3月 15, 2016 20:13 Asia/Tokyo

チャハールガー旋法についてお話しすることにしましょう。

チャハールガーは、一般的にイランの古い音楽体系といわれており、また、イランの人々の文化や生活に密着した音楽体系といえます。たとえば、イラン暦の新年、ノウルーズを祝う際、チャハールガー旋法の音楽がよく流されますが、これは昔からの慣習だとされており、現在でも、ノウルーズの期間、ラジオからはもっぱらチャハールガー旋法の音楽が聞こえてきます。

また、結婚式などのの祝い事でも、チャハールガー旋法の音楽が使われます。

ここで、チャハールガー旋法について、日本人セタール奏者の林原慶子さんにお話を伺ってみることにしましょう。

チャハールガー旋法は、微分音を基本的な音階の中に含む音楽体系です。まずは序曲であるダルアーマドを音階の点から解析すると、ドを中心とした場合、ソ、4分の1音低いラの微分音、シ、ドのテトラコルドと、ド、4分の1音低いレの微分音、ミ、ファのテトラコルドの2つで構成されています。つまり、それぞれのテトラコルドの音の間隔は3/4、1と1/4、1/2となっており、音階の中に2つの微分音を含みます。つまり、このソラ微分音シドレ微分音ミファという音階が、チャハールガー旋法の基本的な音階となります。

この体系は前回までお話してきたマーフールと異なり、180度暗転するような場面はないものの、進行し、ムーイェ、ヘサールといったグーシェ、曲に入ると、音階が変化します。

ダルアーマドの後、ナグメという一連の曲に続きます。ダルアーマドで強調される、フレーズの中心となる音がドの場合、このナグメでは、これがレに変化します。

イラン音楽の巨匠、ホセイン・アリーザーデによると、ナグメという曲は他の旋法体系でも演奏されるものの、その形式は一定ではないとされています。

そしてそのナグメの後、ムーイェという最初の音階の変化を経ます。ここで、それまでナチュラルだったソが微分音に変わり、微妙な浮遊感がかもし出されます。また、強調される音も、ダルアーマドがドの場合、ミに上昇します。

また、チャハールガーには、ザンゲ・ショトルという名前の曲が存在します。この曲は、日本語に翻訳すると、らくだの鈴という意味になります。様々なアレンジが行われているため、日本人のイメージする、荒涼とした砂漠のキャラバンのらくだの歩く様子、といった趣からは離れてはいることもありますが、それでも、このらくだの鈴のフレーズは、多くの作曲作品の基本となっています。