コーラン第30章ルーム章ローマ(1)
今回からは、コーラン第30章ルーム章ローマに入ります。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
ルーム章はメッカで下されました。
イスラムの預言者ムハンマドがメッカにいて、敬虔な人間が少数派であった頃、イラン人とローマ人の間で戦争が起こり、イラン人がこの戦いに勝利しました。メッカの多神教徒たちは、この勝利を良い兆しとし、自分たちの多神教信仰が正しいことの証拠だと考えました。これについて、ルーム章の最初の数節が下され、この戦いではイラン人が勝利したものの、まもなくローマ人に敗北することになると宣言し、その時期を予言しました。歴史によれば、ローマ人が敗北を喫してから9年もしないうちに、彼らは新たな戦いの中で、イラン人に勝利しました。
コーランが、目に見えない出来事をはっきりと予言していることは、この天啓の書の奇跡のしるしであり、神の無限の知識が、創造世界のすべてに及んでいることを示しており、それはイスラム教徒を喜ばせ、彼らに希望を抱かせました。
ルーム章の節は続けて、復活のしるしに注目せずに来世を否定する人々に抗議し、第8節で次のように語っています。
「彼らは心の中で考えなかったのか。神が天と地、その2つの間にあるものを定められたときに真理のみに従って創造されたのを。だが人々の多くは、彼らの神との会見を否定する」
ルーム章は、第12節から先のいくつかの節で、罪を犯した人と敬虔な人間の2つのグループの運命に触れています。「その日、最後の審判が行われる。罪を犯した人は希望を失い、悲しみに沈む。それは、信仰も持たず、善い行いもせずに会見に臨んでいるからだ。彼らには助けもなく、現世に戻って過去を償う可能性も残されていない。彼らは神と同等に据えていたものに対して嫌悪を表す。だが、信仰を寄せ、善い行いをした人々は、最後の審判の日、天国の楽園で大切にされるだろう。彼らの表情は喜びに溢れる」
この節は続けて、彼のしるしの一つはそれである、を意味する「و من آیاته」という言葉により、唯一神信仰の理由と、創造世界における神のしるしを述べ、これについて、人間が泥から創造されたことと、人間の種の増加について触れています。
ルーム章の第21節は、神のしるしとして、あなた方の種から、共に安らぎを得られるように、あなた方のために配偶者を創造し、あなた方とその配偶者の間に強い愛情と慈悲を据えたとあります。この節によれば、男性と女性は、同じ性質から創造されました。夫婦の結びつきは、心から惹かれあうことを必要とします。そのため、結婚した後、夫婦の間には、愛情と慈悲に基づく関係が築かれ、肉体的、精神的な安らぎが得られるはずなのです。
さらに、天と地の創造は、神の無限の力のしるしです。人間の知識や科学が進むにつれて、創造世界の偉大さに関して新たな発見が生まれています。また、人間の言語や肌の色の違いも、神の偉大さのしるしです。神は、人類の問題を整えるために、声や肌の色、言語や人種を異なるものにしました。コーランは、この驚くべき事実に触れ、次のように語っています。「このことには、考える人々、賢い人々へのしるしがある」
ルーム章の第24節では、神のしるしである自然現象について述べられています。雨、雷、稲妻、大地が死後に蘇ることなどです。そして、稲妻は恐怖と共に、希望を抱かせるものだとしています。人類の恐怖は、稲妻の危険によるものです。希望は、この稲妻のあとに降り注ぐ雨によるものです。コーランはこれらの現象を、考える人のためのしるしとしています。なぜなら考える人たちは、創造世界の秩序のめぐりの中に、神の力が及んでいること、稲妻、雨、大地の色づきといった現象は、決して偶然のものではなく、正確な計画に基づいて生まれたものであることを理解するからです。