランの古い工芸の一つで、国内外に多くの支持者を有しています。寄木細工の一部の師匠は、寄木細工は預言者イブラヒームの奇跡だと考えています。この芸術の最も優れた作品の例は、イラン南部シーラーズのアティークジャーメモスクで、千年以上前のものとなっています。さらに14世紀に属するモスクのメインのテラスの天井は寄木細工の巨匠の技術によって装飾されています。

シーラーズのアティークジャーメモスク

 

寄木細工の芸術はその発生と完成の過程において、人から人へ、師匠から弟子へ、父から息子へと伝達され、様々な変化を遂げて今日の形になりました。イスラム以前のイランでは、一片が4ミリの直方体の一色の木材を使った寄木細工が広まっていました。それは様々なデザインで表面に取り付けられていました。この方法はイスラム以降数百年間用いられていました。

寄木細工

 

イスラム後、寄木細工は最初、大きな三角形を並べたもので、使用されていた木の色も多くが黒や白でした。しかし次第にイラン人の趣向によりこの芸術に更なる優美さが加えられ、その色に多様性が生じました。こうして赤、緑、青、黄色が寄木細工に加えられ、以前スズが使用されていた場所に真鍮が使用されるようになり、更なる魅力を増しました。

 

寄木細工は16世紀から18世紀のサファヴィー朝時代にピークを迎えました。この時代、イラン各地からその当時の都だったイスファハーンに職人が集まり、忘れ去られた芸術を復活させ、職人たちは寄木細工、木彫細工、タイル細工などにおいて活動するとともに、聖地やモスクなどの建物の復興に努めました。

寄木細工

 

ザンド朝の王、キャリームハーンの時代、職人の奨励により、イランの装飾芸術において変化が生じました、この時代の作品に、イラクの聖地ナジャフにあるイマームアリー聖廟の棺、カルバラのイマームホサインとアボルファズル廟の寄木細工の棺、シリアにあるゼイナブとロガイイェの墓の棺を挙げることができます。後にガージャール朝で、この芸術は重要性が低くなり、この分野の巨匠や職人は小さな工芸品や装飾品を作るようになりました。

 

寄木は、五角形から八角形までの一定の図形を組み合わせたものです。それらには様々な色の原料が使用され、それを作る際には多くの忍耐と注意深さを必要とします。ペルシャ語の大辞典ロガットナーメデホダーには、寄木細工はこのように書かれています。「木の中に骨の破片で模様を作っていくもの」

寄木細工

 

寄木細工は小さな三角形でモザイクのように表面を飾っていく芸術です。寄木の様々なデザインは常に幾何学模様となっています。この幾何学模様は、小さな三角形を並べていくことでできます。三角形は様々な木片や金属、動物の骨で作られており、三角形が細かくなればなるほど、寄木は質のよいものとなります。寄木細工のデザインで、最小の幾何学模様を作るためには三つの三角形、最大のものを作るためには四百の三角形を使用します。

 

寄木細工に使うものは、木材、金属、動物の骨、貝殻となっています。また寄木細工に最も適した木は黒檀、ナツメ、クルミやダイダイです。さらに象の牙、ラクダや馬などの骨も強固で色が白いことから寄木細工に使用されています。さらに人工の象牙も多く使用されています。

寄木細工

 

真鍮、アルミニウム、銀などの金属や貝殻も寄木細工に用いられています。作られた寄木を強固にし、それを守るために、寄木細工には色のついた金属が多く使用されており、銀やアルミニウムが白色、真鍮が黄色として使用されています。

 

良質の寄木細工は模様の細かさとデザインの規律によります。これらすべては材料を用意し、それを用いる技術や、職人の正確さや忍耐から生じています。さらに良質の寄木細工は、色や材料も均一で、時の経過と共に色や形に変化が現れません。寄木細工のこの他の特徴として、すべての模様、角、辺が対称になっていて、色が付けられ、傷がつかないようにニスが塗られていることが挙げられます。

寄木細工

 

イランにおける最大の寄木細工の中心地は、イスファハーン、シーラーズ、テヘランです。とはいえテヘランにいる多くの寄木細工職人は、出身がイスファハーンやシーラーズです。イラン南西部チャハールマハールバフティヤーリー州のシェイフシャバーン村は現在、寄木細工において国内外で知られた村であり、旅行者の多くを魅了しています。この村は州都シャフレコルドから39キロ離れたところにあり、イランで寄木細工生産の主な中心地の一つとみなされています。寄木細工などの伝統工芸の職人の存在、巡礼地、美しい手つかずの山の自然、さわやかな気候が、シェイフシャバーン村に各地から年間を通じて多数の旅行者が訪れる要因となっています。またこの村は更紗やタイル細工などでも知られています。

 

寄木細工における幾何学模様の存在と、その中の色のついた断片の使用は、この芸術のデザインに多くの多様性を生み出しています。

重要なことは寄木細工の施された作品は温度や湿気、直射日光にさらすことなく、決して濡れたタオルを使って拭いたりしてはいけないということです。寄木細工は多くの道具の他、壁や天井、柱にも施されています。イランの寄木細工職人が誇る作品としては、鏡の枠、写真たて、杖、チェス台、大小の壁掛け、筆置き、箱、テーブル、コーランの書架などとなっています。