7月 05, 2017 16:12 Asia/Tokyo
  • SNSが児童青少年に及ぼす弊害
    SNSが児童青少年に及ぼす弊害

前回は、SNS・ソーシャルネットワークサービスが人々の生活の個人的、社会的な側面に及ぼす破壊的な影響についてお話しました。 今回は前回の続きとして、SNSが児童青少年に及ぼす弊害について考えていくことにいたしましょう。

コンピューターなどが出現する前の時代には、道端や路地裏では子供たちが楽しく遊び、彼らの笑い声が聞こえたものでした。エネルギーと興奮に満ちた年齢にある子供たちは、めいっぱいはしゃぎ回り、追いかけっこや鬼ごっこに明け暮れていたものです。しかし、先進技術が押し寄せる現在、子供たちが生活上の喧騒から解放され、安心して楽しく遊ぶ様子はほとんど見られなくなっています。

実際、コンピュータなどの先進技術があふれ、機械化された世界は、子供たちから子供らしく遊ぶ時間を奪ってしまいました。各種の先進技術やコンピュータ・ゲームなどの現代的な遊具に囲まれている中では、現代っ子たちは貴重な子供時代を、コンピュータの前に座り各種のデジタルゲームをして過ごす傾向にあります。彼らは、インターネットとともに成長し、その中で暮らし、これまでのどの時代よりも機械化の時代と技術革新の競争に翻弄されてしまっています。

日常生活における諸々の雑事や他人との連絡の円滑化において、バーチャルの世界や技術が非常に有益な影響を及ぼしていることは、決して見逃せません。しかし、私たちはそれらに振り回されてはならず、必要な見識を持ち、先進技術により倫理的な価値観や家族の絆、人間的な愛情が奪われることのないようにする必要があります。

恐らく、3,4歳ぐらいの小さな子供が先進的な情報手段にこれほど興味を持ち、まだ幼いながらもこうした情報機器を使いこなしているということは、初めのうちは驚くべきことだったかもしれません。しかし、次第に先進技術がいまや子供にとってもっとも人気のあるという事実が明らかになってきました。現代っ子たちは先進技術に影響され、余暇時間があるからという理由でより多くの時間をそれに費やしています。彼らは、デジタルゲームなどで多くの時間を過ごし、インターネットでの検索に興味を持っています。青少年も、SNSを趣味の1つとみなし、バーチャル空間上でのコミュニケーションを拡大しようとしています。

 

見識を深めること、地理的な国境に制限されない空間での教育、そして様々な文化や価値観に触れることは確かに有益です。しかし、こうしたメリットの中にも、バーチャル空間の現実を正しく認識しない場合には、多数の弊害や見知らぬものによる危険な世界が潜んでいます。実際に、現代の世界においてインターネットは、知らず知らずのうちに各家庭や人々のプライベートな領域に入り込んでおり、彼らの価値観や信条に対するその影響は、もはや否定できません。

SNSが、独自の魅力を持つことから、ユーザーは何時間もコンピューターに釘付けになります。このネットワークの特徴は、躍動的でインターネット上の友人の数を増やし、彼らとより楽に多くの交流ができることにあります。また、常にオンラインでつながっていることから、時間や場所に制限されずに他人と交流ができるため、児童青少年は多くの時間をSNSにより過ごしています。他人とのこうした恒常的なつながりにより、時にはSNS依存症に陥る人々も見られ、児童青少年には睡眠不足や過度の疲労、肥満、さらには学力低下などの弊害をもたらしています。

青少年期には、人間のアイデンティティや人格の形成が彼らの最も重要な課題の1つとされています。青少年は、すでに成功を収めた人々の経験や教えを活用して、自分の進路を見出し、社会で有益な人材となるための準備を整えようとします。この点から、青少年は家族関係を超えた領域での人間関係の拡大を欲するようになり、より力や経験のある人々や、自分と同年齢、あるいは似たような状況にある人々との交流を求めます。コンピューターの時代以前には、アイデンティティの形成に影響する要素といえば、家庭環境や学校、友人、価値観や信条などでしたが、現代の青少年は、バーチャル空間で実に様々な信条や価値観を持つ幅広い層の人々と接しています。

こうした時期において、青少年は自分が社会で希望する職業などの選択に向け、悩みや不安を持つようになります。このため、彼らはこの悩みを克服しようと、より安心できる空間に足を踏み入れようとします。彼らは、この空間において最も少ない費用で、自分の考えや信条を他人に示し、また他人の見解や率直な批評を受け取ることができます。こうして、自己のアイデンテイティの形成により、彼らは社会における1人の人間となるのです。

しかし、ここで問題となるのは、バーチャル空間が青少年に対し、社会での現実的なコミュニケーションで必要とされる適切なアイデンティティを提示できないことです。この空間では、誰もがほかの人物を装う環境ができており、その中には現実の世界にはありえない人物もいます。たいてい、SNSにおいて青少年に提示される見本は、西洋的な生活様式を強要しようとするスーパースターたちです。この空間では、日常生活での社会的、家庭的な価値観とは完全に矛盾する独特の価値観や文化が宣伝されます。こうした中で、SNSのユーザーは自分の置かれた実社会や家庭が提示する信条や価値観と、バーチャル空間で提示される基準や見本のいずれかを選ばなければなりません。このため、青少年は混乱に陥り、自分の将来の生活のための価値観の選択に当たって、強いストレスに直面することになります。バーチャル空間と実社会のコミュニケーションの間に大きな違いが見られることから、青少年の中には感情をうまく抑制できず、すぐにキレやすくなったり、失望感や自己陶酔に陥ったり、また精神的に落ちつかなくなったりする人もいます。

 

児童や青少年は、インターネットやSNSに夢中になっているため、これらに最も多くの時間を費やしています。しかし、そうしたエネルギーや時間を、何かを考えたり創意工夫する活動に充てれば、彼らが将来社会人となり、自分の才能に応じた適切な職業を選択するための、彼らの能力や関心を提示する下地ができると思われます。

一方で、人間の倫理面での成長や精神面での健康は、他人との安定した健全なコミュニケーションを持つことにかかっています。様々な文化や信条、さらには一部の好ましくない思想を持つインターネット上の一時的な友人との交流に使われる時間を、家族や親戚のために充てれば、これは青少年の人格形成や倫理面での成長に効果的な役割を果たすと思われます。こうしたコミュニケーションにより、家族の絆が強まり、奥深いものとなるのです。実際に、家族は青少年にとって最も近く信頼できる存在でもあります。青少年の家族は、ほかの誰よりも彼らのためを考え、彼らの名誉や成功を喜んでくれる存在なのです。

残念ながら、現代の青少年は自分の身の周りのバーチャル世界の魅力の中で孤立しており、他人との現実的なコミュニケーションをする上での社会的な能力の多くを失ってしまっています。このため、彼らは日を追うごとにバーチャル世界という泥沼にますますはまっているのです。彼らは、自分がなぜ落ち込み塞ぎこんでおり、愛情のこもった人間的なコミュニケーションという本当の楽しみから遠ざかってしまっているかについて考えることなく、写真やコンテンツを共有することで、インターネット上の友人の関心を引こうとします。しかし、その一方で彼らは、そうしたネット上の友人による励ましや友情のサインが、心からのものでないことをよく知っています。

 

SNSやチャットによるネット上の友人探しや、モラルに反するサイトをあさることは、青少年の性的、思考的、モラル面での意識に影響を及ぼします。SNSにより、少年少女たちは親の目の届かないところで互いに知り合い、関係を持つようになります。しかし、こうした関係を持つことは、現実の世界では親からの叱責や、面目をなくすことへの恐れからそれほど簡単にはできないものです。こうした中で、偽りのプロフィールを提示して青少年の興奮にあふれた世界に入り、彼らの純粋さを悪用して犯罪に手を染める人々も存在します。こうしたことに関するニュース報道は、聞くに耐えないほど嘆かわしいものです。

バーチャル空間では、モラルに反する内容のコンテンツや写真などが全く規制や検閲なしに掲載される可能性があります。これらの写真は、子供や青少年の意識に破壊的な影響を及ぼし、異常な早熟などの問題を引き起こし、さらには次第に、子供や青少年から恥じらいや良心を失わせます。バーチャル空間における、こうした好ましくない写真の掲載や、規制のない自由な人間関係が、次第に人々の生活にマイナスの影響を及ぼし、社会的な慣行から外れた大規模な異性関係を当たり前のものにしてしまうことは、言うまでもないでしょう

 

 

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